2−28 婚活
「最高でした」
長湯をしすぎたのか、顔を真っ赤にさせてパジャマ姿のラフな格好をしたショーンさんが満足気な表情でリビングに戻ってきた。
「そうでしょう、そうでしょう。風呂は人生の洗濯場? 洗濯機? みたいな感じですから」
7対3最高の比率のビールをショーンさんに渡し、風呂上がりではないが俺も一緒になって酒を煽る。
来客中は飲みすぎてもモモに、怒られないの最高である。
「美味い! このビールは最高ですねー。さっき飲んだのが同じ物とは思えません。おっと、彼女が淹れてくれたのを批判したわけではないですからね」
「わかってますよ。お手伝いしてくれる気持ちは嬉しいんですけどね、控え目に言っても味の方はね」
2人で苦笑いしながらビールを煽って、焼きナスを頬張る。夜になって少し冷えた風が心地よい。
風呂上がりのショーンさんは尚更だろう。
「突然お邪魔したのにここまでもてなしていただきありがとうございます」
「気にしないでください、ずっとのここにいると誰かが遊びに来てくれるのって嬉しい物ですから。飲んだくれで働かないエルフが来ると苦笑いもしたくはなりますけど」
「彼の方にそんなことを言えるのはユウさんやモモ様くらいですよ」
新しいビールを淹れて、もう一息つく。ショーンさんはソーズさんと違って察しもいいし、巨乳の人の話をこのタイミングで聞けるだろうか。
「1つ、ユウさんに謝罪しないといけないことがあるんです。ソーズが紹介すると言っていた、無駄に乳がでかい女のことなんですが……」
ショーンさんの言い方には棘があるな。巨乳嫌いなのかな?
「先にフォローをさせてもらいたいんです。ソーズも紹介するとか言ってたと思うんですが、彼にとってはそういった意味ではなく友人を紹介するくらいの心持ちだったのをあらかじめ理解いただけると嬉しいです」
そういった意味ではない? 友人? ふーん、俺だってそのつもりだったけどね! へっ!
「その、ソーズに子供ができまして」
「めちゃくちゃめでたいじゃないですか!」
「例の無駄にでかい女との間にです」
「え?」
「シオールは筋肉教の重鎮でもあったんですが、ソーズに元々惚れていたんです。ソーズを酒に酔わせて見事に仕留めまして」
ふーん。そっか。別に期待なんてしてなかったし。
「本当に申し訳ありません! 事前情報なく、ソーズがシオーネと子供でも連れてここに来ようものなら、ユウさんのショックはより大きい物になると思い、今回は取り急ぎ自分が来た次第なんです」
土下座でもするような勢いでショーンさんが謝罪してくる。
そうか、ソーズさんはその辺、疎いもんなぁ。でも子供か、いいことじゃないか。うん、そうだよ。
ここ数年、たまに思い出して少しワクワクしてただけだし、期待を裏切られたなんて思ってないし。
「にゃーん」
姉さんいらっしゃったんですか? 西瓜をもっと食わせろ? 冷蔵庫に入ってるんで齧り付いたらどうですか?
「にゃーん」
「痛い! 本気の猫パンチはやめてください!」
「にゃーん」
本気でやったら首がなくなる? 尚更やめてくださいよ。
「にゃーん」
「うじうじするなって? うううぅ、少しくらいうじうじしたっていいじゃないですか!」
「にゃーん」
「穂、本格的な嫁探しですか?」
「にゃーん」
「あの、杏様の言葉は自分、わからないのですが、なんとおしゃっているんですか?」
「ショーンさん、俺は婚活をしようと思います!」
「コンカツ?」
「結婚をするための活動です! そこで頼れるショーンさんにお願いがあるんです! 希望としては子連れが問題なくて、おっぱいがデカければ尚よしで結婚適齢期の女性を希望します!」
「えっと、僕が探すんですか?」
「俺はショーンさんほど察しが良くて頼れる人をガンジュさん以外には知りません! いえ、ガンジュさんに頼んでもどうしても獣人基準ですから毛並みがいいだろ? とかでちょっと違う路線の人を連れてくる可能性があります! その点で言えばショーンさんに任せれば安心だ!」
これぞ神の恩恵! 姉さんのこいつに頼んでみればっていうアドバイスもナイスです!
「お父さん、何を騒いでいるんですか?」
牛乳を片手にお風呂上がりのモモが台所からリビングに顔を覗かせる。
「嫁探しの相談だよ!」
「まぁ聞いてたけど。杏お姉ちゃんも無茶振りをするよね。ショーンさんってよく苦労人って言われませんか?」
「モモ様、わかって頂けますか……」
「大変ですね。あ、お父さんに紹介する前にまずは私を通してくださいね」
「……はい」
ショーンさんとモモがゴニョゴニョと何やら話している。距離近くない?
赤ら顔でビールを煽っていたショーンさんの顔が青くなってるんだけど、大丈夫かな体調悪い?
「にゃーん」
「はいはい、西瓜ですね! 喜んで!」
「お父さん、西瓜? 私も食べる!」
本当に君らの胃袋はどうなってるの? 昼間にあんなに食べただろうに。
「妖精印じゃなくていいかな?」
「やだー!」
「にゃーん」
売れば高いのに。まぁそんなケチくさいことを言うもんじゃないか、どうせエリゼちゃんも食べたいって騒ぐのだろうし、多めにカットするか。
美味しい西瓜を出せば、ショーンさんも元気になるかもしれない。よき理解者を得たなぁ。




