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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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2ー1 傍若無人

 久しぶりに姉さんと2人だけで寝たけど、部屋が広く感じたし、なんか寂しかった。

 モモは着実に大人になっているんだし、俺自身も子離れをしていかなければならない。


 居間には以前よりも大きめのテーブルを置いて、L字のローソファーも作成した。家具関連も随分と購入ではなく作成ができるようになってきたの喜ばしいけど……金がない。

 家の建て替えで100万も無くなってしまったし、その他に家具の購入や、家電製品追加したり、変えたりと念の為貯めた200万円が20万くらいしか残っていない。

 初期と比べれば余裕はある方だけど、一気に目減りすると不安になってしまう。次のアップグレードが木材や石材がそれぞれに1000と500あるのが条件に加えて500万かかる。先は遠いなぁ。


 考えてみれば家の広さ的には今で十分な気もするけど、嫁や子供のことを考えればもっと広さは必要になるか。

 この数年で石や木の小屋、加工場のどちらも自動で稼働しているの放っておいても溜まっていくし、金策だよなぁ。


 【温室】と【果樹園】も家のアップグレードでアンロックされたし、果物関連は間違いなく高いだろうから順次解放していきたいけど。それぞれに100万円かかる鬼仕様となっている。

 リターンが大きいだろうから、金額的には高くはないと思うけど、それでもしんどいのには変わりない。


「ぴー」

「コケ」

「2人共、いつもありがとうな」


 火の鶏とピーちゃんには家賃代わりに、定期的に魚を収めてもらっている。大福が狩りで肉を確保して鳥メンバーで魚を確保してもらう完璧な布陣である。

 彼らはとうもろこしが大好きなので、今夏はとうもろこしの備蓄のために畑一面がとうもろこしとなっている。他の野菜には備蓄の余裕もあるので焦る必要はない。この辺も年数が経過したからこその余裕だろう。


 「お父さん、朝ごはんの用意できたよ」

「ありがとう。今日はぴーちゃんもうちで食っていくか?」

「ぴー」


 彼女の言ってる言葉はわからないけど、俺の言葉は大福同様に理解してくれるので、やり取りに不都合はない。

 火の鶏は嫁ラブなので、基本仕事が終われば嫁とイチャイチャしている。羨ましい限りだ。

 深く小さい更に分解しておいたとうもろこしを入れて、ぴーちゃんに差し出す。小さい嘴でコツコツとコーンを食べる姿が可愛くて俺的にはマイブームである。

 大福や姉さんがたまに食べるカリカリの音もいいけど、ぴーちゃんの音も中毒性が高い。


 ご飯が終わればぴーちゃんを頭に乗せて、モモは動物のお世話に行ってしまう。

 俺はといえば家庭菜に水をやったり収穫したりとしかすることがないので、午前中でほとんどの仕事が終わってしまう。

 現代や異世界の農家さんには申し訳ないが、時間をかなり持て余している。


 彫刻セットを買って、彫り物を初めて見たり、姉さんの爪を綺麗にしたりなど悠々自適な生活を送っている。これで果樹園や温室が増えれば少しは忙しくなるだろうか。


「にゃーん」

「花ですか。ガーデニングも悪くないですね」


 お茶畑もアンロックはされてるし、生活に余裕も出てきたから花も含めて潤いが欲しいよなぁ。

 花壇が10万円、お茶畑が30万円、結局金ですよねこの世界。世知辛い。


「わん! わん!」


 大福が外でやたら騒いでる、こんなに騒ぐのはいつぶりだろうか。はっ! まさか嫁か!


「大福! 嫁か!」


 んー、大福が背に乗せていたのは女の子である。でも大福の背に乗る程度なのでモモと身長はそう変わらないくらいだ。でも成人女性でも150センチくらいなんてザラにいるし、でもでもなんか洋服が汚れてはいてボロボロだけどやたらファンシーなんだよね。これで成人してると言われても俺と趣味が合わないかもしれない。


「にゃーん」

「死んではないんじゃないですかね。とにかく生きてるか確認しましょう。モモ! 手伝ってくれ」


 モモも異変に気がついたのか、こちらに駆け寄ってきていたので、手をしかしてくれるように声をかける。

 仰向けに寝てみると、顔立ちはやはりまだ幼い。モモと年齢的にも変わらないのではないだろうか? 洋服というよりはドレスも汚れてはいるが手触りがよく、高級感がある。

 最初に出会ったモモの格好とは大違いなので、一般市民ではないと思う。これはまた面倒ごとの香りがしてきた。


「息はあるみたい。口もかさかさだし、お水が必要かも」

「わかった」


 年頃の女の子扱いになってくるので、モモに注いできた水を手渡し任せる事にする。

 体を起こして、少しづつ水を口に流してくが、殆どこぼれてしまっている。それでも女の子の唇は小さく動いている。


「ゆっくり、ゆっくり、飲んでください」


 少女が飲み込んでいく量、口の動きも徐々に活性化して、目が見開きモモから水を奪い取ると一気に残りを飲み干す。

 一息ついたのか、少女が俺達一家を値踏みするように見渡す。最終的には一番側にいたモモをじっと見るとモモが緊張をほぐすためにか笑顔を見せると、少女が拳を振り下ろした。


 え? なんでという疑問の衝撃もあったが、モモがあり得ないくらい距離、吹っ飛んでしまい頭の理解が追いつかない。


「この高貴な私に農奴風情が触れるだなんて許されない事だわ!」


 何言ってるんだと反論もしたくなったが、モモが20メートルは飛ばされしまったので、駆け寄ろうとすると女の子は何故か俺に向かってくる。数歩しか踏み込んでいないのに、俺との距離があっという間に無くなってしまう。


「農奴の管理もできない人間にはお仕置きが必要よね」


 邪悪と言っていい、笑み。この世界にきて純粋な悪意に触れた気がする。振り下ろされる拳を見て、俺は死んじゃうかもと冷静に考えてしまっていた。

 目を瞑り、衝撃に備えてみたが衝撃は特にない。目を開けてみると、振り下ろした拳は眼前にあったがモモがその拳がそれ以上前に進まないようにしっかりと握りしめていた。


「私にまではともかく、お父さんに何をしようとしている」

「卑しい身分の者が私に触れるなんて万死に値する」

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