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家庭菜園物語  作者: コンビニ
20/180

19 家族

「うーんっと、モモの考えていることを聞いてもいいかな?」

「ご主人様は役立たずの私にご飯を沢山食べさてくれます。私を食べるために与えているのではないですか」

「違うよ! 俺はモモには健康になって欲しいくて、出来うる限りで栄養を考えてご飯を出しているんだよ」

「それは何故でしょうか?」


 話が噛み合っていない気がする。そうか、ガンジュさんが言っていた、この世界のモモが生きてきた世界の価値観、考え方の違いか。


「俺はモモのことが好きだからね。ああ、家族愛ですから姉さんは余計なチャチャを入れてこないでくださいね。えっと最初は哀れみだったかな、可哀想って思った。一方的に可哀想とか偉そうだよね俺。でもモモと一緒にいてこんな妹がいれば嬉しいなって思い始めた、だからモモには健康に健やかに育って欲しいって気持ち? かな。うまく説明できなくてごめん」

「私もご主人様はご飯をくれるので好きです!」

「わん!」


 大福と価値観が近いような気がする。でもありがとよっと大福の頭を撫でる。


「モモは俺がご飯をあげないってことはないけど、ご飯って部分を抜きにしても嫌いかな?」

「そんなことはないと思います。でもご飯を与えなくても私がダメなら代わりの人を探せばいいのではないでしょうか? それとも私に子供を産ませるために生かしてくださるのでしょうか?」

「にゃーん」


 だから姉さんはチャチャを入れないでと言ってるでしょうが。絶対に楽しんでるでしょ。

 ご飯を与えて理由が食べるためっていうのも、基本的には人を消耗品として考えるような人のとこにいたってことか。


「その話はモモが前にいた場所の話なのかな。いや、嫌なら話す必要はないんだ」


 モモが再び、下を向いてしまう。思い出したくない記憶なのかもしれない。


「前にいた場所は村長様の家で使用人をしていました」


 村長。村の頂点か、そこそこの家で使用人をしていたから基本的な礼儀作法ができているのだろう。


「私はお金になるそうで、早く大人になって子供沢山産むように言われていました。それに村長様の家では動かなくなった人は直ぐに交換されるんです」


 さくらさんやガンジュさんに話を聞くよりも、体験談として聞くのは実に生々しい。こんな小さな子から聞くとなると尚更だ。


「にゃーん」


 そうですね。いずれその村長はやっちゃってください。

 モモを抱き寄せて、膝の上に置き、ギュッとする。一緒になって大福がモモの膝に顔を置き、姉さんがモモの顔を肉球でプニプニとする。


「あのこれはなんでしょうか?」

「うーん、これはね皆んなモモのことが大好きだよって。モモはさ、俺達といるのは嫌かい?」

「嫌じゃないです」

「それじゃあ、王坂国に行ってしまうのかな?」

「行かなくてもいいんですか……」

「誰が行けと言いましたか、モモさんや。俺は最初からモモにここにいて欲しいって言ってるよ」


 モモが俺の腕の中でまた泣き始めてしまう。袖口が鼻水と涙でびしょびしょである。


「モモ、使用人とかではなくて、家族になれないかな」

「ご主人様がお父さんですか?」

「え、お父さんなの? お兄ちゃんじゃなくて?」

「にゃーん」


 お父さんでいいだろうって、年齢的にはお兄ちゃんじゃないんですか?

 まぁ、モモがお父さんが言いっていうならそれでいいか。


「えっとそうだね。モモはこんなパパじゃ嫌かな?」

「にゃーん」

「パパとかキモい。じゃないですよ! 俺は娘には年齢に合わせて呼び方を変えるという計画を子供ができたら立てていたんです」

「にゃーん」

 

 尚更キモいと言われた。


「嫌じゃないです」

「そっか。それなら今日から俺はモモのパパだよ。これからは我慢しなくていい、辛い時や甘えたい時は言ってくれたら嬉しいな。我儘だって言ってもいいぞ。でも怒る時は怒るからな!」

「にゃーん」


 臭いとか遠慮なく言っていいからなって。年齢的にはまだ匂いとかしませんから!


「怒られると、追い出されますか?」

「怒るっていうのはそうじゃないよ。いい例えがそうなだなー、よく姉さんが俺に怒ってるだろ? あんな感じだ」

「にゃーん」

 

 自分が怒られてることを例えにして恥ずかしくないのか親として。と姉さんからツッコミが入る。


「じゃあ、お風呂に1人で入るのは寂しいです」


 俺の娘はなんて可愛いんだ。


「にゃーん」

「まぁまぁ、年齢的にはそうかもしれませんがモモは例外的な部分はありますから」

「にゃーん」

「 俺は甘やかすことにかけては得意だと思うので、厳しい担当は姉さんに任せます!」


 今日は大福と姉さんを含めて全員でお風呂に入ろうかな。あ、姉さん逃げないでくださいね。


「泣かすじゃねぇか!」

「アダメ、あんた煩いのよ!」

「兄貴」

「お前ら全員煩いぞ」


 縁側には誰もいないが声だけが聞こえる。モモを抱っこしたまま外を見てみると、縁側の下に匍匐前進をこれからしますみたいな格好で4人の獣人が寝そべっていた。

 ガンジュさんが恥ずかしそうに代表して立ち上がって、咳払いをする。


「ガンジュさん、色々心配いただいてありがとうございます」

「こちらこそなんだか。覗きのようですまんな」


 心配して見てくれた人に覗きなどとは思わない。ガンジュさんのことだ、何かあればフォローをしてくれようとしていたのではないだろうか。

 俺に抱き上げられた、モモの頭をガンジュさんが優しく撫でる。

 ガンジュさんを除く、3人も立ち上がり。ガンジュさんが大きな一度手を叩く。それに合わせて3人も手1つ叩いた。突然の一本締めだ。


「神の森の悠とモモはここに父と子家族となった。見届け人はトヨナカ ガンジュが務めた」


 何か儀式的なことだったんだろうか。でもなんか嬉しい。


「ガンジュさん、改めてありがとうございます」

「いや、お前たち家族の誕生を見届けらてよかったよ」


 ★★★


 布団が狭い。それもそうか、モモの要望で昨日は2枚の布団をくっつけて、家族4人で寝ることになったのだ。

 主には大福がスペースを取るのが原因だけどなんか狭いすぎるような。眠い、目を開けるのもおっくうになる。


「大福、狭いぞ」

「わん」


 ん? なんだモフモフしてないな。モモにしては大きさが? なんだ夢かな。


「にゃーん」

「なんですか姉さん」


 布団をめくって見ると、モモ? がいた。褐色で綺麗な白髪、うん、モモのはずなんだけど。


「モモか?」


 モモ? が苦しいそうに息を吐いている。額を触ってみると明らかに熱い。

 大変や! 熱もそうだけど、モモが急激にデカくなってるのだ。デカいといっても巨大化した訳ではない年相応、もしくは10歳にしては少し大きいくらいの身長になっている。


「にゃーん」

「そうですね。氷枕に着替えも! あとはガンジュさんにも相談してみます」


 ガンジュさんは既に旅立ちの準備万端で4人で装備のチェックをしていた。

 

「ガンジュさん!」

「おお、悠。おはよう。本当に世話にな−−どうした?」

「モモが、モモがデカくなってるんです!」


 訳がわからないという顔をするガンジュさんを無理やり家の中に引っ張り、モモの元に連れていく。

 苦しそうにするモモの髪をかき上げると、何故か耳をチェックしている。


「身長などが年相応になっているのも驚いた。それ以上に理屈はわからんが、モモはハーフエルフでもなくなっている」

「それってどういう」

「わからん」


 ガンジュさんでもお手上げなのか? 種族が変わってるてのもどういうこと? 風邪薬で大丈夫なのか?


「ぱ、パパ」

「モモ、大丈夫か?」


 なんだろう、成長したモモにパパ呼びされるのは罪悪感がある。もうお父さんって呼んで欲しい年齢になっちゃったよ。


「夢に女の人が出たの」

「女の人? それってバーミヤンか? ビクドか? それともサイゼか?」

「サイゼ様」


 あのファミレス神、モモに何かしやがったのか!


「にゃーん」

「違うの、パパの力になりたいって話をしたの」


 その結果が急な成長と、ハーフエルフっていう種族からの進化? なのか。

 あのままのモモでも十分に力になってくれてたというのに、目が覚めたら悪辣な契約を結ばないように改めて話さないといけないな。


「にゃーん」

「そうですね。あの神が関わっているなら命に触るようなことではないと思いますし、様子を見ましょうか」

「神とはスケールのデカい話だな。それでな、悠。申し訳ないが我々は……」

「わかっています。出立の時に邪魔をしてしまって申し訳ありませんでした。モモのことは心配しないでください。俺も姉さんも大福もいますから」


 ガンジュさん達には無理を言って残ってもらっていた。これ以上引き止める訳には行かない。


「姉さん、少しの間だけモモを頼みます」

「にゃーん」


 大福と一緒に、外に出る。そのまま大福はガンジュさん達の道案内をしながら送ることになっている。


「わん」

「モモのことは心配するな。ガンジュさん達のこと頼むな」

「最後の最後にすまないな。種や土産も感謝する」


 できる限りのことはした。あとは種が実ことを祈るだけだ。


「ガンジュさん、長い期間ありがとうございました」

「こちらこそだ。種が実った時には必ず知らを送る」

 

 それって自分達がまたこの危険な森にくるってことですか? みたいな目を後ろの3人がしていた。


「わん!」

「大福様、抜け毛でございますか?」

「抜け毛? うーん、これでいいのか?」


 もふっとした毛を少し、つまむとモフッと毛が抜ける。またブラッシングしないと家が毛だらけになりそうだ。


「わん」

「これがあれば安全ということですか」

「大福の毛にそんな効果があるのか」


 少しブラッシングをして、抜けた毛を取り急ぎ購入した巾着袋に詰める。


「大福様、感謝します。改めて、悠、元気でな。娘は可愛がるだけではいかんぞ」

「こちらこそありがとうございます。できるだけ意識してみます。自信はないですけど」


 大きなリュックを4人が背負うと、大福を先頭に森の奥に消えていく。アダメさんがぶんぶんと最後に手を振っていた。

 これで人を見送るのは2度目か。モモのことも相談したいし、なんとかさくらさんと連絡が取れないかな。


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