２９ 相談
さくらさんにはモモの種族が神の影響で変わったことや、ガンジュさんの名前は出さなかったが来客があったこと、少し外の世界を知れたこと、勿体ぶりすぎな知識について少し文句を言った。
「せっかくの飯の種を……今後１０年はこれで絞ろうと思っていたのに」
「どんだけ小出しにするつもりだったんですか……」
「神とか、スケールがでかい話をしてくれるな。それにお前がまさかの人の親か。前進したものだなー、でも娘ではなく嫁に迎える可能性が高いと思ったが意外だったよ」
「あんな幼い子に手を出したりしませんよ」
「そうか、私の時は同じくらいの時に婚約したもだがな。歳の差は確かに７歳だったからシチュエーションは違うがな。もちろん私が成人するまで夫が手を出してくることもなくて、初夜はそう暑い−−」
「−−いや、旦那さんの話はいいので少し相談に乗っていただけますか？」
チート厨二病さんはロ、いや年下好きだったのかな？
「自分から話を切っておいて聞くのもなんなんですが、旦那さんって基本的には成人前の子と婚約することが多かったんですか？」
「そうだな。うちの夫は年下好きだったしな」
さいですか、まぁ趣味趣向は人それぞれだよね。当人達が幸せてこの世界の法に触れてないなら問題なしだよね。
「へぇー、なんかすんませんでした。それでモモについて相談をしたかったんですが」
「聞こうじゃないか」
「モモの家庭教師、先生をお願いできないでしょうか」
「ふむ。他では食えない美味い飯も食えることだし、多少の力を貸すのはやぶさかではないが、それは本人が望んだことなのかな？」
「いえ、俺が考えたことです。モモの可能性を広げてあげることは親である俺が考えるべきことなのかなって思っていますので、さくらさんが受けてくれるなら俺が説得します」
「モモのことだ、悠が、父親が勧めてくることであれば二つ返事だろうさ。悠の考えが間違ってるとは言わないよ、可能性を広げるために環境を整えたりは親がすることではある。だけどその子の意思で学ばないと伸びるものも伸びないよ」
「にゃーん」
姉さんの言うとおり、親になることとは日々勉強であると、最近ではモモとのコミニュケーションはしっかりと取れているつもりではあるし、さくらさんに承諾を得られたら話すつもりではあったんだけど。あの子は俺よりも寿命が長いし、これから先どうなるかわからない、知識とは武器になるからあの子が困らないようにしてあげたい。
「あとはこの世界の話を聞き齧ったのにも関わらず、悠は自分の世界の基準で私に家庭教師、勉強を教えてほしいと言ってきてるだろ」
「そうですけど？ 知識なんてあって無駄にはならないでしょ？」
「知識は大事だ。でもそれと同じくらい大事なものがあるがわかるか？」
「お金ですか？」
「間違ってはいないが、知識があれば金はイコールで湧いてくるよ。それと同じくらい大事なものがある。悠もわかっているんだろう？」
でもモモには危ないことはしてほしくない。幸せに暮らしてほしい。
「にゃーん」
「そう力だね。この世界は知識よりも力を重視される。野蛮な世界なんだよ？ 私であればそれを含めて教えることができる。逆に知識だけを教えろという話には乗れないね」
「わかってるつもりです。でも知識をつけてもっと成長してから、自分で考えて必要に応じてではダメなんですか？」
「にゃーん」
甘い、甘すぎる。先ほどの可能性を広げるという話があったがそれこそ、お前が暴力に忌避感を感じるという理由だけでモモの可能性を潰していることになるんだぞ。と姉さんに言われてしまう。
「まぁまぁ、杏殿。そこが悠の良いところでもある。あの子は少し特殊だと言うのもあるが、君や大福の関係者であること、ハイエルフでしかも白髪であること、否が応でも存在が知れれば巻き込まれる。私はモモには知識よりもまずは力だと思っているよ」
大福は神獣としても俺の関係者だからって何かに巻き込まれる危険性が生まれるのか？ でも白い髪ってよくわからないけど珍しい存在ってのは聞いているし、これから外に出ることがあれば、さくらさん言うような危険もあるのかも知れない。
あとはハイエルフって単語、モモってハイエルフなのか？
「申し訳ありません、２つ質問してもいいですか？ モモがハイエルフってどういうことなんでしょうか？ エルフとは別なんですか？」
「ん？ 神から説明があったのではないのか？」
あのファミレス神がそんな細かいことまで解説してくれるはずがない。こんなことなら大福にステータスを見てもらえばよかった。
「ハーフエルフなら人の１.５倍、エルフなら２倍、ハイエルフなら魔力が尽きない限りは生きるよ。私がそうだ」
さくらさんがハイエルフ、違う存在と言われてもなんとなく納得できるが、モモもまた同じような存在になっていとは。
将来、さくらさんのようにならないように、しっかりと料理とか教えておこう。
「俺にはそんな長い間生きるなんて考えられないです。神様に騙されたわけではないのかも知れないけど、モモは大丈夫でしょうか」
「知らん。私だって望んでハイエルフとして生まれてきたわけではないし、夫や子供が先に死んだ時には後悔も死のうとも考えたが、長く生きていれば悲しみ以上に楽しいこともある。最終的には本人が割り切るしかない」
「にゃーん」
この２人が言うと重みが違うな。
「にゃーん」
いずれ来る終わりまで今を楽しむだけですか。
「ずっと先のことよりも、今は見える範囲の事を考えないといかんだろうな。今回の件は悠には少し荷が重い。私に任せてはみないか？」
