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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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2−21 名づけ

 エリゼちゃんが妖精さんに花を紹介したいと、外に出て花壇を見せる。

 妖精さんも気に入ったようで、花壇を飛び回り、つまみ食いといった感じで向日葵に座ると、また手から水を出して口に含んでいた。向日葵が枯れることはないので、ある程度は調整できるんだろうか。


「私が育てました!」


 妖精さんが美味しく花を頂戴している姿を見て、エリゼちゃんがドヤ顔をしている。

 さらにお花を頂戴して、満腹になったのかモモの頭の上でゴロゴロしながら何か意思の疎通を行なっている。


「お父さん、この子がここに住みたいと言ってるんだけど」


 両手を腰に手を当てて私がここに住んでやってもいいけど?  みたいな態度をしているんだけど。モモというフィルターを通してだいぶ柔らかい言葉に変換されたようだ。


「野菜や草花の成長の手助けもできるって、ダメかな?」

「この子も行き場がないのだろうし、希望するなら居てもらってもいいよ」


 握手代わりに指を差し出すと、指の上に乗ってふんぞりかえる。いい性格してんなぁ。

 畑とかの成長も助けてくれならお助けキャラ的な認識でいいのかな。嫁を迎え入れることはできないけど、家族が増えるのは賑やかになって嬉しいものだ。

 なんだかんだで、姉さんも大福も可愛がっているし、個性的な性格をしてるけど家族とも上手くやれるだろう。


「悠、妖精自体が個体数が少なく、貴重な存在だ。我々が外に漏らすことはないが、珍しい存在であることを認識しておけよ」

「わかりました。モモとエリゼちゃんも認識しておいてくれ」

「「はーい」」


 俺の話を半分に、大福の上でくつろぐ妖精さんが可愛いと我が娘達はキャッキャと騒いでいる。

 動く人形さんみたいだし、欲しがる人がいるのはわかるけど、この子らも生きているわけだし、実際には人形ではないのにな。過去の出来事といえ少し悲しくなる。


 火の鳥の家族や、妖精さんといい、人以外の割合が多くなってくるな。

 そういえばソーズさんが巨乳の女性を紹介してくれるみたいな話あったけど、あれはどうなってるのか。

 忙しいのだろうし、わざわざ紹介予定の女の子どうなってますか? みたいな情けないことを聞く勇気は俺にはない。


 ひとしきり、妖精さんを愛でた後にはいつも通りの畑仕事をする。

 妖精さんも水やりを手伝ってくれているのか、花と畑を何度か行き来している。ちょこちょこ、パタパタと忙しそうに動く妖精さんは見てて飽きず可愛らしい。

 

 ここ数日のルーティンだった、結界外での訓練も今日はお休みのようで昼食後はまったりとした時間が流れる。

 全員揃っており、時間があるので今日は川の側でバーベキューである。家の前の方が楽ではあるが風情も楽しみたいし、何より涼しい。

 暗くなると見えないので、いつもよりも早い時間に夕食の準備と仕込みを行なっていく。

 

 火おこしやバーベキューコンロの用意はガンジュさんとルイさん、エリゼちゃんに任せてモモや奥さんと台所で仕込みをする。プラスで足元には大福が待機している。

 エリゼちゃんは思考がどもうも女の子! というよりも男の子! に偏っており、料理も上達してきているが役割分担があれば外の方を好んでいる。


「そもそもの性格がガサツなんだよ。髪もしっかり乾かさないし、顔を洗ったりお肌のケアだったサボったり雑だったりするの! でも肌も髪もツルツルなんだよね」

「あー、エリゼちゃんも元の質がいいんだろうねー」


 いるよねー、努力しなくても綺麗だったりカッコよかったりする奴。そんな不満? 手のかかる姉の愚痴を漏らしているモモも父親フィルターがなくても十分に美少女ですよ。


「大福様、ご飯前ですから何もあげませんよ」


 モモが好きなんだなー、くらいに思ってたけどおこぼれをもらおうとしていたのかこの犬は。


「そうだ、大福さんや、今回きている子供らの名前を考えてやってくれないか?」


 俺があまりに簡単に話してしまったのを聞いて、奥さんが包丁を持ったままアワアワしている。まずは包丁を置いてくれ。


「わん!」

「そういうのは苦手だからお父さんに任せるって」

「任せると言われてもなー。俺に名付けをしてほしい訳ではないですよね?」


 奥さんに話を振ってみると、ガンジュさんに相談するってことになった。

 大福もサクッと決めてくれればいいのにさ。面倒と感じたのか、本当に苦手なのか、俺ではなく子供好きの姉さん辺りに振って欲しかったな。


 仕込みが終わって、川辺に行くとコンロの組み立ても完了しており、時間が余ったのか薪で既に魚を焼いているワンパクな小学生男子達がいた。

 奥さんと、モモにご飯前なのに怒られている。面白い光景だ。

 川辺のパラソルの下で寝息をて立てる子供らを姉さんが見守っている。よく遊び、よく寝る、良いことですなー。少しお腹をもふっていいかな?


「にゃーん」


 姉さんの高速猫パンチで、手を弾き飛ばされた。マジで痛いんですけど。ダメですかそうですか。

 仕方ない、野菜から焼いて、バーベキューの準備をするか。

 野菜から始めて、肉を焼いていく。とうもろこしを焼いているのもあって、火の鶏一家も川辺までやってきた。一足先に焼けたとうもろこしを渡す。熱くないのかな? まぁ幻獣とかいう特殊な個体だし、問題ないのだろう。奥さんは普通の鶏のだったはずだけど、なんか体も大きくなって鶏にしてはピーちゃんに似た美人顔になってきてるし、この世界はどうなっているのか。


「悠、聞いたのだが、お前が孫らの名前を決めてくれるそうだな」

「そうだなって、決定でいいんですか?」

「問題ない、大福様よりお言葉をもらい悠が指名された」


 大福が認めた人間ならそれも名誉ってことなのか。


「それに個人的にも悠に決めてもらえるのは嬉しい」

「そう言われるとなんか照れるんですけど」


 どんな名前にしてくれるのかと、ガンジュさんの後ろで息子さん夫婦と何故かエリゼちゃんとモモまでワクワクした眼差しを向けてくる。

 

「俺の世界では安直かもしれない名前なんですど、空と大地なんてどうでしょうか?」


 一同から拍手をもらった。双子で揃ったような名前だと安直かなって思ったけど。ま、満足していただけたということでよろしいでしょうか?

 そういえば、妖精さんの名前も考えないとだな。

 


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