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家庭菜園物語  作者: コンビニ
51/180

50 クリスマス

「にゃーん」


 姉さんがご機嫌にクリスマスソングを歌っている。音程なんてあったものではないので、にゃーにゃーとしか聞こえないが可愛い。合いの手に大福がワフワフ言ってるのもこれまたいい、スマホとSNSがあればさぞバズることであろう。


 思ったよりも高くなかったので、1万円でクリスマスツリーも購入した。ソーズさんが、切り倒した木を装飾すればいいのでは? と無茶なことを言い始めたが、ビクドではこの森にあるような巨木を飾り付けするらしい。

 やっぱり異世界人の影響でクリスマスはあるんだね。


「杏姉様、これでどうでしょうか?」

「にゃーん」


 クリスマスツリーの飾り付け担当大臣はモモに一任されたので、晩ご飯の後に熱心に飾り付けをしている。

 

「モモ殿のセンスは素晴らしいですね。明日には妖精がツリーの下にプレゼントを持ってきてくれることでしょう」


 この世界でも妖精という設定らしい。モモもクリスマス自体は知ってはいたが、母親と一緒にいた時にうっすらと記憶があるくらいで初めてのことらしい。モモが生涯、忘れることのないクリスマスパーティにしてあげたい。

 

「クリスマスって、どんな行事として行われているんですか?」

「そうですね。家族で過ごす行事ですね。自分は孤児院の出身だったので、基本的にはそこに赴くことが多かったです。禁忌とされるのは恋人同士で過ごすことくらいです」


 この行事を取り入れた奴、絶対に非リア充だろう。気持ちは十分にわかる! 家族で過ごすのが一番だ!


「にゃーん」


 どのこの世界も妬み嫉みがって嫌になるねって、別に妬んでなんていないもん! まだ1年目だし恋人か嫁は見つけるもん! ふへへ、それにソーズさんが紹介してくれるって話もあるしね。焦らない、焦らない。

 モモが熱心にクリスマスツリーに祈りを捧げて、木に紙を吊るす。七夕が混じった行事になってるよなぁ。


「お父さん、そろそろ寝ようと思います」

「ああ、おやすみ」


 大福とモモが寝室へと行ったのを確認して、短冊を確認する。

 姉さんや大福の分はモモが代筆しているが、大福は肉、姉さんは新しいブラシ、モモはお父さんがずっと元気でいますようにと書かれていた。


「モモ、なんてええ子なんや」

「自分のもご確認ください!」


 見なくてもわかる。プロテインでしょ。

 それにしても、モモには何をあげたらいいだろうか、この短冊のシステム自体は子供の欲しい物がわかるし、悪くはないシステムだけど、こういうお願いだけではなんとしたら良いものか。


「にゃーん」


 モモだってそこまで子供じゃない、悠がプレゼントを用意することくらいわかっているだろうさと、姉さんが呆れ気味に教えてくれた。


「そうなんですかねー」


 前にいた村でそういうのを見てきたのかもしれない。または授業の中で習った可能性もあるか。

 初めてのクリスマスだし、形に残る物を上げたいなぁ。甘いものとかなら鉄板で喜ぶと思うけど、アクセサリーなんてどうだろうか? 最初こそ服なんて着れればいいみたいな態度だったけど、カイラちゃんと会ってからはオシャレの楽しさも覚えてくれたようでよかった。

 

「にゃーん」

「猫を象った髪飾りなんて、また大福がやきもち妬きますよ」

「プロテインなんてどうでしょうか!」


 ソーズさんの発言は聞き流すとしても、姉さんのアドバイスにある髪飾りなんてありだよな。モモの髪は長いし、オシャレとしても実用的な部分を考えても悪くない。

 お、桃の花の髪飾りか。いいなこれ。神様のオススメ品? なんか単価が10万とかおかしいんですけど。明らかに絞り取りにきていませんかい。買うけどもさ、だって絶対にモモに似合うし。悔しいけどわかっているチョイスだ。


「にゃーん」

「甘くて悪かったですね。でも一生ものって考えれば安くないですか?」

「にゃーん」


 同じ髪飾りを一生使ってる人も稀かもしれませんけども。神様のオススメ品ですし、きっと丈夫に決まってますよ! あんまり信用できない神ではあるけど。

 サービスでラッピングしてくれたらしく、大福用にすき焼き用の良いお肉に、姉さんのブラシをツリーの下に配置する。

 仕方ないのでソーズさん用のプロテインも置いておく。


「それじゃあ、俺達は寝ますね」

「はい、おやすみなさい」


 他の面々が帰ったことで、モモと一緒の寝室に戻ったが、以前のように俺にくっついて寝ることもなく、大福を抱き枕にして少し離れた布団で寝ている。これも親離れして、大人になっていると言うことなのかな。

 姉さんは気を遣ってか、今日は俺の腹の上で丸くなる。お腹周辺が暖かくて気持ちいい。

 沈んでいた気持ちもなんだか暖かくなってしまう、ありがとうございます姉さん。


★★★


「お父さん、朝です!」

「ん、おはようー」


 テンション高めのモモに起こされた。さてはプレゼントをもう見たな?

 喜んでくれてるなら何よりだ。

 モモに急かされてリビングに向かうと、ソーズさんがお茶を啜り、プレゼントはまだ開けられていない。

 あれ? なんだか1つ、筒状の物が増えてるぞ。


「お父さんへのクリスマス、プレゼントです!」

「モモが用意してくれたのかい?」

「皆さんにアドバイスをもらいました」


 全員の視線が生暖かい。なんだか気恥ずかしいなー。

 姉さんが器用に爪で開けてくれたが、中身は紙? のようで、広げてみてみるとそれぞれの特徴を捉えた人物が描かれている。姉さんに大福に俺とモモの4人だ。素敵な絵だ、とても素敵だ。


「お父さん? 泣いてる? えっと絵、ダメだったかな?」

「にゃーん」


 そうなんだよ。涙はね嬉しい時にも出るもんなんだよ。1番いい、額縁を買おう。

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