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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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49 プレゼント

 クルークさん曰く、言い出すタイミングなくて言えてませんでした。だってカイラ様は絶対暴れるもんといい大人が言い訳をしていた。

 思いの外、カイラちゃんはモモに慰められながら、泣きつつトンカツを8枚食べ、暴れることはなかった。

 泣きつかれたのか、お腹いっぱいになったのか、カイラちゃんは寝落ちしてしまったので、ドナルドさんに寝室に運んでもらった。


「カイラ殿はモモ殿と仲良くしていましたら、寂しいのでしょう。気持ちはわかります、自分もプロテインと別れると思うと涙が止まらなくなります」


 牛乳で割ったプロテインを片手に、ドヤ顔で話してはいるが、モモ達の友情をプロテインと比べてあげないで欲しい。


「モモ、カイラちゃんとは少しお別れになっちゃうし、お土産でも用意しようか」

「はい!」


 何がいいかな、これから寒くなるし、モモとお揃いで色違いか柄違いのマフラーとかどうだろうか。


「モモ、こんなマフラーなんてどうかな? 赤いマフラーで犬柄と猫柄があるからそれぞれにどうかな」

「いいんですか? 高くないですか?」


 子供にそんな心配をさせてしまうだなんて、普段から金がとか言ってるからだよ自分のバカ!

 確かに素材がいいのか1本1万とそこそこの値段ではあるけども。


「このくらいなら値段なんて心配しなくてもいいんだよ。ん? 姉さんどうしました?」

「にゃーん」


 モモは当然猫柄だろと姉さんが割って入ってくる。が勿論、大福もモモの太ももに顔を乗せてワフワフと甘えて始める。

 これは俺のチョイスのせいで戦争が起こりかねないぞ。


「モモやっぱり、こっちの柄物じゃないマフラーに変更−−」

「−−にゃーん」

「−−わん!」


 ど、どうやら引き下がれないとこまで、きてしまったらしい。ドナルドさんもソーズさん、クルークさんものんびりトンカツ食ってないで助けてくださいよ!


「いやはや、家族間の問題ですからね」

「兄貴」

「ハハッ!」


 いざという時にこの人らは……。


「私は猫さん柄がいいです!」

「わん」


 姉さんが勝ち誇ったように、モモの肩の上に乗って大福を見下ろす。姉さん、意地悪がやめてくださいね。

 

「お父さん、我が儘を言ってもよいでしょうか?」

「なんだい、モモ?」


 モモが指差したのは画面上に写る同じシリーズの手袋である。お値段が5000円とこちらもなかなか。

 

「こっちの犬さんの柄の手袋も欲しいです」


 モモは優しい子だね。


「わん!」

「じゃあ、手袋は犬さんの柄にして、カイラちゃんには猫さんの手袋に犬さんのマフラーにしようか」

「にゃーん」


 姉さん、この辺で妥協してやるかじゃないんですよ。モモと俺の財布を困らせないでください。

 手袋とマフラーを購入して、ラッピングを簡単に行い、モモに手渡すと、ギュッと袋を抱きしめてお礼を言うと戸棚に隠して、おやすみなさいと大福と姉さんを連れて寝室に行ってしまうった。


「モモ殿は優しい子ですな」


 ソーズさんの言葉にクルークさんとドナルドさんが頷いていい感じにまとめようとしているが、今日の裏切りを忘れることはないだろう。許すまじ。

 皆んなとは明日でお別れだというのにビールを飲めないのは残念だな。


 ★★★


 

 朝を迎えて皆んなで、焼きたてのパンと目玉焼き、燻製肉とサラダとスタンダードな朝食を食べる。

 カイラちゃんの目は少し赤かったけど、モモと楽しそうにパンを頬張っていた。きっとあの後、寝室で女子トークがあったのだろう。

 少し意外だったのが、ソーズさんが泣き喚きもしないことだ。大好きなプロテインと暫くの別れになるというのに潔い、威風堂々な態度である。

 帰りは大福との約束で森を抜けるまで歩いていくとのことだ。戦力的には心配なメンバーとのことで、今回も大福が護衛につくことになった。

 玄関前で皆んなを見送るため、家族全員で外に出る。モモは既に昨日購入したマフラーと手袋を着ており、カイラちゃんが可愛いと羨ましそうにしている。これならきっと喜んでくれるだろう。


「カイラちゃん、元気でね」

「うぬ! 暫くはさくら様のところで手伝いと勉強だし会えるのは、モモが学校にくる頃かな」

「私も、勉強や特訓、料理とかお世話とか感張るから」

「あたしだって負けない」


 お互いに両手で握手をして、あれこれと話している。離れ難いんだろうな。


「モモ、そろそろお別れをしようか」


 ずっと手を離しそうにないので、モモへ用意していたプレゼントを手渡す。 

 

「はい……カイラちゃん、これ仲良くしてくれたお礼です」

「ありがとう。開けてもいいのか?」


 出てきたマフラーと手袋を見て、モモが着ている物と交互に見比べる。


「柄違いのお揃いです」

「綺麗な絵柄だ。杏様と大福様だ」


 モモがマフラーを手に取って、カイラちゃんに巻き方を教えながら、首に巻いてあげるとギュッとハグをして、元気でねと話を続ける。

 2人の別れが完了したのを見計らってかドナルドさんとクルークさんが手を差し出すので、握手で答える。


「兄貴」

「ハハッ、また来ます」

「他の種が上手く育つように願っています。ガンジュさんにもよろしくお伝えください」


 3人と大福が森に消えていくのを眺める。3人? なんでこの筋肉はまだ残っているのだろうか?


「ソーズさんは帰らないんですか?」

「総選挙は春ですから。それにモモ殿にはまだ体術など教えてる途中ですし、投げ出す訳にいきません!」


 総選挙のために余裕を持って帰らなくてもいいんだろうか。本音は少しでもプロテインを飲みたいのだろう。

 クルークさん達が何も言わなかったのだし心配ないのだろうか。このほぼ筋肉のことしか考えていない男と運命共同体みたい状態で問題はないのだろうか。俺的には不安しか覚えないんだけど。


 



 


 


 

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