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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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26 交信

 風呂上がりに、水でも飲むかと居間に行くとちゃぶ台の上にスマホが置かれていた。なんでこんなとこにスマホがあるんだと、拾い上げると手の中でブルブルと震え、画面には【可愛い神様】と表示されている。

 いまいち、誰だが思い当たらないがとりあえず電話に出てみる。


「どちら様ですか?」

「わ・た・し」


 イラッとしたので、電話を切ると、再度着信がある。


「なんですかサイゼ様」

「なんだとはこっちのセリフじゃ、どうして電話切った?」

「ウツクシイオコエに驚いて切ってしまいました」

「なんと! それならば仕方のないことじゃな、ガハハハ」


 今日も神様はちょろい。


「それでどうされたんですか?」

「暇だったもんでな」


 こっちはもう寝る前なんですけど。明日も作業があるし、あんたほど暇じゃないんだよ。あ、心の中見えちゃうんだっけ?


「そうなんですねー、ところで今も俺が思ったり考えたことはわかっちゃったりします?」

「今は見れんわけではないが、距離があると疲れる」


 よかったー。暇でんはうざいが、丁度いいしモモのことも聞いてみるか。


「何かやましいことでも考えたのか?」

「いやー、美しい女神様と話すとなればやましいこの1つや2つはご勘弁ください」

「なぬ! そうじゃろう、そうじゃろう! だが私は寛大だからなあぁ! 許すぞ!」


 残念系でよかった。


「サイゼ様、モモの、娘のことで聞きたかったのですが、夢に出てこれられたのはサイゼ様ですか?」

「そうじゃ。お前の娘となるならこの森の管理者ていんじゃないかと思い、声をかけたのじゃ」

「そうだったんですか。その不利になるような契約組み込まれてないですよね?」

「不利どころかメリットしかない話じゃ、賢い子を娘としたな」

「具体的にはどんなメリットがあるんですか?」

「この森を利用する権限と、種族的な進化じゃな」


 それでハーフエルフではなくなったってことか。あとは森の利用権限ってことはモモもクラフトなどの機能を使用できるってことか?


「それよりも聞いてくれ!」

「もう少し、モモの話を聞きたかったのですが」

「なんじゃ! 私が電話したのだから聞いてほしい話があるから電話してきたに決まっておるじゃろ! それを自分の話ばかりを押し通そうとは、女心がわかってないのー。これだから彼女がいない暦と年齢が一致してしまうんじゃよ」

「余計なお世話です。わかりました、それで話とはなんですか?」

 

 女心って難しい。


「お前が献上してくれてる、ニンニク料理あれは最高じゃなぁ!」

「買取価格が下がらないので、気に入ってはくれてると思ってました」

「パパ上にも好評でな。でもリープやママ上には臭いと不評だ」

「まぁ臭いはきついですからね、俺も常時、ニンニク臭がしてたらちょっと辛いです」

「常時ってダメなのか?」

「一般論ですけど。まさか毎日食ってるんですか?」

「でも歯磨きとかはちゃんとしてるぞ!」

「ニンニクって体の中に吸収されるので、吐く息自体に匂いが移るんですよ」

 

 電話の向こう側で、だから彼は最近、目を合わせてくれないのか。などブツブツと声が聞こえる。


「でもパパ上は美少女から多少ニンニクの匂いがしてもセーフとも言っていた!」

「うーん、どうなんでしょうね。いくら見た目が好みでも匂いって重要ですからね、毎日ニンニクの匂いがしているのはちょっととは思うかもしれません」


 パパ上はあれか、男を寄り付かせないためにニンニクを勧めているのだろうか、こんなことが分かれば娘に嫌われるだけだろうに−−なんだろう。本当のことを言ってはいけないと俺のシックスセンスが反応している。


「ニンニクって健康にいいですからねー。きっとパパ上もそれで勧めていたんじゃないですかね」

「なるほど。そうか、健康にも良い上にあんなに美味いく芳しい香りをしているが、少数派に匂いで嫌厭されるとはなんと可哀想な食べ物なのじゃ」


 ニンニクの匂いが嫌がるのは多数派であるとは思うが突っ込まないでおこう。


「ニンニク料理は食べて美味く、天界でも人気で転売でも稼げるから引き続き納めるように! それと匂い対策に何か案がないか? 対策があればもっと売り上げも伸びるかもしれん。イコールで買取価格も安定するぞ」

「うーん、詳しくないですけど、一説には牛乳がいいって言われますね」

「それなら、それも合わせて納品してくれ」

「自分で買えばいいじゃないですか」

「天界でのルールとしては納められた物以外、口にはできん」

「それなら俺がネットショッピングで牛乳納めるのはありですか?」


 抜け穴的手法、これまでも料理には大なり、小なりネットショッピングで購入したものを使ってるし問題ないのではないのだろうか。


「多少料理に使う分には問題ないが、露骨にやるとパパ上に怒られるだけでは済まん。だから乳牛を育てるのじゃ!」

「勘弁してください。まだ農作業諸々で忙しいので、酪農関連は冬、もしくは来年って考えていたので」

「礼はいらんぞ!」

「なんのお礼ですか?」


 ついに会話が噛み合わなくなってきた。マイペース過ぎてたまに怖いよ。


「神様、切実な願いがあるので相談してもいいでしょうか?」

「今は機嫌が良いので聞いてしんぜよう」

「嫁が欲しいです」

「出会いなそうだものな。どれ、お前の運命力を見てやろう」


 神様はそんな物まで見えるのか。出会いをくれるわけではなく、元々の力を見てくれるだけかよ。まぁちょっと気になるけど。


「女性運は軒並み普通じゃな。まぁその内に機会も巡ってこよう」

「サイゼ様、その普通をなんとかできませんか! できればおっぱいが素晴らしい人を!」

「なんじゃ、お前はそっちなのか。多様性の時代だしのう、私もそういうのは嫌いではないし、少し見てやろう」


 ん? そっちでどっちだ?


「ふむふむ。そっちであればそこそこに良い、運命力があるな。星の巡り合わせ的には冬じゃな、運命力がより強くなるはずじゃ」

「ありがとうございます! 冬ですね! 大福にお願いして巡回してもらいます!」

「ぬはは! それでは牛乳も頼んだぞ!」


 手元からスマホが消えてなくなってしまった。牛乳もできるだけ早く取れるように頑張ろう。


「モー」

「うん?」

「モー」


 縁側から立派な牛がこちらをジッと見ている。

 あのクソ女神、勝手に送りつけてきやがった! 

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