4ー12 妖精の家
★悠視点
この土地は秋の時間が短くて四季を感じにくい。冬の期間が長く春と秋はその分、短い。夏の期間は普通かな?
11月上旬はいいが、半ばになってくれば寒さが厳しくなってくる。一応は米も11月の終わりまで収穫はできるが最近ではよほど切羽詰まってないと、寒くて田んぼの管理は諦めている。
ハルが寒いというので、支給しているツナギの下に着込む、シャツを更に支給した。
ヴィはと言えば、相変わらずパンツにタンクトップでバカ笑いしながら働いている。寒くないの?
冷えてきもきたし、昼食時にそれぞれに確認をしてみた。
「ハルは寝るときは寒くないのか? 毛布とか出すか」
「いえ、イールさんがいるので大丈夫です」
ああ、冬場は特にイールって暖かいよね。
元の体温が少し高いのもあるけど、獣人とのハーフってのもあってモフッとしている部分もあるし。
「イール、今日はパパと寝ないか?」
「いやー」
くぅぅうううん。
「ユウはあれだな! キモいな!」
「うるせぇ!」
ヴィが俺とイールとのやり取りを見て、笑い転げている。父親にとってはデリケートな問題なんだよ。
「家にいた時の父上も同じようなウザさを持っていたな」
どこの家庭も父親は同じような扱いなのか。
まぁ、イールは反抗期みたいなもんで、少し時間が経てば落ち着くだろう。落ち着くよね?
モモは反抗期らしいものなかったからどう接していいものか。
これが思春期になればもっと酷くなるとかあるのかな? エリゼやモモも思春期の年齢にはだいぶ大人びてたしなぁ。
「にゃーん」
反抗期ってほど酷いものではないですか。
確かに基本的にはいい子だしな。単純に父親離れをしようとしているだけか。
あとは新しいお兄ちゃんに甘えたいって感じなのかな。
日々、成長している子供の姿を見てると嬉しい反面、寂しいね。
「ねぇ、早くしてよ」
若葉が不満顔でイールの頭の上で胡座をかいている。
わかってるさ、昼飯くらいゆっくり食べさせてくれ。
今日はついに【妖精の家】建築日である。時間としては1時間くらいで建築できるようなので、昼飯を食べて守りの木の側にサクッと建築をしてしまう。
日当たりがどうのとかで、何度も何度も若葉からダメ出しがあったけど、なんとか建築場所も決まった。
1時間経過した時には若葉が自分達の家を自慢したいようでアラームの代わりとして俺達を呼びにきてくれた。
見かけはこじんまりとした小屋である。
人がかかんで入れるくらいの扉と、若葉達用の扉が2つある。窓の大きさは普通の人間サイズだ。
中に入ると腰くらいの高さの台が階段状に設置されていて、棚なども多くり、人が動けるようなスペースはほぼない、人間が2人入るとギュウギュウになってしまう。
あとは入った瞬間になんかがアンロックされた。【妖精さんの家具シリーズ】
リストを見てみると、妖精さんの家だったり、椅子、お風呂、タンスなどの様々な種類のものが購入できるようになっている。
試しにテーブルセットを購入してみたが、これはあれだな、小さいウサギのファミリーのやつだ。
「素晴らしいですね。精巧な家具ですね」
ハルは気に入ったようで、目を輝かせて見ている。イールも同様で可愛らしい家具に喜んでいた。
それ以上に若葉達が喜んでくれていたが、このテーブルセットだけでも1200円もした。今は合計で5人だからいいけど、これから増えるとか考えたら馬鹿にならない金額になりそうだ。家とかは1万するし、城なんか30万もする。城ってなんだよそれ。
「私は雑務に戻っていいか?」
「ああ、うん」
ヴィの琴線には触れなかったらしく、足早に斧を持って木を狩る作業をしに行ってしまった。
なんというか、脳筋らしい反応だ。
「城! 城も買って!」
「ちょっと待てよ、若葉。そんなお金は今はありません。まずは個人個人の家の準備をして小物を少しずつ増やしていこう」
若葉も渋々という様子ではあったが了承してくれた。
家を試しに1つ買ってみたが、これもまた可愛らしい家で、どんな家具を置いちゃおうかなーなんて想像を膨らませてくれる。しかも実際に妖精さんが動いて使用してくれるのだ。これは楽しくなってきちゃう。
サイズとしては2LDKくらいのサイズで、お風呂やベット、テーブルや食器など必要最低限の物を揃えていく。お風呂なんか排水したものがどこにいくのかわからないけど実際にお湯なんかも出ちゃう優れもの。
若葉は王様ってこともあり、1人で家を使用して、残りの4人は2人で1軒の家を使用してもらう。
城の件は、後でと言ったものの、どんな城なのかめちゃくちゃ早く見たい。若葉達のおかげで単価が上がってお金も貯まりやすくなってはきているが、ワインのためにお金も寄せないといけない。
これがあれだな、沼ってやつだ。
夕食後には若葉を含めた家族で話し合って、妖精予算が可決された。月で言えば3万円で必要な物を買い足していき、余れば貯蓄に回すってことに決定した。
そう決定はしたのだが、それとは別で俺やイールが楽しむように1万円の予算が別途設けられることになり。リビングに2の家が置かれて俺とイールが好きなミニチュアを足していき楽しんでいる。
これは絶対にモモも好きだろうなぁー、手紙に書いて自慢をしよう。エリゼはどうだろうか? なんかヴィと同じような反応をしそうだ。
ミニチュアの家や家具を眺めがら飲む酒は美味い。
たまに妖精さん達がこっちでも寝たり、遊んだりしてくれている姿を見るのも楽しい。
木彫りの人形を作ったりとかも楽しいけど、精巧に完成されたミニチュアを並べるのも非常に楽しい。
「女々しい趣味だな」
「こういう趣味にはね、男も女もないの」
ミニュチュアを愛でていると、ヴィがチクチクと攻撃をしてくる。
お宅のハル君も楽しそうに眺めてますけど? イールと妖精さんの家にお邪魔して眺めたりしてますけどぉ?




