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家庭菜園物語  作者: コンビニ
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11 別れと出会い

 翌朝、さくらさんはいつもはグータラ寝ている時間に起きて、来た時と同様の軽装で家の外へと出る。

 それを見送るために、家族一同で玄関前に立つ。


「なんか唐突ですね。もう少し居てくれてもいいんですよ?」

「なんだ、寂しいのか? 普段は働けと小うるさいくせに」

「まぁ、そうなんですけど。なんだかんだでさくらさんは俺達のことを見守っていてくれたのかなって」

「どうだかな、ただゴロゴロしていただけかもしれないぞ」

「にゃーん」


 姉さんがお前は1つの国をまとめ上げて、平和だったのはせいぜい300年だったと言ったが、私がいた世界では近年でも50から100年の間で世界的な大きな戦争がったあり、もっと遡れば戦争続きの時代もあった。

 お前の感覚ではたかだか300年かもしれないが、誇っていい。300年も平和を維持してきたのだってさくらさんにそんな設定あったんっすか、姉さん。

 

「杏殿」

「にゃーん」


 長く生きていれば不満もたまる。信頼できる人間も直ぐに死ぬ。疲れた時は休め、でも託されたものがあるのであればできる範囲でいいやってみろ。もしダメだったら他人を頼れ、頼りないが弟や私もいると、どもう頼りない弟ですが。


「ありがとう」

「にゃーん」


 さくらさんは地面に膝をついて、姉さんの片足を手に取り額に当てる。その時間は10秒だったのか1分だったのか。

 最後に俺と大福、モモの頭を撫でると行ってしまった。

 さくらさんの姿が森に消えたタイミングで姉さんに聞いてみる。


「俺がいない間にさくらさんと色々話してたんですね。知らない話と属性と設定盛り沢山だったんですが」

「にゃーん」


 深く話すつもりはないのか、いつもの縁側に移動して、ゴロンと寝転ぶと光を浴びながら目を瞑ってしまう。

 姉さんって何者なんだろうか。なんか長年生きてきたはずのさくらさんも子供扱いだし、猫又? でもあれは尻尾が2本のはずだし、今は4本だしな。

 猫又以上に長く生きている転生猫だったのだろうか。まぁ聞いても答えてくれないだろうし、俺にとっては親愛なる姉であることに違いはない。


 ★★★


 さくらさんがいなくなって1ヶ月。俺の異世界生活は2ヶ月に入った。

 7月になって日差しが強くなり、俺の肌の色も健康的な褐色になり始めている。


 検証結果についてだが。川での釣り道具、漁道具のアンロック、石材のアンロックがあったが、ここについては木材や農園を管理するので手一杯で手を出し切れていない。

 井戸水についてだが、これは予想の通りでこっちの水を使用することで作物の品質がまばらにではあるが上がった。安定的に上げるのであればあとは肥料の活用となってくるが、そこまで品質を求めているわけでは現状ないので保留している。


 あとは木工用品についてだが、これはお使いクエストでもないが買取要望が追加された。

 1000円と木材を出して作ってもらったスプーンについては買取がなんと1000円のままだったのだ。ツヤツヤの立派なスプーンがお値段据え置きの1000円である、日本で買えば1本1000円くらいはしそうなのになだ。

 木材はこっち持ちなのに買取価格が上がらないのはなぜなのかと思った翌日には買取要望として木のスプーン5本セット4000円である。

 その後にも3メートルの梯子が5000円などちょこちょこ要望が上がっているが、こちらも家のアップグレードなどやることが多いので進んではいない。


「それじゃあ押すぞ」

「にゃーん」


 姉さんに早くやれと言うわれて家のアップグレードボタンを押す。完了時間12時間後と表示がされる。

 それと同時に小さい子供? おじさんが現れて全員家の外に出されてしまった。 あっと言う間に家に足場が組まれて暗幕で隠されてしまう。


「こうんな感じのシステムなのか。時間はかかると思ってたから昼飯も別に弁当を用意しておいてよかったよ」

「妖精さんですかね? 凄いです」


 1ヶ月経過してモモも年相応の体重になってきた。ますます可愛くなってしまって将来、嫁に出す時に相応しい相手がいるか心配になってしまう。

 ただモモとの距離感はどもう縮まる気配はない。前はどんな生活をしてたとかも中々聞けていない。


 午前中は井戸から俺が水を汲み上げて、大きめの桶に水を移し、桃がそれをじょうろに入れてどんどんかけていく。

 余った時間で今度は木の伐採だ。筋肉痛を繰り返してきたおかげで、筋肉も増え、コツもわかってきて初回こそ1本切るのに半日以上かかっていたが今では5時間ほどで切れるようになってきた。


 家のアップグレードが終わったら次は木の加工場を作る予定だ。木材にするのに毎回金がかかるのはいただけない。伐採なら自分で頑張ればやれないかとこはないが、木材への加工は鋸などを購入して挑戦してみたが時間などを考えても割に合わなかった。


 木を1本切り終えて、買取用の箱を持ち上げて近づけると吸い込んでくれる。これを発見した時は助かったと思った。

 自分で運ぶなら更に木を細かく切らないといけない。アドバイスをくれた姉さんには感謝である。それでも外用の買取はこでかいので大きめの台車を購入することにはなってしまった。


 「そろそろお昼にしようか」

「はい!」


 木陰で、お弁当を広げる。おにぎりにウィンナーに卵焼き、ポテトサラダ、最近では少しお金に余裕ができたのでウィンナーや卵なんてのも買ってみた。

 いずれは鶏小屋を作って、卵も買う必要がない環境を作りたいものだ。ウィンナーは流石に厳しいだろうか?

 肉の加工所もあるし、無理ってことはないかな。


 ご飯の時間かと、大福が駆け寄ってくる。普通の犬とは違うのであげて問題ないかもしれないが念のためにあげないようにはしている。

 もらえないとわかっているはずなのに笑顔で駆け寄ってこられると少し罪悪感がある。大福だけは食べる量も多いのでいまだに自給自足の生活になっている。


「大福様に私の分のウィンナーをあげてもいいでしょうか?」

「うーん、1本だけだよ」


 試しに挙げてみてもいいか。大福はモモの後ろに回ると、ソファー代わりになって顔だけ前に出してウィンナーを咀嚼し始める。

 可愛いが2倍でやばい可愛い。姉さんはお気に入りの縁側を追い出されてご機嫌斜めのまま木の上でふて寝をしていた。

 野良仕事の後に昼下がりに妹と犬とお昼ご飯を食べるなんて、日本にいた時には考えられなかったな。


「俺は今幸せだ」


 モモの頭を撫で回した後に地面に横になる。モモは大福に抱きつきながら寝息を立てる。そこに姉さんがやってきて大福とモモの間に挟まる。暖かさそうだ。

 モモと昼寝後には木でクラフトしたフリスビーやボールで大福とモモ遊び、夕暮れ時となれば家に掛かっていて暗幕が降ろされる。


「完成したのかな? 行ってみようか」


 家をぐるっと回ってみると平家のままだが少し拡張され綺麗になっている。


「わん!」

「大福、どこいくんだよ?」


 大福は行ってくるね! とでも言ったのだろうか。これから新居を見ると言うのにどこかに行ってしまった。

 それでは気を取り直してお宅拝見と中に入ってみると、ワンルームだった部屋に廊下が誕生している。4つの扉があり、1つはトイレのマークがある。

 正面の扉を開けるとリビングとキッチンとなっていた。6畳の和室にダインニング側がフローリングとなっていて合計で10畳くらいはありそうだ。食器棚やテーブルを置いたりはできるだろう。和室側には縁側がくっついてて日当たりも良さそう。


「広くなってます」

「そうだな。別の部屋も見てみよう」


 玄関から入って右は6畳の和室だった。ここが寝室となるのかな? この流れでいけば、左側の2つはトイレと浴室か。

 左側は洗濯機と洗面所があり、浴室の扉もある。


「今回は狭いけど湯船があるな」

「贅沢ですね」


 今回はシャワーのみの時と違い、導線が低いのでモモも一人でお風呂に入れるだろう。


「お風呂は入ったことあるか?」

「ここに来るまでは体を布で拭くくらいでした」


 外の世界の生活って大変なんだな。最近は以前の生活についても少しづつだけど、怯えることなく話してくれるようになった。トラウマが薄れてきてるのだろうか。


「1LDKって感じだな。あと1つ上げれば個室が持てるかもしれない。何もない部屋を寝室にしよう。キッチンがあるところがみんなでゆっくりしたりご飯を食べるスペースだかね」

「はい!」


 今日はモモにお風呂の入り方を教えてあげないとな。

 それに毎回ちゃぶ台を寄せなくても布団を2枚敷けるし、大福用のベットを購入してもいいな。布団に混ざってくるけどそろそろ暑いし、狭い。


「わん! わん!」


 また大福が騒がしい。あいつは騒がしいのはデフォルトだけど、夕暮れ時にはあまり出かけることはない。

 なんだろう嫌な予感がする。


「どうした大福−−」

「−−わん!」


 大福が嫁を連れてきました! とでもまた言っているんだろうか。

 犬というよりは狼のような顔でモフモフの二足歩行の人が4名いた。身長として2メートル近くはあるだろうか、デカくて迫力がある。 男か女かも俺の目からは判別ができないんだけど。

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