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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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2ー33 変わっていく日常

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「おめでとう? ございます」


 モモが新年の挨拶して頭を下げる。それをマネしてエリゼちゃんも同じように頭を下げる。

 

「おめでとう。本年もよろしくお願いします」

「にゃーん」

「わん」


 姉さんや大福が頭を下げる姿は可愛らしく、インターネットがあってこの写真をアップできればバズること間違いないだろうなー。


「それじゃあ、恒例の餅つき大会を始めようか!」

「餅つき?」

「エリゼさんには私が教えてあげます! いいよね、お父さん!」

「じゃあ、今年はモモに任せようかな」


 杵と臼、炊いたもち米は既に用意していたので、姉さんと縁側に座って、モモ達が餅をつく様子を眺める。


「いいですか、力を入れすぎて臼と杵を壊さないでくださいね」

「が、頑張る」


 エリゼちゃんも最初こそ戸惑っていたが、慣れてくるとすごいスピードで杵を振り下ろしており、モモもタイミングよく餅をひっくり返している。

 最初こそ怪我をしてしまうのでないかと心配していたが、2人にとっては普通のスピードらしい。

 異世界の餅つき、恐ろしい。


「美味い! 餅、モチモチだぁ!」


 エリゼちゃんが両手にあんこときな粉の餅を持ってわんぱくスタイルで食べている。相変わらずそのスタイルが似合う娘だ。

 モモは淡々と、黙々と、餅を口に運んでいる。食べている時の視線がどこか遠くを見ていて少し怖いですモモさん。フードファイターみたいだな。

 砂糖醤油よりは、甘いあんこやきな粉、ずんだなどが人気で、最終的にはもちではなく、あんこなどをそのまま食べようとしていたの取り上げた。食べすぎても体に悪いからな。


 畑関連の進捗としては数ヶ月の頑張りと、神様割引が入ったことで念願の果樹園とお茶畑のアンロックをすることができた。

 ちなみにモモやエリゼちゃんにはまだ話していない。育てる物を増やすとなればモモが学校に行くことを気にしそうだし。


 餅を食べて、温かい麦茶を啜っていると、モモが何やら話したいようで俺の正面に座り直した。


「どうしたモモ?」

「お父さんに相談とお願いがあります」


 優秀でほとんどのことを助けなし出来てしまうこの子がお願い。どんな無理難題を言われるのか少し怖い。


「学校が始める前に少し早めに出て外の世界を回ってから、そのまま学校に行きたいの」


 なるほど。悪いことではない。モモはここに来る前のことは村の事しか知らず、知識こそ増えたがあくまで知識であって、実際に見たり体験したことは多くない。

 特に知らない人との接し方など、街にでないと体験できないことが多いはずだ。

 ただ心配でないと言えば嘘になる。火の鶏か、ピーちゃん辺りに乗せてもらって直で学校に向かうことだってできるんだ、無理に危険な道を進むことはない。


「モモがそう決めたなら俺は応援するよ」

「お父さん、ありがとうございます!」

「でもね、初めての事だし俺も心配なんだ。少し条件は出すけどいいかな?」

「どんな条件?」


 まずは道程の提出とすり合わせだ。

 流石はしっかり者のモモなだけあって、既に道筋は決めていたようだった。

 王国ルートではなく、王坂、ビクド、帝国に入って最終的に最北端の学校へ向かうルートとなっていた。


「帝国内は不安定と聞いているの人里を通らずに森林や山脈を越えていこうと思っているの」

「危なくないか?」

「この辺の森と比べれば大した事ないと、会ったことある人は言ってたから大丈夫!」


 さくらさんを筆頭に強い人達だし、その人らが太鼓判を押すなら問題ないのか?


「しっかり道も決めてるんだね。俺のお願い条件としては、こことここ、帝国に入ってからもできれば手紙を出してほしいんだ」

「はい。ピーちゃんも一緒に来るって言ってたから、帝国に入ってからは1回ピーちゃんにお願いするね。大阪と聖国ではガンジュさんやソーズさんに挨拶しに行った時にお願いしてみる」

「俺からも2人には手紙を出しておくよ」


 モモの予定としては3月前には旅立つそうだ。

 ギリギリまでは一緒にいれるのか思っていたので少し寂しいが、モモが決めたことだ。誠意一杯応援してあげたい。

 ただ厳しいこの世界でモモが変わり果てた姿になってしまうのでないかと、不安が過ぎる。


「にゃーん」

「そうですね。絶対なんてことは生きてる上でないですからね」


 少し不安になったのが、一緒に話を聞いていたエリゼちゃんがモモの話を最初こそ真剣に聞いていたが、いや、真剣にはずっと聞いていたか。

 途中で明らかに話についていけてなかった。この子も来年には冒険者になるためにここからでていくんだよな? 大丈夫なのだろうか、少し不安になった。


「エリゼさんは獣的な感覚に優れているから、たぶん……大丈夫だと思う」

「まぁ、まだ時間はあるから頑張って勉強をしていこうね、エリゼちゃん」

「わ、私だってやればできるんだから!」


 やればできるってぶっつけ本番ではなく、計画性を持ってやろうね。

 あと1年もあるし、この数ヶ月でこの子は劇的に変わったんだから、言う通りやればできる子。

 きっと大丈夫だ。





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