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家庭菜園物語  作者: コンビニ
47/180

46 竜

「ど、ドラゴンだああああ! なんで、ここって結界あるんじゃないの? 大福様! 助けて!」

「わん」

「にゃーん」

「え、問題ない? 俺の知ってる人? ドラゴンの知り合いなんていないんでけど」


 遠くに見えていたドラゴンがぐんぐん近寄ってきて目の前に降り立つ。2階建ての一軒家くらいの大きさはあり、凄い迫力だ、近くで見ると怖い顔はしているけど鱗が日に反射して綺麗だなぁ。

 大福の後ろに隠れていると、ドラゴンから2人、人? が降りてくる。1人は俺がよく知っている人だ。


「ドナルドさん!」

「兄貴」


 相変わらず口数の少ない彼とハグをして握手をする。元気そうでよかった。

 モモもペコリと頭を下げると、ドナルドさんが元気そうでよかったと頭を撫でてくれる。あとはこのドラゴンとカピバラはドナルドさんの知り合いってことだよな。


「ドナルドさん、こちらの方々は?」

「ハハッ! 彼は少々口下手ですから、自分で挨拶をさせていただいてもよいですかね」


 なんだ、ネズミでその笑い方って、この世界から消されたりされませんか? まぁ異世界ですからね。


「僕はクルークよろしくね」

「えっと、悠です。それと娘のモモに姉さんの杏と犬の大福です」


 カピバラが1人1人と握手していく。普通に黙ってる分には可愛いけど、この世界にカピバラ種がいるのは驚きなんだけど。


「あたしも挨拶していい?」

「ど、ドラゴンが喋った!」

「ハハッ! 驚かせてすいません、この方は王坂国の竜王様の妹君でして」


 ドラゴンが光ったと思えば、あっという間に尻尾が生えた、赤いショートカットの可愛らしい少女が現れた。


「あたしはヒガシ カイラだ!」


 王様の妹って偉い立場の子なんだよね? 跪いた方が良かったりする。


「わん」

「聖獣様、お邪魔します」

 

 妹さん含めて全員が大福の前に正座して、頭を垂れている。やっぱり大福って王様以上に偉かったりするのか?


「にゃーん」


 この地の主なら堂々としてろって、俺は管理人みたいなもんですけど。

 

「わん!」

「えっと……ごめんなさい」


 妹ちゃんは何を怒られているんだろうか。


「にゃーん」


 空から来るのは今回限りで、ちゃんと歩いてきなさいとね。ここにはここの大福のルールがあるのかな。

 それにしても、なんでまた王様の妹とか偉そうな人がこんなとこに来たんだろうか?

 大福と話が終わったカイラちゃんがてけてけとこっちに近寄ってくる、お目当は俺ではなく後ろに隠れているモモのようだ。俺を挟んで、カイラちゃんが覗き込めば、その逆にモモが隠れてしまう。


「モモ、カイラちゃんは挨拶したんだから、モモも挨拶しなさい」

「えっと、モモです」

「お前がモモか! さくら様に聞いたぞ!」


 さくらさんは王坂に寄って行ったのか。


「モモ、カイラちゃんを案内してあげたらどうだ?」

「はい……」


 少し緊張しているのかな。同年代の子っぽいし、いいお友達になってくれるかもしれない。

 モモは渋々といった様子で、カイラちゃんを連れて牛小屋の方へ向かっていく。


「ハハッ! 子供は無邪気でいいですねー。挨拶が遅れました『武神』殿」

「そんな大仰な存在ではありませんよ。自分は一介の坊主に過ぎません。王坂の四天王と言われるヒラカタ殿に会えるとは感激です」


 和やかそうに握手してるけど、なんか意味深な雰囲気。武神とか四天王とかなんなの? ねぇドナルドさん教えてよ。


「兄貴」


 いや、頷かれた後に兄貴の一言で理解なんてできないですけど!

 

「立ち話もなんですから、お茶出しますよ」


 縁側に並ぶ、ソーズさんとクルークさんに麦茶を出しながら、俺と姉さん、大福は居間から話を聞くことになる。

 今回は色々な人が集まったもんだ。


「それでクルークさんはどんな話をしにここまで来られたんですか?」

「ハハッ! 悠殿から、ガンジュがお預かりした大豆の種ですが無事豊作となりましたので、お礼などをのべるべく僕が来た次第です」

「そうなんですか! よかったー、心配してたんですよ」

「クルーク殿、豊作とはどういうことですか?」


 ソーズさんがとても驚いている。他の地域や国では作物とか大変なんだもんな。


「ハハッ、落ち着いてください。我々は悠殿から託された作物の種を育ていたんですが、栽培に成功しております。ソーズ殿にその気があるのであれば栽培を含めて国として連携して協力してほしいとは考えています」

「……総選挙ですか。少し考えてもよいでしょうか」


 ソーズさんは立ち上がって、腕を組んだままトコトコと歩いて行ってしまった。


「ふふっ、やはり話が早い。武勇だけの方ではないですね」


あれ? 必ずハハッっていう訳ではないのね。


「総選挙ってなんなんですか?」


 クルークさんが概要を話してくれたが、なんでも3年に1回、ビクドのトップ5を決める神5とかいう行事があるらしく、ソーズさんにはその資格があるらしい。神5ってどっかで聞いたことあるな、神7的なイベントごとなんだろうか。

 ガンジュさんの提案で作物については栽培方法など含めて横展開をする予定ではあるが、下手に教えてしまえば作物目当てで戦争になりかねないので、俺達に迷惑がかからないようにということを含めて、慎重に動いているということらしい。


「なんかかえって迷惑かけちゃいましたかね?」

「とんでもないですよ! 悠殿のおかげで光が見えてきましたので、僕もやりがいがありますよ」

「それはよかったです。でもソーズさんはなんであんなに迷ってるんですかね」

「目立つのがそこまで好きな方ではないらしいですから。ビクドと言えば汚い権力争いが多い国ですから嫌気が指してるのもあるでしょうし、あとは自己研鑽に励むのが好きなのではないでしょうか」


 ソーズさんから聞く限りでは楽しそうな国だったけど、やっぱり裏の部分でもないけど色々あるんだな。

 でもあの人が嘘を言っていたとも思えないし、ソーズさんの見え方としたらいい国なんだろうな。


「ソーズさん以外に話を持っていくのは無しなんですかね?」

「難しいとは思います。我々がパイプを持っていないのもありますが、あそこまで誠実で位の高い僧侶は彼以外にはおりません。総選挙に出ることさえしてくれれば神5には間違いなく入れるでしょうし、彼について来る僧侶も多いでしょう。ソーズ殿が話に乗ってくれないのであれば、竜王様に話を持ち帰って考え直す必要があるかもですね」


 なんか政治的なことって大変なんだな。俺が渡した種がきっかけとなると慎重に扱わないといけないかな。

 


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