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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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56 エピローグ

■ショーン視点


「ショーン、シオール、自分は総選挙に出るよ。君達にも力を貸してほしい」


 能力はあるのに、大半が筋肉のことしか考えてないと思っていた友人が聖職者としての自覚をやっと持ってくれたらしい。


 「もちろんよ! 私自身を捧げてもいいくらいだわ」


 もう1人の腐れ縁である、乳ばかりデカい女、シオールが考えなしに、即答する。


「力を貸すのは友人としても聖職者としてもやぶさかではないけどさ。ソーズはどんなビジョンを持ってるんだよ」

「筋肉の再生です」

「悪いんだけど、この話は無かったことにしてもらえるかな」

「おっと、自分としたことが少し言葉が足りませんでした。世界の再生です」


 世界の再生イコールで筋肉へとどうやってつながっていくのだろうか。

 ソーズが袋から粉を出して、僕とシオールに舐めさせる。こいつのことは信用している、変な薬ではないだろうけど、なんだこれは甘い? 複雑だけど色々な食材が混じっているのかな。


「ソーズ、これってこの世界に存在する物なの?」

「存在はしていないですが、実現は可能と考えています」


 無駄に乳だけデカいと思われがちな、シオールだけど、これでも頭や舌を非常にいい。ソーズが筋肉メインで考える変態だとすれば、彼女はソーズメインで物事を捉える変態だ。それぞれに能力はある。これでこの2人の変態性がなければこの国はもっと良くなっていくと、僕は思っている。


 普段は筋肉のことしか考えていないソーズから、驚きの言葉、出来事を聞いた。

 筋肉の話が所々入ってきて、シオールの合いの手が煩く、頭に入って来ずらかったけど迷いの森と言われるところで聖女様の生まれ代わりのような少女と、その父親である賢者と称えられるような存在と出会ったと言うから驚きだ。


「それは直ぐに教会に、いや、国民に伝えるべきではないのかな? 生きる希望にもなり得る話だ」

 

 ソーズは真剣な顔で首を横に振る。ソーズの真面目な顔が素敵とか、シオールが煩い。


「まずは当人達が嫌がっています。波は大きくはいずれなるかもしれませんが、我々ができる範囲で波風を大きなものにしないように努めましょう。経典にも書いてあります、自分がされて嫌がることは人にしてはならないとね」

「君の言うことは正論かもしれないけど、賢者様からもらった種を育てるにも聖女様の話があれば求心力も増すし、ことはよりスムーズに運ぶと思うけど」

「そうかもしれませんね。だからこそ自分の力だけでは難しいの、2人の力を借りたいのです」


 ソーズの言うことはわかる。シオーネも巨乳教をはじめ、農業研究教や筋肉を愛でる教など一定の求心力を持っていて、ソーズもそれは同様だ。不本意だけど、僕も特殊な信者の人達に人気はある。

 それでもだ。足りない。神5に3人とも入れれば過半数も取れるの主導権は握りやすいものの、賢者様からもらったものを育てるとなれば土地、人、金、どれも必要だが、新参の僕らにどれだけに人がついて来てくれるか。


「でもソーズ、私達だけでは少し厳しいのではないのではないでしょうか」


 あのソーズ信者のシオーネですら、全て肯定するのではなく、止めに入っている。彼女の見識は正しい。


「2人共に同様の意見でしょう。自分があの森で出会ったのは、今話したご一家だけではありません。王坂国の方々とも話す機会を得られました」

「お、王坂! どんなモフモフした方々と会ったんだい?」

「ショーン、少し落ち着いてください。貴方のモフモフ好きにも困ったものですね。それ以外はまともだと言うのに」


 くっ、筋肉の変態に諌められてしまった。お前にだけは言われたくなかったのに。


「自分よりも先にトヨナカ殿が悠殿、家族と接触されていたようで種を受け取りある程度の作物の生育に成功していると聞いています。実際に話したのはヒラカタ殿でしたが、竜王様の名代として来ており、我々が神5になれるのであれば是非協力したいと申し出を頂戴してます」


 トヨナカさんって、狼族だよね。ああ、モフモフの尻尾を抱き枕にしたい。ヒラカタさんはカピパラ族だったよね、ずっと見ていたい愛くるしい瞳、実際にモフモフしてみたいなぁ。


「それだけではなく、解析の勇者を王坂に招くとのことで、より作物の生育や食事関連について研究が進むはずです」

「秘密裏にそんな話まで、ソーズは本気なのね。わかった、改めて私は協力するわ」

「ソーズがそこまで言うなら僕も協力しよう。ただし、王坂の外交担当は僕に任せてくれるかな」

「ショーン……それだけは断固拒否します」

「なんで!」

「自分の胸に聞いてみてください。でも出会いの機会は同盟を組めれば、今の環境よりより増えるでしょう」

「わかったよ。協力はする」

「2人とも、感謝します」


 3人で握手しようとしたら、シオールに手を弾かれて、いやらしい手つきでソーズの手を絡め取っている。この女、幼馴染みとはいえ、引くわー。


「そうだ、落ち着いたらですが、悠殿が是非ともシオールや自分の友人に会ってみたいと言ってました」

「ソーズが行くなら私も行くわ! それに農業や酪農している内容も見てみたいし」


 賢者様がソーズの友人に会ってみたいねぇ。うーん、無駄にデカい乳の友人。


「ソーズ、賢者様にはなんて僕らのことを紹介してるんだ?」

「背の低い友人と、胸がデカい友人がいると」

「やだ! ソーズったらそんな目で私のことを見ていたの」


 満更でもなさそうだけど、ソーズはデカいだけの乳なんてただの脂肪としかとらえてないよ。身体的特徴を案内したに過ぎない。

 賢者様は男だったよな? 特殊な性癖でもない限り、目当てはあの乳か?


「なに見てんのよ。目を潰すわよ」

「煩いなぁ、無駄に無駄を重ねてデカいと思っただけだよ」


 賢者様もまぁ、人の子であり俗物ってことか。それにしても賢者様の期待はポッキリと折れてしまいそうだな。

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