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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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53 しもしも?

 1月の半ばになって本格的に雪が降ってきて、一面が銀世界となったが畑や石畳を敷いた箇所など施設関連には雪が積もることはない親切設計で安心した。

 ソーズさんはこの寒い中、たまには本格的な鍛錬をしないと鈍ってしまうと、大福と1泊2日の狩りツアーに出掛けてしまった。

 たまには1人で晩酌するのも悪くない。しんしんと降る雪を暖かい部屋で炬燵に入りながら眺め、冷たいビールを飲むのは最高だ。そろそろ、ストーブなどを購入しないと寒さ的に厳しくなってくるだろうか。

 

 あの神様にしては、安心設計で仕事するなと思っていると目の前にスマホが現れて、ブルブルと着信がきたことを知らせるように震える。出たくないなぁー、気がつくかないフリで押し通せないかな?

 震えるスマホを眺めていると、震えが止まったが切れた訳ではなく、勝手に応答しておりスピーカーモードになっていた。


「はよ出ろ!」

「出ようと思ってたんですけどね、寒くて手が伸びなくて」

「そうか、そんなに寒いなら年がら年中この森だけ真夏にしてやろうかのう?」

「勘弁してくださいよ。おひしぶりですね、今日はどうされたんですか?」

「うぬ! 新年あけましておめでとうと言いたいが、お前の国では新年には神に挨拶をするものであろう? なんでお供えとか挨拶とかないのだ!」


 だって神社とかないしな。それに新年って言ってももう半ばだぞ。


「申し訳ありません、神社とかもなかったし、忙しくて」

「そうか。1000万円で作成できるように手配しておこう!」


 1000万とか何を言い出しているんだろうか。作成費用まで俺に出させようとしているのか? そのうちの何パーセントがこの人の懐に入ることか。


「そうですか。ありがとうございます」

「うむうむ、来年の年末までには作るように!」

「ただ残念ですが、俺にはそこまで貯蓄も余裕もないんです。暫くは無理そうだなぁ、神様には恩義を感じているので立派な神社を建てたいのになぁー」

「ぬ? そうか、わかった! では100万ではどうだ!」


 一気に10分の1になった。それでも高いけど。


「聡明なサイゼ様であれば、下々の物からお金を取るとは思えないのですが、やはりそのくらいの費用はかかってしまうのでしょうか?」

「聡明。そう聡明な私のジョークである! お前が祈れるように妖精を雇う金までは私が負担してやろう! 木材だけ指定の本数を献上するように」


 チョロいぜ。それで木材は80! 多すぎ! ドナルドさんやソーズさんが木を多めに切ってくれたから余裕がないわけではないけど。簡単に建てるなんて言わなきゃよかったなぁ。でも神社とかの建造物嫌いではないし、なんか神域っぽくてこの庭の景観もいい感じなるかな。プラスに物事は考えておこう。


「わかりましたー。それではまた何かあれば連絡をくださいね」

「おい、何を勝手に話を終わらせようとしている! 本題はこれからだぞ!」


 面倒な話が終わったと思ったのに、更に面倒な話があるのか?


「どんな話ですか?」

「うぬ。天界にも四季はあってな、この世界と同じく冷える時期なのだ。我々、神であれば寒い、暑いなど気にする問題ではないのだが、四季に合わせたファッションも必要だと思うだろう? そうなれば献上するべき物があると思うのだが」


 買えないから献上しろってパターンか。これは牛の時と同じ臭いがする。


「ちょっと姉さんを呼んできてもいいですか?」

「今、お前のいる空間を隔離した」

「ちょっと! 姉さんと引き離すなんて、絶対にろくでもないことでしょ!」

「そ、そんなことないもん! お前にとっても有益な話だ。可愛い娘に質よい防寒着をプレゼントしたくないか? 私経由で買った服だと外にでる際に浮いてしまう可能性もあるし、一から作られた衣服は丈夫だぞー」

「少しくらいなら話を聞きましょう」

「ちょろいな」


 あんたにだけは言われたくねぇ!


「実はな、最近いい雰囲気の男子がいてな」


 まさかの恋バナかなにかか? 鶏といい盛りやがって、俺は嫁もいないというのに。


「いずれはビックになると、準備期間の男子でな。まだ付き合ったりとかの話にはなっていない者なのだが、カッコいい男子なのじゃ」

「そ、そうなんですね。その彼のことは家族に相談したり、紹介したりしてるんですか?」

「そな恥ずかしいのじゃ! まだ付き合ってもないのに、言えるはずがないであろう。その男子も恥ずかしいから、自分と会ってるのも秘密にしておいて欲しいって言っておるしな」


 確信犯ですよそれ!


「それなりの男子はそれなりの格好をする必要性があると私も思っておってな。その男子にプレゼントしたいのじゃ」


 うーん、言葉巧みに絶対誘導されたでしょ。


「そ、そうですか。具体的には俺に何をして欲しいのですか?」

「うぬ。羊の用意と飼育小屋の用意、加工所の用意も私の方で行って、尚且つ加工場の妖精の雇用費用も3ヶ月、私が負担するので、も¥建設するための木材の用意や羊の世話などを頼みたいのじゃ。できればこれまで解体した動物の達の皮も提供して最高の一品を作って欲しい!」


 あまりにも俺に対して悪い条件であれば断ろうと思ったが、めちゃくちゃいい条件だ。

 断る理由はないが、なんか俺まで騙してるみたいで嫌な気持ちになってしまう。


「そこまでの条件であれば俺としては構わないですけど、サイゼ様のお財布とか大丈夫なんですか?」

「問題ない! 悠のおかげで稼げているしな!」

「そうですか。その気を悪くしたら申し訳ないのですが、その男性はいい感じはしないのですけど。一度、リープさんか家族に相談してから決めた方が……」

「お前も心配性だな。リープには既に止められておるわ! でも私は彼を信じる!」


 リープさんも黙認しているのか? あの人の監視下にあるなら、いざとなれば止めてくれるか。


「わかりました。とりあえずは俺が出来ることをしましょう」

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