24 釣り
2日続いた雨だったが体もゆっくり休めることができ、モモも大きい体に慣れてきたということで、今日は午前中に畑関連を片付けて、釣りに行くことになっている。
西瓜も丸々と大きくなってきており、明日には収穫ができるだろう。本来であれば藁を敷いたり、育てるのに手間がかかる野菜だが、この庭ならお手軽に育てることができる。本来の農家さんはもっと大変なんだよとモモには農業が難しい物だと言い聞かせていたが、困り顔ではいとだけ答えていた。
後々姉さんに言われたのは、その村で畑などの手伝いはしたことがあるだろうに、ここが異常だというのは言われんでも理解してるだろうが、アホがと怒られた。
「とうもろこし、立派です」
「そうだな。鶏も喜ぶだろう」
早く帰って来んかな。返事が気になる。
俺自信はとうもろこしの甘さってどうも苦手なので、これは鶏とモモが好きかどうかお試しって感じだ。でもコーンスープは好きなんだよなー。インスタントしか作ったことないけど、試しに今夜はスープとして作ってみるか。
畑の手入れをした後に、クラフトしておいた原始的な木の釣竿と弁当を持って小さな滝がある川へと移動する。
ちなみに釣り糸、釣り針は購入品だ。釣竿セットなんかもあったけど、雰囲気的にはクラフトした竿を使った方が田舎の釣りっぽくて良きだったのでこちらにした。
小さな滝から少し離れた、穏やかな流れの所まで移動して、森よりの木陰にゴザを敷いて荷物を置く。
モモには麦わら帽子と、日焼け止めを塗り込み、首に少し湿らせたタオルを巻く。
「なんだかいい匂いです」
「日焼け止めだよ、なんか女の子用でいい匂いするらしいな」
美味しそうと舐めようとするモモを止めつつ、準備は完了する。
川の近くで竿と餌を広げる。これもショッピングサイトで購入した、虫? みたいな餌だ。虫は若干キモいけど、動物の解体とかしていたらある程度慣れてしまったのでそこまで抵抗感はない。
「これを垂らすんですか?」
「そうだよ、釣りはねじっくりと待つんだ。それでもって食いついた瞬間にこうやって竿を上げて合わせるんだよ」
「はい!」
ジリジリと焼けるような日差しではあるが、川の近くということもありそこまで暑くはない。ただなかなか魚がヒットはしない。モモとじっと竿の先を見ているがピクリとも反応しなく、ちょっと気まずい。
「モモ、釣りは忍耐、我慢だよ」
「はい」
「モモ、楽しいかい?」
「お父さんと一緒なので楽しいです!」
なんていい子なんだろうか。モモが裏を考えているとは考えずらいが、裏を返せば釣りはつまらんということだろうか。
確かに釣れないとつまんないんだけどさ。
「わん!」
「大福様、これは釣りと言ってお魚を捕まえるための遊びなんです」
「わん」
「お父さん、お魚を捕まえるだけなら直接狩ったらいいんではないかと大福様が」
この有能なワンコロなら、川にじゃぼんして速攻で魚を捕まえてくるんだろう。だがそうではないのだ、釣りはこの釣れない時間も楽しむものなのだ。
「大福、最終的に釣れなければ頼む」
かと言って釣れなければ悲しいので、釣れない時は大福様にお願いすることにした。
「にゃーん」
「え? さっきから引いてるってですか?」
竿を上げてみると、確かに餌だけ持っていかれている。反応なかった気がしたんだけど。
「にゃーん」
「竿がよくないですか。やっぱり原始的すぎてしなりが足りないんですかね」
改めて餌をつけて投げ入れる。今度こそ、手に全神経を集中させる。
「にゃーん」
「え? また取られたですか?」
本当だ、餌がない。
「にゃーん」
「はい! −−釣れました!」
「おお! 見事だなぁモモ!」
俺も負けてられないぞー!
と意気込んでいたのも束の間、モモは20匹の魚を釣り上げているのに対して俺はボウズだ。
いいんだ、モモが楽しそうならさ。ゴザに座りなが水を啜る。
「若さってのは恐ろしいな」
「にゃーん」
へーんだ、俺はどうせセンスないですよ。
「わん」
「あん? いいぞ、もう乱獲してこい!」
「わん!」
大福がジャバジャバと川に突っ込んでいくと、次々と魚を陸に投げてくる。そんなに簡単に捕まえられるのか?
モモも大福に習って楽しそうと川の中に入って魚を掴み取りしている。ちょっと俺もやってみるか。
川の中に入ると遠目から見ているよりも魚がよく見える。これなら俺にだって捕まえられ−−ません。大福はともかくモモもどうして捕まえられるんだ? これも若さなのか?
「わん!」
大福が投げ飛ばした魚が岩に当たって気絶してしまったようで、ピクピクと川に浮かんでいたのをもったいないなぁと拾い上げると、アンロックされた通知が流れる。
確認してみると【魚のカゴ罠】、【囲炉裏】、【小川】がアンロックされたと出ていた。




