2−13 姉妹?
守りの木、名前の通り草花ではない。0円だったのでとりあえず購入してみたが苗木である。
名前的には土地を守ってくれるような木なのだろうか? でもこの土地には神様お手製の結界があるしなー、まぁせっかくだし植えておくか。
「お父さん、その木? はなに」
「なんか神様がくれたみたいだから植えておくよ」
「私が育てます!」
「はいはい、お願いね。あとは普通の草花の種も購入しようか」
タイム、ミント、ローズマリー、ローリエ、よくわからんけど、聞いたことある草から育てもらおう。
あとは彩りの花だよなー。ラインナップを見る限り聞いたことがない花が非常に多い。
定番のヒマワリとアサガオをチョイスする。夏ってあとはどんな花があるのかな? 見たことがなラインナップのばかりだったが、マリーゴールドとユリの花を見つけたので合わせて購入してみる。
購入した種をエリゼちゃんに渡して、一緒に外にでる。
花壇の設置場所を決めないといけない。家の前でいいだろうか?
「にゃーん」
「縁側にも彩りですか。そうですね、縁側と家の前に花壇を作りましょうか」
家の前にも2ヶ所ほど設置場所を選定して、確定させるといつもの小人ドワーフの妖精さんが出てきてあっという間に花壇が完成する。エリゼちゃんが終始、興味深そうに妖精さんを眺めていた。
家の前にはヒマワリとアサガオを、縁側にはユリとマリーゴールドを植えることになった。
モモとエリゼちゃんが仲良く? 種を植えていく。
エリゼちゃんが雑に埋めていくので、さりげなくモモがフォローしてくれているようだ。
水を上げる際にも、花にとっては致死量となるのではないかという、大量の水をかけようとして、モモに水を抜かれていた。モモも手がかかって仕方がない、やれやれという雰囲気は出しているが、前を向いて頑張ろうとするエリゼちゃんを応援してるようにも見える。
「あとはこの守りの木とかいうのをどこに植えるかだなー」
「わん」
どこに行っていたのか、前足を真っ黒にした大福が駆け寄ってくる。また泥遊びでもしていたのだろうか。
「大福様、また汚したんですか?」
モモに土を払われて、大部分の土は取れたものの、黒く汚れているのには変わりない。洗うのが大変そうだ。
「わん!」
「お父さん、こっちに来てって」
大福に導かれるまま、家の裏に行くと苗木を植えるのに丁度良さそうな大穴が空いている。
気を利かせて穴を掘ってくれたのは嬉しいが、大福を洗わないといけないと考えれば労力がペイしきれていないような気もするが、感謝の気持ちを込めて大福の頭を撫でる。
モモとエリゼちゃんで、苗木をゆっくりと穴に入れると周りの土で埋めていく。仕上げに水をかけて完了である。
「汚れたし、お風呂に入っておいで! あ、お風呂前に軽く水で流してなー」
「モモ、川に行こう!」
「井戸でいいじゃないですか」
「わん!」
エリゼちゃんに引っ張られて行ってしまった。
つい最近まではお嬢様だったとは信じられない野生児になってきたな。
「川遊び終わりに風呂に直ぐ入れるように用意しておくか」
モモの面倒だけ見てると、いや、今では俺が面倒を見られてるのか? モモだけでだとわからなかった苦労も発見できて、なんだか楽しい。
これが赤ちゃんから育てるとなるともっと大変なんだろう。なんでもモモを基準にしてしまうのはよくないのかな。
「にゃーん」
そろそろ嫁探し、焦った方がいいんじゃないかとは言いますけど、この世界にはマッチングアプリもないし、閉鎖した空間にいると出会いが少ないんだもん!
「今度、神様に会ったらもう一回、女性との出会いがあるようにお願いをしてみますよ」
「にゃーん」
またコントみたいな行き違いがないようになって、それはサイゼ様に言って欲しいんですけど。
お風呂を用意して、お昼ご飯と夜のメニューも考えないとなぁ。
「にゃーん」
「角煮! いいですねー! でも煮込むのには時間かかりますし、昼は何が食べたいですか?」
「にゃーん」
ラーメンか、確かに麺も作れるけどスープって難しそうなイメージがあるんだよな。ちょっとレシピを調べてみよう。
台所に入って、レシピを除いてみる。角煮以上にスープ作るの時間かかりそうなんですけど。ラーメン屋さんってやっぱ凄いなぁ。
あ、でも鶏ガラスープの元とか麺つゆ使って作る醤油ラーメンは簡単そうだな。製麺機に小麦粉を入れてラーメン用の麺を選択して、レシピに沿ってスープを作成する。具材は野菜大盛りでいいかな。
キャベツにネギ、もやしを入れて、肉も多めに用意する。なんか麺がメインではなくなりそうだけど美味ければいいか。
角煮は豚っぽいブロックを切って、下茹でをして醤油、砂糖、酒、みりん、生姜に水と茹で卵を加えて、下茹でが完了した肉と一緒に鍋にぶち込む。
「帰ったわ!」
「ただいまですよ、エリゼさん」
「ただいまー!」
「おかえり。お風呂入れているから大福も一緒に頼んでもいいか?」
「わん!」
「エリゼさん、濡れてるので、裏から回りましょう」
「わかった! 大福様も洗っておくから!」
元気やなー。少しお腹減ってきたし、先にラーメンを食べてしまうか。
「にゃーん」
「はいはい、すぐに用意しますからね」
麺を手早く茹でて、スープが入った器に入れる。野菜と肉を山盛りにして準備は完了。
「にゃーん」
「いただきます」
うん、悪くない。簡易スープもいいねー。今度はもう少し手間をかけてスープを作ってみるのもいいかもしれない。
ラーメンを食べ終わって、麦茶を飲みながら姉さんとゴロゴロしていると、中途半端に濡れた大福がリビングに飛び込んでくる。
「わん!」
「にゃーん」
姉さんに冷たいと怒られたのか、縁側に出て姉さんから風の魔法で毛を乾かしてもらっている。
遅れて、モモとエリゼちゃんのコンビもお風呂から上がってくる。
「いいお湯だったわ!」
「お父さん、お風呂ありがとう」
「いえいえ、昼ごはん用意するから座ってな」
「大丈夫、自分達でやるよ」
「そうか? 麺を茹でて具材乗せるだけだからさ」
モモ達が台所に入ると、あーでもない、こーでもないと、わいわいとした楽しそうな声が聞こえてくる。
「モモ、私ものそのシャン! ってやつやらせて!」
「ダメです。絶対に麺を落としますよね?」
確かに、湯切りは見てるとやりたくなってくるよね。実際に少し楽しいし。
「エリゼさん、具材乗せすぎです」
「いいじゃない!」
「麺がメインなのに行き着くまでに伸びてしまいますよ」
手のかかる姉と面倒みの良い妹って感じだな。




