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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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47 プロテイン

 大人と違って子供は仲良くなるのが早い。それに比べて大人達は直ぐに仲良くなりましょう! とは話が進んでいない、結局のところソーズさんが直ぐに回答を出すことができずに家に滞在をまだしている。

 クルークさんには大豆の活用方法などを提案しながら、料理の勉強をしたりしている。王坂の台所を任せているらしく、慣れてしまえば俺なんかよりずっと料理が上手ではある。

 

 そんな答えが出ないまま4日目に突入している。最近ではカイラちゃんとモモが一緒に勉強したり、トレーニングをしながらソーズさんに武術も教わっているようだ。


「自分は気がついたら身についていましたね。最初は筋肉を傷つけられるのが嫌で、回避するために効率的な筋肉を、次に傷がつかないより硬い筋肉を、攻撃される前に倒せばいいと破壊力のある筋肉を、簡単に言ってしまえば筋肉なんですよね」


 筋肉なんですよね。と言われても全く理解はできないが、女子2名をムキムキにしようとしていないかたまに監視をしていたが、訓練してる風景は至って普通? 組手とかいう殴り合いを見てると非常にハラハラしてしまうが、この世界の基準で言ってしまえばあれが標準らしい。


「ハハッ! あれが標準の組手なら、この世界は魑魅魍魎だらけですよ」


 うちの娘はいつも間にか結構強くなっているようだ。なんか魔力のコントロールが上手いらしく、カイラちゃんという種族特性として肉体が常識はずれの子とも殴り合いができているらしいとは、クルークさん談だ。


「にゃーん」

「姉さん、狭いって言っても仕方ないじゃないですか」


 1LDKの我が家に大人の男が4人に子供2人、大型犬と姉さんでぎゅうぎゅうの状態である。

 流石に今の気温でドナルドさんを外に置いておくわけにいかないので、今回は中で過ごしてもらっているが、寝室は女の子と姉さん、大福が使用して、大人4人は居間でぎゅうぎゅうになって寝ている。


「そもそも、寝るときは俺の方が狭いですよ。姉さんはまだいいじゃないですか」

「にゃーん」


 人が多過ぎて落ち着かないのは分かりますけど、そんなに態度も壁もカリカリしないでください。

 

「にゃーん」

「おやすみなさい」


 姉さんはプリプリしながらもう寝ると寝室に行ってしまった。

 入れ違いでモモとカイラちゃんがお風呂から上がって、牛乳を飲みにやってきた。寝る場所も違うことに加えてカイラちゃんが現れたことで一緒に過ごせる時間が減って、モモ成分が明らかに不足している。

 あとはカイラちゃんの、この年になってパパとお風呂入ってるとかマジ? という話になってこれからは1人で入ると言い始めたのもショックな出来事であったけど、素直にモモの成長を喜びたいと思う。


「お父さん、おやすみなさい」

「おやすみ、モモ」


 大人達で子供が寝室に行ったことを見計らって、今日は時間がまだ早いので特別な物を引っ張り出してくる。

 ポテサラに燻製肉、それにビールだ。


「ハハッ! これが悠殿が作られたビールですか! 美味いぃー!」

「兄貴!」


 獣人コンビのテンションは高いが、ソーズさんは正常運転だ。


「ソーズさんはお酒飲まないんですか? 宗教的な問題ですか? 確か、経典にもお酒とか禁止って話なかったですよね」

「禁酒などのルールはありませんが、筋肉に良くないですからね」


 流石は筋肉ファーストな男だ。


「それにしても女の子は大人になるの早いですよね。昨日の今日でパパとはもうお風呂に入らないって言うんですから」

「ハハッ、うちの子も似たようなもんですよ」

「クルークさんとこは何人いるんですか?」


 カビバラが持つ4本の指全てを広げられた。子供が4人もいるのか、色々大変そうだけどいいなー。


「モモにも兄弟を作ってあげたいけど、まずは嫁が先かなー。ソーズさん、誰かいい人いないですか? できれば巨乳で!」

「ふむ。いないこともないです。巨乳教に崇められてる者がいますね、本人は心底嫌そうにしてますが」

「マジっすか! お友達なんですか?」

「幼馴染と言えばいいでしょうか。もう1人、ショタ教に崇められてる者がいますね」


 俺が言えたことではないが、本能に忠実というかなんというか、恐ろしい国家だ。


「3人でこの国をより良くしようと話をしたものですが、自分はやはり向いてないと思っておりまして」


 珍しくソーズさんが弱音を吐いている。


「総選挙出るの迷ってるんですか?」

「自分は人を導くよりも、自己研鑽に励んで、筋肉を鍛える方が向いていると思っています」

「ハハッ、我々もそろそろ国に帰ろうと思っているのですが、お考えは変わらないですか?」

「自分には荷が重いと考えています。先ほど話題に出た、友人を紹介するのはいかがでしょうか?」


 クルークさんも多少難色を示している。ソーズさんは武神とまで今われる戦う力と他国にまで伝わるその人柄から信用ができる部分も大きいとのことだ。

 俺としてもモモがいずれ外に出るのであれば、その環境を少しでも良くしてあげたいけど、食料の問題は実にナイーブな話ではある。

 下手な人に種を渡して成功してしまえば問題が起きてしまうということが理解できたので尚更だ。最初に渡したのがガンジュさんでよかった。

 ソーズさんが自信、もしくはやる気を出してくれるような方法はないだろうか。アレなんてどうだろうか。


「じゃじゃーん! プロテインー!」


 プロテインの袋を開けると、ソーズさんがバタバタと動き出して立ち上がる。


「はっ! き、筋肉が! ヘラとクレスが反応している! ななな、なんですかそれは」

「筋肉に良いサプリメントみたいなもんですかね」


 血走った目でプロテインを除き込んでくるので、プロテインを適量、シェーカーに入れて飲みやすいように牛乳で割り、ソーズさんに手渡す。

 匂いを嗅いで、震えた手で一気にプロテインを飲み干す。口の周りには白い髭ができ、固まって動かなくなってしまった。


「ソーズさん?」

「は、は、はっ! 神はここにいた!」


 何を言ってるんだこの人は。


「もっと、もっとください!」

「ダメですよ、これは飲み過ぎも良くないんですから。それにそこそこ値段もするしホイホイ出せませんよ」

「そんな……自分はどうすればいいんですか!」


 知らんがな!


「ハハッ! サプリメントですか、文献でも見たことがあります。現物があり、解析さえできれば作れるかもしれないですね。今回の計画には解析の勇者殿も参加予定ではありますので可能性はありますね」


 ニヤリとクルークさんが笑っている。そんなまさか、こんな単純な方法でやる気になるはずないじゃないですか。


「ソーズさん、計画に協力してくれるなら。この1袋だけですが差し上げますよ」

「やります! 自分、総選挙で必ずやトップに立って見せます!」


 クルークさんも喜んでるけど、本当にこれでいいの? 大丈夫なのこの人?


「兄貴」


 ビールが美味いですかよかったですね。


 

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