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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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3ー34 モチベーション

 イールが夕方になっても帰ってこない。まさか結界の外に出たりしてないよな。

 大福も一緒にいるはずなので問題はないと思うけど、こんなに帰りが遅いのは心配だ。


「にゃーん」

「どっしり待ってろと言われても。それよりも夕食? 姉さんはまったく……今日は何が食べたいんですか?」

「にゃーん」


 ミディアムレアのステーキをわさび醤油でですか。最近ガッツリと肉肉しいのは食べてないからありですね。イールも喜びそうだけど、まずはこんな時間まで外で遊んでいるのを叱らないとな。


「ただいまー」


 帰ってきた! 玄関からはイールの笑い声がする。大福とでも喋っているのだろうか?

 まずは頭ごなしに叱るのではなく、遅くなった理由を聞かないと。

 玄関に行くと大福の足を拭くイールとファミレスの神がいた。


「サイゼ様、何してるんですか?」

「ここは私の庭だぞ!」

「それはそうなんですけど」

「サイゼちゃんと遊んでた!」

 

 イールの頭を撫でて、サイゼ様に注意を促す。


「遊ぶのはいいんですけど、こんな時間まではやめてください。それに事前に報連相もお願いします。サイゼ様は子供じゃないんですから、その辺のコントロールはサイゼ様がしてくださいよ」

「はい……」


 思ったよりも素直にしょんぼりしていた。


「イールも誰かと遊ぶときはパパにまず報告だよ」

「はーい」


 イールは話半分に手を洗いに洗面所に行ってしまった。本当にわかっているのだろうか。

 砂場で遊んできたのか、イールだけでなくサイゼ様も埃っぽい。


「イール、サイゼ様と大福と先にお風呂に入ってしまってくれ!」

「はーい」


 洗面所まで声が無事届いたようで、イールからも返答が帰ってきた。

 大福がサイゼ様に声をかけて洗面所に案内をしてくれる。


「にゃーん」

「だから心配ないって言っただろって、姉さん、サイゼ様来てるのわかってたんですか?」

「にゃーん」


 はぐらかされてしまった。こういうサプライズは心配になるので、やめてほしい。

 気を取り直してサイゼ様も増えた分、5人分のステーキを用意する。筋切り、塩胡椒、肉をサッとアルミホイルに包み寝かせる。

 その間にソースと付け合わせを作る。わさび醤油にニンニクソース、あとはイール用に普通の醤油ベースのソースも作った。肉には後がけでお好みに合わせて使ってもらう。

 あとは人参、ジャガイモ、玉ねぎと、いい感じではないだろうか。ご飯かパンか、やっぱりご飯だよね。


 肉がいい感じになる頃にはイール達もお風呂から上がって扇風機で風にあたりながら髪をドライヤーで乾かしているが、大福はそう簡単に乾かないので、姉さんに別で温風の魔法で乾かしてもらっている。


 その間にテーブルにご飯とステーキ、追加で作った味噌汁を並べていく。

 イールが早く食べたいと肉を見つめているが、大福が乾いて揃うまではダメだよと声をかけておく。


 準備が整った後に姉さんの号令で食事が開始になる。


「にゃーん」

「いただきます」

「いただきます! 私は絶対にニンニク! あとバターもちょうだい」


 この神様は女子力が低い選択ではあるがわかっている。肉の上にバターをとかしてニンニクソースをかける。うーん、至高だ!

 イールはナイフとフォークで肉を切ることに苦戦していたが、これも練習と見守る。

 

「それで、サイゼ様はなんで来たんですか? モモもエリゼもいませんけど」

「ここの飯が恋しくなってな、遊びに来ただけだ」

「本当にそれだけなんですか?」

「食後にはデザート、果物も出してくれな!」


 本当に食い物だけが目的できたのかよこの神様。


「そうだ、今度モモに会ったときには蛇を倒してくれてありがとうと言っておいてくれ」

「蛇ですか?」

「聞いてないのか? モモの母の町に行ったときに雷の魔法で退治してくれた。あれは人の悪感情、怨念を使用した呪術で作られた怪物でな。モモが討伐してくれないと大変な被害が出ていた。本来であれば大福の本分ではあるんだが、この結界の外にそんなのを召喚する人間がいるとはなって感じ」

「って感じじゃないですよ。めちゃくちゃ危ないじゃないですか」

「人の悪意とは際限がなくて怖いよな」

「人ごとすぎませんか?」

「大福がフィルターの役割をしているとはいえ、それとは別口で召喚するとか、考えられんもん。世界の管理が行き届いてないなら私の責任だけど、勝手に別口で暴れるのはこの世界に住む人の勝手だし。そこまで見てられないよ。でも退治してくれたことには礼を言っておこうと思って」


 うん。まぁ神様基準では言わんとしてることはわかる。それに雷魔法? 使えるようになったんだ。それも聞いてないし。モモのことだ、心配をかけましとわざと話をしなかったんだろう。

 少し寂しくはあるけど、モモが気をつかってくれたことだ、こっちからわざわざ聞きにいくこともないか。


「わかりました。神様が手伝ってくれてありがとうと言ってたと伝えておきます」

「うむ! 良きにはからえ! 肉の追加も頼もうか!」


 食い意地が愛も変わらず。寝かせておいた肉を少し温め、サイゼ様と大福に追加で出す。

 イールと姉さんは満腹のようで姉さんが食べすぎたイールのお腹をさすっている。可愛い風景だ。


「それにしても白の末裔とか、珍しい者を拾ったな」

「毛並みの色が違うだけじゃないんですか?」

「違うぞ、ハイエルフとかと同じで上位の種族。たまに生まれる選ばれし者? 的な存在だ。自然に生まれる勇者みたいなもんかな」


 そんな意味合いがあったの? アルビノとかそっち系なのかと思ったけど。

 災いを呼ぶとかの言い伝えはなんなんだ? 


「にゃーん」


 必要とされたときに生まれくる存在なのであれば、そのタイミングはすでに世界に混乱が渦巻いてるわけだから、白い存在が出たときに災いが起きるみたいな捉え方をされたんじゃないかってことですか。

 それはなんとも不憫でもあるし、自分達を助けてくれるかもしれない存在を迫害するなんてなんとも言えない。過去に邪魔になったから陥れる思惑とかあったんだろうか。


「にゃーん」

「杏姉さんの言う通り、あんまり深く考えたって答えは出ないしハゲるぞ」

「俺は爺さんもハゲてないんで大丈夫です」

「ハゲの話は置いておいて果物、桃と杏が食べたい!」


 図々しい神様だなぁ。大皿にモモと杏を盛って出すと、お腹いっぱいとか言っていた姉さんとイールもパクつき始める。デザートは別腹ってやつか。


「これこれ! うまー」

「果物だってそこそこ買取に回してますよね? そっちでも食べれるじゃないですか」

「これがいくらすると思っている!」


 モモが買取単価が500円からと非常に高額で、一回の収穫で100前後は採れるものではあるけど、姉さんや大福も好きだし、モモにも持たせたりと、そこまで大量に売却できてるわけではないし、買うとなれば神様の世界では高いのかな? 社割とかないわけ? 杏も単価としては少し下がるけど似たり寄ったりの価格だ。


「1つ、1000円くらいですか?」

「日本の基準でも4000円はする」

「高いっすね」

「でしょー」


 だからわざわざ、ここまで来て食べに来てるわけですか?

 金でも取ってやろうかな。

 美味そうに食べるサイゼ様をみてれば、まぁいいかって気持ちにはなってくる。


 果樹園の拡大や若葉のおかげでお金の面は不安が徐々になくなってきている。後は年数が経過すればお金は溜まる一方になって畑とかもサボるようになったりすのかな? 自分で作る野菜は美味いと感じれるしそれはないか。


 あとはサイゼ様とかもそうだけど、神様達の世界で喜んでくれる人がいるなら、できるだけ続けていこう。



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