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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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2−30 No.1にさせたくて

 秋の夜長、子供たちが寝静まった後の大人の時間。

 ショーンさんも帰路について、姉さんと縁側で月見酒。ところで異世界の月も月って名称なんだろうか。

 姉さんの耳がピクピクと動く、この不快な時間が凍結したような感覚。


「風が騒がしい」

「にゃーん」

「ちょっと言ってみたかっただけですよ」


 縁側前の庭に大袈裟なエフェクトが発生し、彼女が現れる。


「見参!」

「サイゼ様、こんばんは」

「リアクションが普通すぎる! もっと喜ぶとか、驚くとかあるだろうに!」


 相変わらず面倒臭い神様だ。


「わー驚いなぁ。御用件をどうぞ」

「ノリが悪い男だなのう」

「それほどでも」


 あからさまに俺と姉さんの晩酌セットを見てくるので、台所に行って追加の品々を持ってくる。

 

「良い心がけだな!」

「今日もリープさんはいらっしゃらないんですか?」

「毎回、気にするのう。惚れとるのか?」


 単純に飼い主が不在の猛犬の相手をするのが不安なだけですよと言えない。あ、心読めるんだっけ?


「誰が猛犬じゃ!」

「まぁまぁ、今回のビールは妖精王が麦の世話を一部手伝ってくれた極上部分をビールにしましたので絶品ですよ」

「そんなことで誤魔化せるとで−−美味い! なんで私達に販売をしない!」

「だって妖精印シリーズは1人しかいないので、家で消費して終わっちゃうんですよ」

「これだったら絶対にぴも喜んでくれるのにー!」


 ピ? 変わった名前だな。


「ぴって言ったら彼ぴに決まってるだろうに」


 自慢げだなぁ。前のビックになるという男と付き合うことになったのか。


「おめでとうございます」

「うぬ」

「それで本日のご用件は?」

「少し相談があってなぁ。今より買取価格が3倍に跳ね上がったら嬉しくないか?」


 怪しい、怪しすぎる。

 姉さんの反応は特にない、俺に任せるってことなのかな。


「不安なのもわかる、だが私を信じてこの買取箱を使用してほしい」

「急に言われても。突然どうしたんですか? これってリープさんも了承済みです?」

「リープには……言ってない。でもぴが新しい買取口を紹介してくれてね! 今やっている商売も自分ならもっと上手くやれるって! 私の報酬も上がるからそれで俺のことをナンバーワンにしてくれって、ナンバーワンになれたら結婚してくれるって話になったんだ」


 あかん、これあかんやつです。リープさん! 早く来て!

 少し前にニュースでやってた系の犯罪だろこれ。


「彼ぴは嘘なんてつかないもん!」

「そうなんですか。 ところでナンバーワンってなんなんですか?」

「新しく開業された、ホストクラブだ!」


 神様の世界ってどうなってるんだよ、そういう会社ができたりもするのか。すぐに取り潰しになりそうだけどな。


「そんな怪しげな話に乗れるはずないじゃないですか。あまり人の恋路の邪魔はしたくないですけど、家族とか頼れる部下とかに相談したりしました?」

「皆んな、話も聞かずにやめろ、別れろって言ってくるんだもん!」


 だもんって子供じゃないんですから! 周りの人もまともなんだろうけど、だからこそ頭ごなしに話してしまうのかな。


「にゃーん」


 お前の惚れている男の話をしてみろと突然、姉さんが聞く体制に入ってしまった。

 姉さん、これ絶対に面倒臭いことになりますよ?

 そこからはエリゼ様の彼氏自慢が始まる。いかに凄いのか、素敵なのか、甘ったるい話だ。この話はいつまで続くんですかね。


「サイゼ様、そこまでです」


 リープさんキター! 姉さん時間稼ぎだったんですね!

 リープさんと一緒に現れた、天使のような人達に連れて行かれてしまった。


「ご迷惑をおかしました」

「にゃーん」


 もう少し話をしてもよかったとかマジっすか姉さん。


「にゃーん」


 本気でエリゼさんのことを可哀想だと言っている。恵まれた環境で育った箱入り娘、新しい仕事、新しい環境で雄に対しても免疫もなく、泥沼へとハマってしまった。

 話してわかるようなら、もう少し話をしてみたかったとのことだ。俺も娘を持つ親として少し怖い。モモも学校に行って変な男に引っ掛かったらどうしようか。少しサイゼ様の件が笑えなくなってきた。


 リープさんがさっきまでサイゼ様のいた場所に座る。あ、なんか話す感じなんですね。

 新しいビール入れ直してきまーす。


 そこから姉さんにリープさんが愚痴り始める。

 リープさんはサイゼ様のことを小さい時から知っているらしく、昔は可愛らしかったとか、最近は生意気でとか、そんな話をしている。


「にゃーん」

「彼女は管理の仕事なんて向いてないんです。だから蹴落とそうともします」

「にゃーん」


 本当に心配しているならもっと、成長できるように手伝ってやれととのことだ。リープさんも大概歪んでいる。

 俺が持ってきたビールを一気にあおって飲み干す。ペース早いなー。


「結局例の不適切な店は隠れて営業していたのですが、無事発見されて運営した神々や亜神は地獄行きとなりました」


 地獄行きとか天界こえぇ。


「サイゼ様を含めて若い神が標的となりましたが、幸いにもサイゼ様は不正行為の一歩手前で止めることができました」


 神様の世界も大変じゃないですか。

 俺達も巻き込まれなくて本当によかったよ、強行手段に出られたらなす術がないからな。


「にゃーん」

「本当ですか?」


 この後のケアが重要だって話はわかるんですけど少しの間、預かってもいいぞって何を言ってるんですか?

 しばしリープさんが考え込む。いやいや、考え込まないでよ!


「にゃーん」

「お願いします」








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