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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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2−19 妖精

「これが守りの木か? 【精霊樹】ではないか!」

「ではないか! とか言われても俺にはさっぱりですよ、ガンジュさん」

「興奮してすまなかった。そうか、知らんのも当然か。精霊樹とは貴重な木でな、葉は勿論、細い枝も含めて貴重な素材となる木だ」


 神様が特典で与えてくれた木だし、レアなものではあると思ったけど激レアな木なんだなぁ。


「外の世界ではもう存在していないんですか?」

「存在はしているが、俺が知っている精霊樹はやせ細り枯れかけてはいるな。王坂の竜王様の邸宅にあるが、なんとか現状を維持するがやっとな状況だ」

「上手く育てることができないんですか」

「謎が多い木でな。もし生育に成功した場合には情報を共有してほしい」

「土地の違いもあるかもしれないですし、水しか基本的に与えていないので特別に何かするってことはないと思いますけど、無事成長するようなら共有しますね」

「これからも何か新しい物を植えたり、手に入れた場合には適宜報告をしてくれ。ここはただでさえも宝の山ばかりだというのに、精霊樹までとなればますます外に出る時には警戒をしなければならないな」


 ブツブツとガンジュさんが話し続けている。元々ここから外に出るつもりもないけど、モモ達にも貴重である木だと共有しておかないとな。

 薬とかにもなるなら成長したら、素材を提供して作ってもらうか。回復魔法も凄いと思ったけど、この世界規格の薬も優しさ半分でできた薬よりも効果ありそうだもんね。


 ガンジュさんと守りの木の様子を見た後で、エリゼちゃん作の朝食をいただく。

 パンに焦げたスクランブルエッグとウインナー、野菜が入った贅沢なホットドック的な物が出てくる。スクランブルエッグが少しシャリシャリしていたけど、最初と比べれば料理も上達してきている。


 朝食をモモと大福が手早く食べ終えると、そそくさリビングから出ていってしまう。食べ終えると言っても半分くらい残したパンを片手にだ。エリゼちゃんのご飯は食べれないほどの味ではないし、これはあれだな。

 隠れて子猫はいないとしても、何か小動物を拾って来た感じかな。俺も昔に子猫を拾った友人の手助けをしたものだ。

 

「私のご飯、ダメだったのかな」


 エリゼちゃんが落ち込んでしまっている。と言うことはだ、エリゼちゃんはモモの隠し事は預かり知らないと預り知らないということになる。


「エリゼちゃん、心配ないよ。ご飯は美味しいからさ、モモもお腹減ってなかったのかもね。姉さんは何か知っていますか?」

「にゃーん」


 大福が結界内に入れているなら悪い物ではないのだろうと、姉さんはそこまで興味がないようだ。

 時間が経てばモモから相談をしてくれるだろうか。危険な生物でなければ家族に迎えいれることはやぶさかではない。

 そういえば子供らの名前の件も大福に相談できないままだなぁー。


「今日もお世話が終わったら訓練に行ってくるから!」

「気をつけてね」


 エリゼちゃんがご飯を食べ終わった後に宣言をして、動物達の世話をするためにバタバタと外に出ていく。

 開放的になるのはいいけど、もう少しお淑やかにできないものだろうか。

 本日はガンジュさんも訓練について行くとのことで、奥さんと子供達、姉さんとボールやフリスビーで遊んだりと穏やかな時間を過ごす。

 モモの部屋に隠している内容の正解があるのかなーと考えもしたが、年頃の娘の部屋を勝手に除いて『パパなんて大っ嫌い』とか言われたくないので、モモから相談があるまではしばし静観する。


 夕方前にはモモ達も無事帰宅してきた。狩って来た獲物を保存庫にしまって、女の子組はお風呂に直行、ガンジュさん達はとりあえず井戸の水で軽く汚れを落とす。

 本日のご飯は具沢山の豚汁? 豚かはよくわかないけど、と米、サラダに漬物、数日豪勢な肉料理が続いたがそろそろ戻していかないと胃の調子的にも厳しい。


「豚汁美味い!」


 満面の笑顔で声高らかに豚汁を掲げると、米、豚汁、米、豚汁、漬物、サラダ、豚汁と素晴らしいリズムでご飯をかき込んでいく。実に気持ちい食べっぷりだ。

 モモはいえば少し元気がなく、食事も進んでいない。大福はモモを心配そうに見ているが既に豚汁とご飯は4杯目と対照的ではある。大福は雰囲気心配しているだけで実際には心配してないとかないよな?


「お父さん、皆さんに相談があります」


 ついにモモからの相談がきた! パパが力になっちゃうからね!


「どうしたモモ! お姉ちゃんが力になるぞ!」


 モモがエリゼちゃんを冷たい目で一瞥する。そんな目もできるんですね、モモさん。そんな目でパパ見られちゃったら数日眠れないと思う。まぁ親しいからこそってのはあるんだろう。


「実は保護した子がいるんです」


 予想した通り、何かを保護していたのか。

 まずはモモの頭を優しくなでなでする。


「そうか、その子は怪我とか大丈夫なのか?」

「勝手に家に入れたのに怒らないの?」

「怒るもんか。モモはその子のことを助けたんだろ? モモの優しさを否定することはないよ。あ、それが年頃の男とかだったら後で怒るかもしれないけど」

「にゃーん」


 最後まで締めるなら、しっかりと締めろと姉さんに怒られた。


「男性とかではないよ。その……妖精さんなの」


 妖精? 妖精と言えば思い浮かぶのは小さい女の子で羽があり空を舞う、そんなイメージだが合っているのだろうか。


「妖精か。珍しい存在ではあるな」

「知っているんですか、ガンジュさん」

「ああ、物語などに出てくるが、個体数が極端に少ないとは言われていたが絶滅しているものと思っていた。俺も実際に見たことがないが、2世代前には数体確認されていたという話もある。小さい人形で背には羽がある生物だな」


 俺の持っていたイメージ通りって感じか。


「私も持っている書物で知識はあったのですが、何も食べないんです」


 食べ物が合わないのだろうか。妖精って何を食べるんだ?

 

「それならもっと早く相談してくれればよかったのに、色々出してみるから食べるか見てもらおう」

「ごめんなさい。その妖精さんは人と会うのを嫌がっていて、私が保護した時も非常に怯えていたの。私がエルフということに気がついて少し落ち着きはしたんだけど」


 人を嫌っているか、迫害でも受けたっていうのか。

 それにエルフと知ってとは? 頭の中には花の名前をした長寿のエルフがニヤケ顔でダブルピースをしている絵が出てくる。


「怯えるのも当然かもしれない」

「ガンジュさん、それはどうしてですか?」

「妖精の個体数が減ったのは、物珍しさからの乱獲などと言われている」

「乱獲された後は、どうなるんですか?」

「愛玩動物としてはマシな扱い、後は口にはしたくないな」

 

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