4ー3 辺境の街にて
これからの話をするために、トヨナカにある作戦会議室を借りて、パーティーメンバーを集めた。
「2人には大事な話がある。今日でパーティーを解散しようと思う」
「2人って、お姉様にとっては私は妹であって、パーティー枠ではないってことですよね?」
「姉御……」
「解散ってどうしてですか。やっとAランクのパーティーにもなれたのに」
「2人はここで幸せになれ。無理に冒険者を続ける事はないよ、丁度いいタイミングだ」
レオンとエリン、特にエリンは納得できていない。私に少なからずの恩を感じているのもあるかもしれないが、捨てられた状態でこの国に来た彼女にとっては数少ない居場所だったんだと思う。
もうその居場所はレオンの隣がある、心配ない。
「エリーさんはどうするつもりなんですか?」
「過去の精算してくる。もしかしたら死ぬかもしれないけど、私はエリゼ・ソードに戻るつもりだ」
「家督争いをしに行くのですか?」
「そんなつもりはない。次期当主は弟だ。過去の精算をして許してもらえるのであれば、小さい領地をもらって開拓して村長でもやろうと思ってる」
許してもらえるとは思えない。紹介状はあるけど殺される可能性だって高い。
「でしたら、尚更味方は多い方がいいじゃないですか!」
「お姉様ぁ! 私がいますからね!」
「姉御……」
さっきからレオンはそれしか口にしてないけど、そんなに口下手でどうやってエレンと結ばれたんだ?
エレンがガンガンに攻めた。もとい、モフったんだろうね。
「そんな危険なところには連れて行けない」
「私だって放っておけません! レオン、私はエリーさんについて行くから」
「わかった。俺も行く」
頑として引くきはないって感じだ。気持ちは嬉しい、張り倒して簀巻きにして、置いていくか。
「お姉様は村を作るのであれば、王国と迷いの森の近いところに村を作りたいと考えていますよね? それも農奴であった獣人や人を多く集めて、トヨナカと似たような、様々な人種が集まる村をです。そうなってくればレオンを手元に置いておくのは有効ですよ、獣人達の緩衝材になります。それに家に戻ればメイドが必要ですよね? ソード家のメイドとなれば教養は必要ですが、その点で言えばエレンは元は帝国の皇子の嫁候補でマナー関連は完璧でしょう。そして最後はこの私、パスルですが、優秀なヒーラーでもありますしから村作りで怪我人が出た時にいたら便利でしょうし、何よりもこの頭脳。お姉様の優秀な軍師としてサポートさせていただきますよ」
早口で何を言い出すかと思えば、確かに2人はいてくれたら嬉しい存在ではあるけど。
ついでにパスルだってまともな時には力にもなるけど、暴走が怖いな。
「100人の無能な部下よりも信頼できる仲間です。そして1000人の無能な部下よりも、この妹であるパスルですよ、お姉様」
「エレン、レオン、力を貸してくれる」
「勿論です!」
「姉御!」
「お姉様ぁ!」
呼んでもないのに抱きつかないで欲しい。
まぁこの子はついてくるなって言っても来るとは思ってたけどさ。
ルイさんにソード家に戻る話をしたら、頑張って来い、無理はせず、ダメそうなら早く帰って来いと言われた。本当にダメだった時は再就職といい男でも紹介してもらおう。
街を出る時には盛大な宴会を開いてもらい、その翌日には直ぐに出発した。
最初からエリゼだと名乗るわけにはいかないので、まずはエリーとして王国に入国をしてソード領では端の方にあるそこそこ大きな街に入って服装や装備を整える。
ヒラヒラしたドレスではなく、しっかりとして鎧を用意して、騎士として働くためにソード家に戻ったという印象を強くする。
装備なんて高そうかどうかよりも、性能の方が大事だけど、貴族と会うとなればそれ用の装備も必要となるので全員分の装備を新調することになったけど、値段も時間もそれなりにかかることになってしまった。
「ソード領に近づけば、お姉様の存在にも気がつくでしょうし、ここで装備を備えて一気にソード領内の首都を目指しましょう」
宿屋で今後の方針を話合う。この街で1週間ほどの足止めとなるので、できるだけ目立たないように過ごすように釘を刺された。
「お姉様は困っている人がいれば手を貸そうとしますから、気をつけてください。それにこの街少しヤバそうですし」
「ヤバいってなにがよ」
「農奴を今は解放というか、正当に改めて扱え、国法に沿った税を集めろ、みたいな流れがあります。当然のことではありますが、今までできてたことができなくなれば反発する者も出てきます。この街の管理者がそれで、私兵をかなり集めているみたいです。もしかするとソード以外でバックに別の貴族もいるのかもしれませんね」
「そんな奴なら、吊し上げてやった方がいいわね」
「いいわね! じゃないんですよ、お姉様。今はまだ時ではないんです、貴女がエリゼ・ソードと分かればそれを利用しようとか、罪を被せようとかしてきますよ」
切って終わりじゃないなんて面倒なことね。
「近々、この街の視察に代官が来るそうですが、内乱とか起きないといいんですけど」
「そうなったら、住民の人命優勢で動くわよ。ここに異論は認めないから」
パスルには大きなため息を吐かれてしまった。貴族やそれに属する代官、街の管理者の争いは勝手な話ではあるけど、住民を傷つけていい話ではない。




