54 羊と服
「モコモコです!」
寒空の下で、モモが新しく仲間になった羊をモフモフとしている。俺も触らさせてもらったがかなり上質な毛だった、これで作った服とか装飾品なら高く売れることだろう。
「にゃーん」
「そうなんですよ。恋は盲目と言いますかね。モモには【友達】ができたら男でも女の子でも関わらず紹介してねって言い聞かせました」
「にゃーん」
俺の方が騙されそうだって? そんなことあるはずないじゃないですかね、姉さん! ガハハ!
「お父さん、毛を刈っても寒くないんですかね?」
「他の小屋よりも保温力が高いみたいだし、冬の間は毛を刈った後に出さなければ問題ないみたいだよ」
「わかりました!」
順番に専用の毛を刈る道具でチャキチャキと器用に毛を刈っていく。やっぱり俺よりもモモの方が器用なのか動物の扱いが上手いのもあるのか、綺麗に刈れていた。
あとは花壇のシリーズの中に綿花の種も追加されており、収穫時期こそ違うが時期になったら育てみようと思う。
神様が建ててくれた加工小屋には見たことのないような機器が並んでおり、椅子には1人の小人のおじいさんが座っている。
本来で魚を20キロ渡す必要があるみたいが、今回は3ヶ月は神様払いで働いてくれることになっている。
話すことはできないようだが、素材を手渡すと目の前にウィンドが出てきて、作りれる範囲の製品が表示されるのでそれを選択してお願いするという仕組みだ。
今回、依頼されたのはセーターと手袋、マフラー、アウターの4点。貯まっていた魔物関連の皮も全部預けてみたが、思った以上に色々な製品に加工ができるようで、財布やカバンなど羊の毛と関係がない物も表示される。
とりあえずは今回は依頼された物以外に、子供用の手袋と自分の手袋の作成依頼をかける。
手袋代としてそれぞれに1万円の料金が発生したが、技術料ではなく足りない素材を補ったり、電気? 的な工具もあるのでそれの使用量らしい表示が出た。神様から依頼されたものは特に金額が出なかったのでこれもあの人持ちなんだろう。
今は農作業関連も主に軍手だったのでオーダーメイドの手袋を使えるなんてちょっと憧れていたんだよね。時間としては3日後になるようで、選択が終わると出ていくことを促されて、小屋の中には入れなくなってしまった。
「お父さん、楽しみですね」
「そうだね。モモの服もどんどん増やしていこうか」
「お父さんの服もですね!」
可愛いやつめと、頭をゴシゴシと撫でる。かっこいいお父さんでいれるように努力するとしよう。
「にゃーん」
姉さん用のベットも作って欲しいですか。動物用品もラインナップにあったので次回、作りますか。
そうなってくると、大福が起こらないようにセットで作らないとなぁ。羊の毛を取れるのが何日後になるかだな。
畑の世話を済ませてしまえば、今日のやることは無くなってしまったのでモモと炬燵でオセロに興じていれば泥だらけになったソーズさんと大福が帰宅してきた。
「ただいま戻りました」
「わん!」
今回の獲物は鳥っぽい魔物と豚っぽい魔物の2匹だった。ソーズさんの収納魔法のおかげで獲物自体もそこまで汚れておらず解体が楽そうだ。
簡単な昼食を用意して、2人にはお風呂に入ってもらう。風呂と飯を済ませてもらっている間に解体作業だな。
「お父さん、私にも手伝わせてください」
「勉強や鍛錬はしなくていいのかい?」
「早朝にある程度は済ませてますし、解体も勉強の1つです」
前は身長も足りなかったし、刃物を待たせること自体に抵抗あったけど、今のモモなら教えてあげた方がモモのためになると思う。
「わかった。俺の教えは厳しいぞ!」
「はい!」
獲物を預かって解体するために小屋に入る。これまでの俺の手順を覗き見していた成果なのか、少し教えただけで1つのことから複数の意味を理解してくれる。こういう子を天才と言うのだろうか? 俺が親バカすぎるだけなのか、モモは教えたことをどんどん吸収して、それを実行することがで出来る子だ。
俺が思っている以上にモモが巣立つのは早いのかもしれない。
「お父さん、次はどうすればいいですか?」
「そこ、足のところから切れ目を入れて皮を剥ごうか」
「はい!」
花嫁衣装だけでなく、モモが外の世界に出ていく時の貯蓄でもないけど、手袋以外にも服とかの備えもしないとな。
解体だってきっと外で役に立つだろうし、料理もそうだ、俺が出来る範囲のことは教えていこう。
あとはこの世界で使う必要があるのかわからないけど、モモがいずれ王坂とかに行って偉い人と会うことがあればテーブルマナーとかダンスとか淑女としてのスキルも……まぁ先のことを考えすぎても仕方ないか。俺が今できることを教えていこう。




