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家庭菜園物語  作者: コンビニ
24/180

23 王坂国

■ガンジュ視点


 領地に戻ったあと、避難したジャスティスにいた住人や、避難誘導に参加したメンバーの無事を確認し、慌ただしく王坂国の首都へと移動することになる。

 道中で確認した限り、戦争をしたがっていたジャスティスのシールド伯爵家をソード辺境伯が抑えたという話が上がってきた。あの国の中ではまともな家ではあるが、なんの見返りもなくこちらを手助けしてくれたというのか?


 首都に到着すると、迎えに来ていた馬車に乗りまっすぐに城へと向かうことになる。

 王坂城、初代竜王に愛された異世界人の女性が築城した、この世界で最も美しいと言われる建造物。何度見ても圧倒される。

 城に到着すれば最上階へと真っ直ぐに誘導され、土産の荷物持ちとして連れてきたドナルドと扉の前で待機する。


「トヨナカ様、竜王様がお会いなるそうです」


 無言で頷き、正面の扉が開くのを待つ。

 数分で扉が開かれる、広い広間の上座には横になりながら、こちらを見据える少女のように見えるが、その中身は俺よりも遥かに年上であり、強者、この国の頂点に君臨する王が薄く笑いながらこちらを見据えている。そして側には宰相を務める熊の獣人が控える。


 ゆっくりと歩を進めると、3歩ほど後ろからドナルドもついてくる。

 竜王様の15メートル程前で改めて膝をつく。


「トヨナカの、何年ぶりだったかのう」

「竜王様、お久しぶりです。3年ぶりでございます」

「そんなもんか。それにしても妾に迷惑をかけるとはお前も偉くなったな。相変わらず人を切り捨てられず善人面をした結果だな。馬鹿のガンジュよ」

「言い訳の次第もございません」

「言い訳しないの? なら首切っちゃおうかなー」

「竜王様、この国の半分が敵に回りますよ」


 竜王様の横に無言で立っていた、熊の獣人、サカイ・カーが割って入ってくる。


「なんじゃ! ちょっとした冗談じゃろて、硬いのはその毛皮だけにしておけよサカイ。まぁ実際はガンジュの根回しもあって大事にはならんかったが、あのごうつくばりのシール? とかいう奴が煩くて敵わんかったぞ。具体的には瓶に貼ってある、綺麗に剥がれんシールのようだった」

「シールドです。竜王様が箪笥に貼り付けてるコレクションではないのですから。ちなみに瓶のシールは熱すると綺麗に剥がれると言われていますな。あと大変だとおっしゃった対応ですがもろもろは全部、私がやったのですがね」

「妾の炎では瓶ごと溶けてなくなるわ馬鹿たれが。まぁ、対応は大変だったが妾は機転が効くからな、少しは頭の柔らかい奴に直接会って、さっさと解決しようとな。そこでソードの奴に会いに行ったわけだ」


 竜王様の炎を使用しなければよいのではないだろうか。

 それは置いておいてもソード辺境伯に直々に会いに行かれるとは相変わらず豪胆な方だ。色々とサカイが心配になってしまう。


「竜王様に無理やり連れて行かれた私の身にもなってほしいです。普通なら勝手に国境を越えて王が他国に赴くとか国際問題ですよ」

「さっきから煩いぞこの熊が!」

「熊ですがなにか?」

「ふん、別に妾は戦争になってもよかったんだがな」

「竜王様は交渉が無茶苦茶なんですよ。戦争をするかしないかっていう選択を出されていたソード辺境伯には少し同情しました」


 少し頭が回るものならわかることだ、今のタイミングで戦争をするのは自殺行為である。それを進んで行おうとしたシールドは余程先が見えないか、何か焦っているのだろう。彼らかすれば結果的には村1つ分の領民を失っただけである。

 

「もう王国に飛んで行くのちょー疲れたんだけど!」


 ニヤリと笑う、竜王様の視線の先にはドナルドが背負ってきたリュックがある。


「お手数をおかけし申し訳ございませんでした。竜王様に献上したい物があります」

「お前がつまらない物ですがとお前置きをしないとは期待できそうだな」


 ドナルドからリュックを受け取り、悠から貰ってきた白菜を2人に差し出す。

 どちらも豪快に齧り付き咀嚼し、あっという間に2玉の白菜は消えてなくなる。


「ククク、随分と面白い物を持ち帰ってきたな」

「面白い青年−−家族と出会いました」

「どんな奴だ」

「竜王様のことを見る目がないと、言う豪胆で優しい青年です」

「それは面白そうな奴だな」


 竜王様が今日一番の笑顔を見せられた、ただの笑顔ではく、凶悪性も兼ね合わせてた笑顔だ。

 柄にもなく、少し悪戯が過ぎたかもしれない。今からフォローが間に合うだろうか、すまんな、悠。



 

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