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家庭菜園物語  作者: コンビニ
157/180

4ー23 真★聖剣

★エリゼ視点


 リリアさんとルークも翌日には落ち着いて話ができるようになり、改めてソード家一同とモモ、さくらさんで集まって話をすることになった。


「ライアン君、孫の顔が早めに見れそうで期待が持てるな」


 まずは先制、さくらさんのからかいが発動して、リリアさんが恥ずかしそうにしている。


「さくらさん、余計な茶々をいれないでください」


 後攻、モモのお叱り。

 さくらさんは不貞腐れて、お茶に大量のお酒を入れて煽り始めてしまった。それはもうお酒の風味があるお茶ではなく薄まったお酒だと思います。


「改めて、リリアちゃんが無事で本当によかったよ」

「モモちゃんありがとう。エリゼお姉様もさくら様もありがとうございました」

「私は大したことはしていない。モモとさくらさんがいなければ危なかったからね」

「姉さん、俺からもお礼を」


 私をずっと敵視していたルークが素直な、澄んだ目をしている。これが色々な意味で大人になるということなんだろうか。お姉ちゃんとしては先を越されてなんだか複雑な気持ち。


「姉さんふざけないでください、真面目な話をしています」

「ふざけているつもりはないんだけどね。ルーク、大人になったね」


 それがふざけていると、反論があるかと思ったけど、お茶で流し込んでしまった。


「私は家族として姉としてできることをしただけだ。過去のことか今更になって謝るとかはやめよう。私だって過ちはあった、お互いに全部を水に流せるとは思ってはいないが、これからの建設的な話をしていこう」

「姉さんから建設的ななんて言葉が出るとは思いませんでした」

「私も多少は賢くなったからな」


 ルークとはお互いに笑った。なんだか、改めて姉弟としてスタートを切れた気がする。


「どうしたモモ?」

「別にー」


 モモが椅子を私の側に寄せて座って来た。広いテーブルなのに近いな。

 それを見て、リリアさんとルルイゼが笑っていた。


「リリアちゃん、結婚式もうすぐだよね? 私も見ていっていいかな?」

「モモ、お前が結婚式に参加するとなれば騒がしくなるぞー」

「さくらさんもたまにはお祝い事に参加したら? リリアちゃんの結婚なんだよ」


 さくらさんは若干めんどくさそうにしている。父上は顔が真っ青になっている。

 私が大人になったからか、完璧だと思っていた父上も人間らしい表情をするんだなぁーと最近は新しい発見がある。


「だって、お偉方が集まって面倒になるぞー。ほらライアン君の顔を見てみろ、青を通り越してナスのような色になってるぞ」

「いえいえ、滅相もありません。お二人が参加いただけるなんて、ルークやリリアさんにとっても最高の喜びとなるでしょう」

「じゃあ、私たちがいることは伏せてもらって変装して影から見るのはどうでしょうか?」


 モモの提案に更に父上があたふたして、普通に参加することに話がまとまった。

 ルークも父上もこれからが大変だ。私はある意味で気楽な立場で助かっている。


「エリゼ姉様も飄々としてますが、聖剣の使い手、王国の英雄なんて呼ばれているんですよ。お偉方が我が街に集まれば、どれだけの婚姻の申し込みや、お茶会の誘いが来るか楽しみですね」


 ぐぬぬ、どこか逃げるとこはないのだろうか。


「あ、聖剣と言えば、さくらさん、折ってしまい申し訳ありませんでした。旦那さんの形見なのに」

「気にすることはない。形あるものはいずれ壊れる。結婚式まで日数もあり、時間を持て余す。ライアン君のコレクションを飲み干すのもいいが、どうせなら聖剣を作り直すか」

「作り直すなんてできるんですか?」

「ああ、モモ、大福の毛とかまだ大量にあるか?」

「ありますよ」


 モモが収納魔法から大福の毛玉を大量に取り出す。


「守りの木の葉もあるか?」

「はい」

「よしよし、鉱石は私が趣味で集めたのがある。それに加えてハイエルフが二人もいる。どうせなら今の聖剣を超える、聖剣を作ろうではないか」

「楽しそう!」


 モモも食いついてくれた。

 面白くなってきた。


「ライアン君、どこか街の郊外で空き地を借りれるか?」

「聖剣を我が領で作るんですか……はい、わかりました用意いたします」

「うむ、郊外に簡易的な小屋を建てて、土魔法で炉を作ろう。道具は一式、用意がある」


 この土地が聖剣が生まれた土地になると、国中が騒ぎになって石碑とかも建てられて大変なことになるんだろうな。まぁ、私としては新しい強い剣が手に入るなら、些細なことは父上に任せるとしよう。

 なんだかこの数時間で髪の毛が薄くなった気がする。


 

 数日経過して郊外に聖剣作成予定地が準備されて、小屋なんかも建てられた。大工さんも数日で建てろとか大変だったろうに。簡単な物でいいという話だったが予想よりも立派な物が作られた。


「ではやるか。ライアン君には殺されたくなければ、小屋の近くに人は近づけないように話してある。魔法や錬金術を応用して剣を作っていく。エリゼは私がいいと言うまで精一杯、この金槌で叩け」

「さくらさん、それってどのくらい?」

「なーに、ほんの1週間だ」


 ハイエルフの時間感覚は狂っている。

 高温の炉にこれまでの聖剣が投げ入れられて、それに加えて鉱石が入り、出てきた塊を私はとにかく、力一杯叩く。

 金床も金槌も特別性なのか力一杯振るっても壊れることはなかった。細かい微調整はさくらさんが別の小さな金槌でサポートしてくれる。

 モモは魔力がしっかりと浸透するようにサポートを担当してくれた。


 当然、部屋は高温となり、皆んな汗だくになる。

 とにかく振えと言われているので、モモが水を飲ませたりしてくれるけど、これトイレはどうすればいいんだろうか。


「これ、下手な訓練よりキツいんですけど」

「楽しいだろう!」

「楽しいですね!」


 私は厳しい訓練にも慣れてはいるけど楽しいという感想は出てこない。

 もう聖剣じゃなくていいからやめたらダメかな。

 楽しそうに目を輝かせる2人にやめたいとは言えないので、とにかく金槌を振るう。



 予定通り1週間で聖剣が完了する。


「それで、お姉様はトイレどうしたんですか?」


 ルルイゼが失礼な質問を投げかけてきた。

 漏らしたと思っているのか。


「ちゃんと休憩もらったりしたよ。でもそんなに頻繁には行けなかったし、最終版は本当に動けなくなったから水分も多めに取れないし、死ぬかと思ったし、面倒なことになった」


 なんでも結婚式には王様も来ることになったらしく、それだけでなくルークの当主就任の式典、私への聖剣の授与式など3日間に渡って色々とやることになってしまった。


「私はここまで関わるつもりなかったのに」

「ご愁傷様ですね、お姉様」







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