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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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16 思い

「それってこれから戦争になるんですか?」

「今回は我々と取引をしていたジャスティス側の村の住人を皆殺しにして、その罪を我々に着せた上で戦争を始める気だったようだし、相手方はやる気なのかもしれないが、国の総意ではないようなので戦争にはならないと思う。そのように動いてもいる」


 なんか政治的な意図が絡みあってる感じ?


「向こうの村の少女を助けたのをきっかけにな、ロメロという奴を中心に支援をしていたのだが、それが貴族に気が付かれたようでな」

「それで村人も全員、殺されたっていうんですか……」

「心配するな。事前に手を回して、住人の避難は行った。怪我人は出ているかもしれないが、今頃は俺達の街に戻っているはずだ」

「でもなんでもまた、そんな危険な橋を渡るような行為をしたんですか」

「ロメロと助けた少女が恋仲になったようでな。放っておけば暴走しかねん状態だったのもあるが、そもそもの支援することを許可したのも俺だ。最終的な責は俺にある」


 ロメロ、お前ってやつは上司に恵まれやがって。


「戦争にならないように根回しはしたつもりだが、最悪はこの首1つで丸く収めてもらうさ」

「ガンジュさん、冗談でもやめてくださいよ」

「そうだな。悪い冗談だった」


 冗談だとガンジュさんは言ったけど、どこか冗談とは思えない。

 

「政治面で不安な部分はあるがまずは食糧だ。避難した者もいるし、帰ってからも大変になる」

「よければ野菜とか少し持って行ってください」

「感謝はするが海の中に石を投げるようなものだ。気を使う必要はない」


 うちなんて少し豪華な家庭菜園くらいの土地しかないもんな。もっと拡張してもらって人口増やしてからの生産チートとかできないのかよ。


「解析の勇者ってのがいるんですよね? そいつならなんとかできないんですか」

「勇者か。噂程度だが直ぐに効果が出るものではない能力と聞いている。長い目で見れば食糧問題だけでなく、仕組みがわかっていなかった道具関連の活用など幅広い分野で力なるとは噂で聞いていのだがな」

「即効性はないってことですか。現状で俺にできることってないんですかね?」

「ない」


 そう言って笑いながらガンジュさんが頭を撫で回してくる。


「これは我々の問題なのだ、お前が気にすることではない」

「でも……」

「だったら種をもらえないだろうか。もしかすればここの種なら育つかもしれない」

「種ですね! わかりました! 気候とか色々教えてください。これから育てて冬が来るまでに収穫できそうなの探しますよ」


 小麦はそもそもラインナップに出ていない。米も同様だし、どちらも現実では育てるのに非常に時間がかかる作物だから無理だろうし。とうもろこしはありだな、でも収穫可能なラインナップに出てきてたから今のタイミングでは遅いか。


「おい、やる気になっているができる範囲でいいんだぞ」

「確かにお金はそんなないですし、種も大量に必要なる可能性はありますね。金策も必要かー」

「いや、気持ち程度に種をもらえればと言ったのだが、我々のためにそこまで無理はしなくても……」

「いえ、やるからには本気で金策をしましょう。明日から少し忙しくなりますよ! それでどのくらいな滞在できそうですか?」

「大福様が送ってくれると言ってたし、ここからなら最短で街に戻れから、1週間なら大丈夫だ」

「わかりました。解体も教えてもらいたいのですが、金策のためにできるだけ分業をしていきましょう!」


 

 ★★★



 まずはガンジュさん達に渡す種が決まった。うちの家庭菜園での収穫時期は11月から12月となっているが、通常は5月から7月のある程度暖かくなってから育て始めるとパッケージに記載があった。

 これならまだ間に合う上に豆は汎用性も効くし、日持ち、保存も効く。ガンジュさん達にはベストな選択だと思う。


 大豆の種は1袋500円となっている。目標金額は10万円で200袋だ。

 金策としてまずは料理、確保できた肉を含めて大福には狩りを頑張ってもらう話をした。

 料理は俺が担当して、作って作って売りまくる。並行して畑仕事と解体をガンジュさん、エリザベス、アダメさんにお願いしてした。ガンジュさん達の善意でドナルドさんには石材と木を集めてもらうことになった。


「それでは目標金額に向けて頑張りましょう!」

「ご主人様、私は……」

「モモ、ごめん少し忙しくなるんだ。家の掃除とかお風呂の用意とかしてくれるかな」

「わかりました」

「姉さん、モモのことお願いします」

「にゃーん」


 モモは少し寂しそうに頷き、姉さんはやる気なそうに答え寝息を立て始めた。わかってるのかなこの人は。


「悠、畑仕事など出来ることがあればモモにも手伝ってもらうことは可能か?」

「えっと、ガンジュさんのかえって邪魔になりませんか?」

「心配するな。モモ、十分戦力となってくれる。家の掃除がひと段落したら手伝ってもらえるか?」

「はい」


 モモがますますしょぼーんとしてしまっている。無理をしなくてもいいのに。

 それぞれに行動を開始したので、昨日切り分けた大量の肉の処理をしていく。当然のように冷凍庫に入りきらなかったので冷蔵庫を含めてパンパンである。なんなら入りきらずに常温で置いてしまっている肉もあるくらいだ。


「面白い物を見つけてたんだよね」


 そう、燻製器! である。木材さえあればクラフト可能な道具だ。事前にクラフトしておいたのがこちら。

 キャンプ動画とか段ボールのとか、鉄製のはなんとなく見たことがあったけど、今回のは長方形の木製箱だ。

 開けると、下段にスモーク用のウッドチップなどを燃やす台があり、上段に肉を置く場所がある。燻製用のウッド関連は作成した時にアンロックされていた、自分で火加減だったり調整する必要はないようで肉を置いて専用のウッドを入れれば【8時間後に完成】と表示される。この辺はゲームのような簡単仕様で助かる。

 常温で放っておいた肉が悪くなるかと思い、結局のところ5つの燻製器が家の前に並ぶ事になった。


 これで肉を無駄にすることはないだろうし、保存がどの程度効くかわかならいけど、ガンジュさん達の帰りの弁当代わりにもなるかもしれない。

 ガンジュさんが回収してくれた石を得たことで、【石材】のクラフトも解放されて、【鉱山】の道も解放されたとかお知らせが出ていることも確認ができた。石だけでなく、鉄の確保ができるようになってクラフトの幅も広がるようだけど今は試している時間がない。


 今回は高く買い取ってくれそうなステーキで攻めていく。まずはステーキソース、これは当然ニンニク醤油である。

 フライパンにオリーブオイルと切ったニンニクを入れて炒める。香りが出てきたら醤油を入れてみりん、砂糖、安ワインで味を整える。

 大福が狩って来てくれた肉は極上だから、ソースの味は重要となってくる。付け合わせの野菜、にんじん、じゃがいも、をもう1つのフライパンでまとめて作っていく。

 メインとなる肉はある程度焼いてから、アルミホイルで包んでいき、余熱で最後の完成に持っていく。


「合計で20枚はできたかな。いくらになるか楽しみだ」


 木のクラフトで乗せる用の木の皿を作成。木材1つで2枚の作成が可能で普段は皿は返却してもらってるが洗う手間もあるし、今回はドナルドさんが木を安定供給してくれているので皿ごと買い取ってもらう予定だ。


「にゃーん」

「いい感じですね。そうですね、そういう手もあるのかもしれないですね」


 姉さんが今回の肉の買取が高いなら解体さえ覚えてしまえば、肉屋としてあとは野菜など購入してしまえば済むのではないかと言っている。


「合理的かもしれないですね。でも俺はせっかくのスローライフなので不合理を少し楽しみたいっていうか。効率だけを求める攻略はゲームならありかなって思うんですけど。せっかくのこの暮らしを楽しみたいって気持ちはあります。とか言ってどっかで楽をしようとするかもしれないですけど。今回はとにかく効率を求めていきます」

「にゃーん」

「いえ、自分のためですよ。俺の自己満足って言いたいんですけど、俺は情けは人のためならずとか高尚なことは言えないんで、自己満足以外だとモモのためってのもあります」

「にゃーん」


 少しわからんなって、姉さんが言っている。


「さくらさんを見てて思ったんです。モモもさくらさんほどではないけど、種族的には長生きすることになると思うので。もし外の世界でここの野菜を育てるのに成功すれば、俺が死んだ後もモモが美味しいものが食べれたらなって」

「にゃーん」


 その考えは悪くない。信用は言葉だけでなく、行動で示す必要はある。その点で言えばモモはお前は信用しているかもしれない。

 ただ考えてること、思いというのは言葉にしないと伝わることはない。モモのためにやっているつもりでも本人はどう受け取っているのかな。そんなことを言って姉さんは寝息を立ててしまう。

 その言葉にするのが少し苦手だし、難しいと思うのは俺だけだろうか。陰キャである俺には特に難しいんですよ。

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