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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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3ー3 勇者

 私がここに来た経緯などを、ルイさんに説明すると、改めて頭を下げられた。

 手紙は届いていたようだけど、病人が多く、確認する時間がなかったみたい。謝罪が不要なこと、門番の衛兵さん達にも厳しい処罰はしないように改めてお願いをした。今回は私が来たタイミングが悪すぎた。


「この回復魔法を街の者にかけていただくことは可能か?」

「私の問題はありませんが、おすすめはしません。空や大地の様子も見ましたが、小さな子供や体力のない老人にかけてしまっては亡くなってしまう可能性が高いです。この治療法が体力がある方向けの荒療治なんです。根本を解決できる治療法ではありません」

「なんということだ」


 私だって、空や大地を助けたい。

 ピーちゃんに頼んで、さくら様に手紙を出す? 悔しい、困ったらあの人頼りの自分が、力がない自分が悔しい。

 そうは言っても人命がかかっている中で自分の力のなさを嘆いて、我儘で確認をしないなんてことはあり得ない。


「何度もすまない」


 話している間に席を外していたエリザベスさんが、再び戻ってきた。

 部屋に来るまでも急いでるような足音だったし、緊急の話なんだろう。


「どうした?」

「今度はオオサカ家の紹介状を持った御仁が来た」

「本物か?」

「間違いなく」

「普段はここまでの大物来客が何度もはないんだがな。事情を説明した上でそれでも街に入りたいということであれば入れてやれ」


 別の訪問者があったらしい。オオサカ家の紹介状ってカイラちゃんの家だよね? 今の王様をずっと排出している竜族の家。どんな人が来たのか、それとルイさんの言い回しだと私まで大物みたいだ。そこまで大層な存在ではない。


「わかった。この家に来たいと言われれば連れてきてもいいか?」

「モモ殿もいる、緊急でないのであれば後回しにしたい所ではあるが。何かあるのか?」

「聞いた話と特徴が合致する。勇者かもしれない」


 解析の勇者。もし本物であれば、この状況を大きく助けてくれるかもしれない。

 エリザベスさんとルイさんとアイコンタクトし、同時に頷く。

 寝床で使者殿と会うわにいかないというので、お姫様抱っこをしてルイさんを運ぶ。

 騒がれはしたが、我儘を言ったのはそっちなので恥くらいは我慢してほしい。私以外が運ぶとなれば奥さんであるアントワーネさんが苦労することになるんだから。


 少しして、見慣れた黒髪、黒い瞳の青年が現れた。お父さんより歳は少し下かな?

 

「はじめまして、僕は解析の勇者、石川いしかわ 聡介そうすけです。ソウとかって呼ばれてますので好きに呼んでください」

「俺は族長代理のトヨナカ・ルイだ」

「よろしくお願いします。大変な中、お邪魔しちゃって申し訳ない。それとそっちのダークエルフっ子ちゃんも紹介してもらっていいですか? 解析しようとしてもするなって警告音が凄くて。強いこですよね? それと怖そうな顔で見てるし、敵じゃないですよね?」


 なんだかお父さんと比べて少し軽薄そうな人で、少し苦手だ。

 睨んでいた訳ではないけど、お父さんと違うなって顔が硬っていたのかもしれない。


「自分で名乗れます。モモです」

「わーお、簡潔だね! でも可愛い子だし仲良くしたいな」

「適度に、適正に仲良くしていただければ」

「クール。いいね!」

「話の途中ですまないが勇者殿にはこの街の病気を解析し、治す方法を教えていただきたいのか、可能か?」

「問題ないよ。世話になっている大坂国のピンチとなればね、交換条件って訳ではないんだけどさ。森の賢者に会いに行く途中で通行手形代わりの【聖獣の毛】っていう毛玉が大雨でなくしちゃってさ、立て替えてもらうことは可能かな?」

「聖獣様の毛を……貴重な品なんですから、大事に扱ってください。我が街にもそう多くあるわけではないのですから」


 大福様の毛、我が家ではゴミ扱いなんだけどなぁ。

 

「少ないなら補充しましょうか? 杏お姉ちゃんに活用できるかもしれないから持って行けって、ゴミ袋にまとめてありますよ」

「ご、ゴミ袋」

「そのエルフっ子は何者? モモ? うーん? どっかで、そうだ! 白い髪に頬の傷、君が森の賢者と噂の巻き込まれ系主人公、悠さんの養子か!」

「貴方のいう言葉全ては理解できませんが、私は最上悠の娘です」

「噂以上に美人さんだね。悠さんのことはお義父さんと呼ぶことになるかもしれないな。その前にうちの妻は嫉妬深くてね。そこがまた可愛いんだけどさ。上手くやれそう?」

「貴方の思考は気持ち悪くて理解ができません。少し口を閉じててもらえますか?」

「そんな申し訳なさそうな顔で辛辣な言葉を吐けるなんて。それがいい!」


 話が進まないので、頭にデコピンをしたら転げ回っていた。


「聖獣様の毛も確保できましたし、本題に入ってもいいですか?」

「痛い。ああ、さっき解析が終わったよ。フロストリーフと聖霊樹の葉を綺麗な水で混ぜて飲ませれば熱も下がるはずだ。配分的には9対1、聖霊樹の葉は少しでいいけど、貴重な物だし首都に戻らないといけないね」

「フロストリーフも聖霊樹ではないとはいえ、貴重な品です」


 フロストリーフって図鑑で見たことある。前に森の中でサバイバルで採取してなかったかな?


「エルフっ子ちゃん、またゴミ袋を出しでどうしたんだい? まさか、そのゴミ袋は猫型ロボットのスペアポケットか何かなのかな?」

「聖霊樹の落ち葉もゴミになるから燃やそうと思ってたんですけど、父が無駄にしたらダメだって焚き付きにでも使えって持たせてくれたんです。フロストリーフなら趣味の採取時に集めたのがあったはずです」

「ご、ゴミ袋、モモ殿。いや、モモ様、あなた方の価値観はどうなっているんだ」


 ルイさんが可哀想な子、お姉ちゃんを見るお父さんのような目で見てきたので少し心外である。



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