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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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3−1 トヨナカの街

 小高い山を越え、更に高い山中に隠れるように存在する街? 町くらいの規模のような気もするけど、地図の通り、あれがガンジュさん達の街だ。

 王坂の四天王って呼ばれるような人が治めているには少しこじんまりとしているような作りだ。

 お父さんが事前にルイさん宛に私が来ることを伝えてくれていると、火の鶏さんが手紙を持ってきてくれた。旅をはじめて1週間、そして私、モモとしは初めての外と街。少しドキドキする。


 低めの城壁、門の前には衛兵であろう人影は見えない。門も閉ざされている。

 通常は閉めている運用なんだろうか。いや、城壁の上に人影は見えるし、とりあえずは近くに行って聞いてみよう。


「何者だ!」


 深めに被っていたローブを下ろして挨拶をする。


「私はモモと言います。街に立ち寄る旨をルイさんに手紙を送っているはずなのですが通していただくことは可能ですか?」

「ルイ様に?」


 門が開かられて剣を構えた、獣人の方々が10名ほど出てくると私を取り囲む、威嚇したつもりはないしどういうことなんだろう。凄いピリピリした空気を感じる。


「あの、私は争うつもりはないのですが、理由を聞けますか?」

「ダークエルフだ。こいつらの呪術なんじゃないか?」

「ルイ様の名前を出したからには印章など持っているんだろうな」

「えっと、持ってないです。でも手紙で−−」

「−−黙れ! そんな嘘が通じると思っているのか! 少し痛めつけて、牢屋に入れておけ」


 痛めつけられるはやだなぁ。牢屋に入れられるのも嫌だけど。

 お父さんはまず、話し合うことが大事だと言ったけど、今回はダメだった。

 さくらさんにそういうことがあった時どうすればいいかと相談をしたら、適度に殴って黙らせるか威嚇すると言っていた。

 最初から暴力で訴えるのも考えものだし、まずは威嚇してみよう。


「キャイン」


 9名がお腹を見せて寝転んでくれた。1人だけ残ってしまった、話が通じないなら適度に殴るしかないのかな。


「貴様、何者だ」

「先ほども言いましたがモモと言います」


 立っていられるのは立派だけど足がガタガタと震えて、尾っぽが内側に仕舞われてるあたり、恐れてはいてくれているけど、降参はしてくれないようだ。

 ん? なにか飛んでくる?


「下がっていろ!」

 

 そこそこ早い、殺すつもりはない一撃だ。それでも受けると痛そうだから止めさせてもらおう。


「ぐっ、私の剣を指先だけで受け止めるのか」


 この人は衛兵の人より少し偉い方なんだろうか? うーん、見たことある人だ。


「もしかしてエリザベスさんですか?」

「私の名をなぜ?」

「私はモモです。迷いの森で数年前にお会いしました」

「モモ? モモじゃないか!」

「はい、父がルイさん宛にお手紙も出してたはずなのですが」


 エリザベスさんが地面にお腹を見せて転がってしまう。


「確認もせず切り掛かってすまなかった。殺してくれ」

「誰にだって行き違いはあります。気にされないでください」


 寝転ぶエリザベスなんの、お腹のモフモフを撫でさせてもらう。大福様には負けるけど良い毛並みですね。


「キャーン」

「姉御が恍惚とした顔している。あの娘、只者じゃないぞ」

「はっ! 何を見ている! 報告は正確にしろ!」


 エリザベスさんが、部下の人達を叱りつけている。

 どうやら報連相が正確に行われず、攻めてきた、敵だ、凄い殺気だ、倒さねば、と確認もそこそこに飛んできてしまったらしい。


「今回は学校に向かう道中で少し街に入ったり冒険をしたくて立ち寄ったんです」

「そうか。モモ、だったら尚更だ。この街に入るのはやめておけ」

「なにかあったんですか? 周りの雰囲気もピリピリしてますけど」

「この街では多くの病人が出ている。今入ってしまってはお前まで病いに侵される」

「だったら尚更、入らないとですね。もしかしたら私の回復魔法や知識が役に立つかもしれないです」


 何度かエリザベスさんと押し問答をした結果、街の前まで来ている時点で病気になる可能性は変わらない、だったら入れてほしいと街の中に入ることができた。

 無事話し合いだけで街に入ることができた。お父さん、モモはやればできる子なのです!


 街の中を綺麗に整備されていて、昔自分がいた村のような悪臭がしたり、不衛生な雰囲気はない。

 ただ病気が蔓延しているせいか、活気が全くない。

 街の中央に位置する場所に立派な家がある。ここがガンジュさんの家らしい、正確に言えばガンジュさんは首都で仕事をしているので、今はルイさんが管理している家かな。


「エリザベス様、その者は?」

「森の賢者様のご家族だ。通るぞ」


 長が住む家だけあって衛兵の人もいたけど、顔パスだった。エリザベスさんは頼りになるなぁ。

 衛兵さんにはお父さんに教わった敬礼? をしておく。これがお父さんの世界の衛兵さんがする挨拶らしい。


「エリザベスさんに、モモさん?」

「アントワーネさん、お久しぶりです」


 ルイさんの奥さんは元気だったようでよかった。

 なんでも空と大地くん達まで寝込んでしまっているということで、容体を見るのに寝室へと通してもらう。

 回復魔法を使うにも体力がある大人から様子見をする必要があるので、ルイさんから容体を確認する。

 特に発熱が酷いようで起き上がることもできないとのことだ。

 処方した薬草や回復魔法の話を聞いたけど、薬草については私が持っている物と大きく変わりはない。

 あとはより強い回復魔法をかけて、汗を流して水分や栄養があるものを食べる、耐久戦しかない。ただ強い回復魔法を使用するにもここまで弱っていてはリスクも伴う、様子を見ながら使用するつもりではあるけど、念の為にアントワーネさんにも承諾をもらい、ゆっくりと回復魔法をかけていく。


「……モモ? どうなっている?」

「ルイ、よかった」

「アントワーネ、これはどういうことだ?」


 喋れるくらいには回復した。効いてよかった。

 




 

 

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