3ー23 会議
夏休みが終わり、学校に戻って数ヶ月、11月になった頃にはイールが話始めたとお父さんとお姉ちゃんから喜びの手紙があった。ただお父さんはパパと呼んでくれなくて悲しいと愚痴もあったりした。
微笑ましい手紙を、サイラ君とリリアちゃん、その他のクラブに所属する生徒達が畑のお世話をする横で、拾ってきた狼さんと兎さんをモフリナがなら読んでいると、ソード家の兄妹が歩いてくるのが見えた。逃げようかな。
恐縮しているリリアちゃんに話しかけるとなにやら手紙を渡し、軽く私に会釈すると去って行った。
私が個人的に嫌っていることをわかってか、絶妙な距離感を保っているのも、文句をつけられず悔しい。
「モモちゃん、お茶会のお誘いなんだけど」
夏休み前に1回やってからだから久しぶりではある。他のその他連中は2日に1回のペースで手紙を送ってくるのでゴミが溜まっていくいっぽうだ。
「ふーん、1週間後。予定がポッカリと空いてるタイミング。無駄に有能よねー調査までしてさ」
「無駄にってことないと思うよ。ちゃんと有能な方だよ」
「リリアちゃんは随分肩を持つじゃない? そっかー、まぁまぁイケメンだもんね」
「そんなんじゃないよ! それに私とルーク様だと爵位だって差があり過ぎるし」
全くもってプレイボーイだ。私に近づくことを利用してリリアちゃんを泣かせるようなことがあれば許さないけど。
参加者のリストもある。大阪からカイラとカピパラ族のリール君、ビクドからはパスルちゃんか。
豪華なメンバーだ。各国の有力者が集まっている、単純なお茶会ではなさそう。
「リリアちゃんも一緒に来てくれるんだよね?」
「こんな凄いメンバーの中に私がいるのはおかしいよ」
「じゃあ行かない」
「わかったから! 行くから!」
「それじゃあ、またルークにたっぷり恩着せがましく話てきて」
「そんなことしないよ」
夏休みから時間も経過しているし、私がやったことも話を掴み、整理が終わった頃なのかな?
学校では自由にしていたいけど、今回は大阪やビクド、王国にも迷惑をかけたのは確かだし、参加しないわけには行かないよねぇ。
お茶会は農業クラブの一角に新しく作成したガラスばりの薬草園の中で開催されることになった。
11月中旬で最北端のこの地だと既に雪がチラチラと顔を見せており、普通に外でお茶会なんてしたら寒いけど、この薬草園は温度も保たれてて過ごしやすい。眠くなってくる。
「モモちゃん、紅茶淹れたよ」
「ありがとう、リリアちゃん」
うーん。リリアちゃんの淹れた紅茶は最高に美味しい。妖精印の茶葉ってのもあるけどリリアちゃんが淹れると2倍増しで美味しい。
リリアちゃんとまったりしていると、時間通りに参加者全員が集まり、お茶会が開始される。
「流石はモモ様が持ってきていただいたお茶です! 美味しい! モモ様の味がします!」
「しないよ」
狂信者と言っていいのか。パスルちゃん特に私のことを崇拝してくる。私に関すること以外は常識人で聖女と呼んで遜色ないくらい礼儀正しく優秀な子なのに。とても残念な子だ
カイラはカイラなのでクッキーをずっと食べている。王坂関連で話を主導するのはカピパラ族のリール君になるだろう。そして今回の主催者であるソード家の面々。
当たり障りのない話から、夏休み中の話をルークが切り出してきた。
「夏休み中に王国内に寄っていただいたようで、話はお伺いしました。モモ様が仰った通り今は食糧難で国内も弱っていますから、村が多くても結局作物など税収も得られませんし、統廃合と農奴の売却を進めています」
「それって私の言葉を借りてあんたが勝手に進めてるだけでしょ。村長を言いくるめるために話だけよ」
村長には同じような話をしてどうせ統廃合になるなら今のうちに農奴を売ってお金をもらっておいた方がいいみたいな話をした。
国内にはもう余裕もないし、余裕がある王坂やビクドに農奴を流す方向にしているんだろう。最終的には王国内は戦力が減ってしまうけどいいのだろうか?
「ハハ、でもそんなに農奴を出してしまっては戦力が減ってしまうんではないですか?」
「王国内部を統治するには十分な人手はありますから」
「ふーん、外に向けての戦争するだけの人員確保が難しくなるんじゃなくて?」
リール君とパルスちゃんが畳み掛けに言っているが、共存共栄を目指したいとか、今は戦争なんてする気は全くない。農奴を解放したのも建前としては統廃合の理由もあるが、戦争をしないことを強調したかったみたいな話をしている。
ついでに多くの人員を受け入れることができるビクドや大阪が羨ましいみたいな見え見えの褒め言葉まで並べてくる。実に胡散臭い。でも農奴が大幅に減って人手が減れば馬鹿な貴族でもないと戦争をしたいだなんて言い出す人も減るのかもしれない。
「ここだけの話、貴族の領地も整理する話も出てるんです」
リリアちゃんが青くなってしまっている。吹けば飛ぶような家らしいし、整理される筆頭なのかもしれない。でもそんなことをして貴族から反発はないのだろうか。
そんな王国内の話から始まり、他国の食糧事情について話が進んでいく。どこも食糧事情はカツカツと言いながら、実際は王坂、ビクドは改善傾向にある。
そんなことはソード家の者なら知ってて当然の話ではあるが、今は知らない体で協力をしたい、戦争する気はないから一緒に頑張ろうみたいな話を推し進めてくる。
今回は王国内のことを遠回しに情報を流して、変わり始めてますよアピールをする会で私にもお父さん経由で種の提供などを求めているって感じだろうか。帝国の人を呼ばなかったのも嫌らしさを感じる。
もっと直接的に簡潔に話せばいいのに。建前というのは面倒なものだ。
ルークからは王様直轄領での農地作成の支援の話なんかも出ている。でも今回の統廃合で国内が健全化されれば、貴族が持っている権力も減って王様の信頼であったり権力も少しは戻るだろうか。
頭が痛くなってくる。小難しい話はもっと上のフェーズで進めてほしいのだけど。
そういう人達が集まりずらいからの代理会議のようなものなんだろうか。お父さんにも簡潔にまとめた内容を手紙出さないとなぁ。




