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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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エピローグ

★モモ視点


 家の裏、守りの木の下でござを敷いて、蜂蜜漬けにしたフルーツとお酒、簡単なおつまみやおやつを用意して、木陰の中、のんびりとした時間を過ごす。

 若葉と妖精達、大福様は食べすぎたのか寝息を立てている。


 お父さんが亡くなると、杏お姉ちゃんも同じく息を引きとり。数年後にはレイヴィも亡くなり、サイラやエリゼお姉ちゃんも、それに太陽や紬も、その子供達も亡くなってしまった。

 数日前には自分の娘も亡くなった。娘は結婚することはなく、孫はいないし、親しい人は皆んないなくなった。


 今はさくらさんに習って、歴史をまとめたりして、本を出したりしている。

 お父さんの希望もあって森の賢者という人物は歴史の書のわずか1ページに短文でしか記載されていない。

 

 『食糧問題を大きく改善したハイエルフのモモの育ての親であり、皇帝ハル亡後に帝国をまとめ上げた女傑、エリゼの師でもあった。絵本にも登場する人物で人を育てる才能はあったのかもしれないが、本人自身の偉業はない。架空の人物ではないかと言われている』


 自分がしたことなんてない。架空の人物くらいが丁度いい。

 お父さんがそう言うので私も積極的に歴史書に残すつもりはない。

 ただ、誰かに知ってほしいという気持ちがないわけではないので、私とお父さん、他の皆んなで過ごした日記をある場所に隠したりしている。

 日記は人に見つからないように隠すものだし、隠し場所を忘れたりもする。歴史書でもないし、もし見つかったとしても不可抗力だよね、お父さん。


 王国はルルイゼの思惑通りに進み、サイラを王にした後に、死亡ということにして、彼女が裏から王国を牛耳って、帝国に引けを取らない国へと育て上げた。

 帝国は様々な技術の革新もあってこの世界では1番の国になっている。

 ビクドは宗教の国や芸術の国としての発展をして、大坂はこの世界の食糧庫、食事処として、活躍している。最近、カレンさんにカイラが勝って、新しい王様になった。

 私にとっては残った数少ない友人なのでちょこちょこ遊びに行ったりはしている。



 イールはあっさりしたもので、お父さんやレイヴィの死を見届けると、妹や弟達には強く生きなさいと言葉を残して、この世界から消えてしまった。


「神様に別の世界で神獣として、仕事をしないか誘われたので行ってくる!」

「行ってくる! じゃないわよ。よく考えたの?」

「うん! 父やレイ母も看取ったし、弟達も家族を作り、食べることにも困ってない。私がするべきことはこの世界にはない! もーねがいるしね」


 私を信頼してくれるのは嬉しいけど、正直寂しい。

 イールは寂しくないのかな?

 妹のくせに、私をあやす様に抱きしめる。


「もーね。私だって寂しいよ。でももーねとはあの神様の下にいたらまた会えるだろうしさ。それに私は母やお父さん、もーねに命を救ってもらった。だから意味がある生き方をしたい。同じように困ってる世界があるなら力になりたいんだ」


 イールは私とは違って強い子。

 私は今だって、寂しさを紛らわすためにお酒を飲んだり、畑を耕したり、大福様をブラッシングしたり、何かをしてないと落ち着かない。


「よぉ! 元気にしてる!」

「わん!」

「神様と、さくらさん?」

「久しいな、モモ」


 ござをもう一枚出して、スペースを作ると、お茶を用意する。


「私だって酒の方がいい!」


 父がいないし、もうお酒を出しても問題はないだろう。


「それで、突然どうされたんですか。お父さんが亡くなるときだって来なかったのに」

「なんだ、怒ってるのか? ちゃんと魂の見送りの時に話をしたぞ。私だってそれなりに忙しくなってたしな、これなかった事は謝るが、神が一個人が死ぬからとホイホイとこっちの世界にはこれないのだよ」


 こうやって酒を飲みにはくるくせに。知ってるんだから、売りに出しているもの以外でもちょこちょこ盗みに入ってるの。


「わ、悪かった! でもちゃんと魂は見送ったと言ってるだろうに! サービスとして次の地球での生まれ変わりでもレイヴィだったか? 嫁と出会えるように計らったりしたんだぞ。当然、記憶はないがお前の父親の生まれ変わりは幸せになれるよ」

「そうなんですか。ありがとうございます。当然、杏お姉ちゃんもいるんですよね?」

「ああ、あの化け猫は記憶を持ってまた生まれ変わったよ」


 そっか。私も同じく生まれ変わりたいなぁ。


「モモ、今は寂しいかもしれないが、時間が解決する。私がいうのだから間違いない。父親が残してくれたものを守ると誓い、ハイエルフになったのだろう? お前ならやれるさ」


 さくらさんが言うと説得力がある。


「はい。そうですね、頑張ります。それで今日はどんなお話なんですか?」

「ああ、私は神様と一緒に働くことになった。この世界のことはお前に任せる」

「そうですか……」


 2人が一緒に来た時点でなんとなくわかっていた。

 また知っている友人がいなくなる。寂しいな。

 でもさくらさんが選んだことだ。応援しよう。


「さくらさんがいなければ今の私はありませんでした。これまでお世話になりました」

「私も楽しかったよ。今生の別れではないと思う。また新しいハイエルフが生まれればいずれば、お前と再会することもあるだろう」

「そうだぞ! 次はモモをスカウトしてやるからな」

「考えておきます」

「そこは、嬉しいです! だろう!」



 くだらない話をしたり、最近の神様の恋愛事情を聞いたり、久しぶりに楽しい時間を過ごした。


「それではまたな!」

「モモ、元気でな」

「はい」


 泣かないと決めたのに、泣きそうになる。


「モモ、お前は由来となった桃の花言葉を知っているか?」

「知りませんけど……」

「天下無敵だ。あの猫が強くなってほしいと、考えたのだろう。だからもっと強くなれ、お前なら名前に負けないくらい強くなれるさ」

「天下無敵なんて名前負けしそうですね。でもありがとうございます。少し元気が出ました」



 2人を見送って、家の中に入る。

 

「大福様、明日も早いのでお風呂に入って寝ましょうか」

「わん!」


 寂しくないなんて言ったら嘘になるけど、元気をもらえた。天下無敵。

 明日からも畑仕事をバリバリと頑張ろう!


 





インフルになった後にパタリと進まず申し訳ございませんでした。

行き当たりばったり書きましたが、とりあえずは完結となります。

お読みいただき本当にありがとうございました。

次はちゃんとプロットとかも頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 基本的にスローライフ系はあまり好まないのですが、不器用ながら朴訥な主人公と可愛らしい娘たち。適度なトラブルで、最後まで読むことができました。 [気になる点] 国をまたぐ話だったのでキャラが…
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