3ー12 気になるんです
「にゃーん」
「気持ちいいですねー、姉さん」
春、桜の木でもあれば春感がましていいんだけどと思っていたが、エリゼちゃんがせっせと世話してくれている花壇のおかげで春の陽気をさらに満喫できている。
今回植えたのは色とりどりのチューリップ。妖精王がチューリップの中に入って、美味い、美味いと興奮ぎみに騒いでいる。
来年、エリゼちゃんがいなくなった後のことを考えると俺の仕事量がエグいことになりそうだ。
「姉さん、最近気になることがあるんですよ」
「にゃーん」
「エリゼちゃんの胸なんですけどね」
「にゃーん」
「全然いやらしい意味ではないんです。なんか急に胸が大きくなってませんか?」
本当にいやらしい気持ちはないんだよ。ある日から急にエリゼちゃんの胸がバインバインまではいかないけど、膨らんでる気がするんだよね。ナイーブな話だし、突然声をかけるわけにいかないから姉さんにも確認を取ってみた。
「にゃーん」
「サラシですか?」
「にゃーん」
さくらさんに教わって、モモもエリゼちゃんも胸に巻いていたらしい。
しまったなぁ。これだから女性経験のない男は困るよ。下着関連について思い至っていなかった、女の子特有のことはさくらさんに任せっきりだったもんな。ってことはだよ? モモは学校に行ってもサラシを巻いてるのか?
さくらさんもモモもまぁ、サラシでも問題ないか。
しかし、モモは学校に行ってるし、下着を女の子同士で見せることもあるかもしれない。洗濯してる時もシンプルな下着しか見たことなかった気がするけど、可愛い下着を送ってあげるべきか? いやいや、父親が下着送るってキモくないかこれ。
「姉さん、選んでもらえませんか?」
「にゃーん」
「そこは猫のふりをしなくてもいいじゃないですかー。そうか、これをフックにエリゼちゃんの下着ついでにモモのも選んでもらうってのはありじゃないかな」
「わん!」
大福よ、ご飯はまだだよ。
夕食後に満を持してエリゼちゃんに話してみるか、外に出るとなれば必要になってくるだろうし。
今日の晩御飯はオムライスにでもしようかな。俺はトロトロの卵にするようは固めのしっかりとした卵に包まれたオムライスの方が好きなんだよね。これは決してトロトロの卵が作れないからじゃないんだからね!
夕食のオムライスを食べた後、ハーブティーを飲んで今でまったりとした時間が流れる。
エリゼちゃんは大福を枕にお腹をさすっている。年頃の乙女がだらしないなぁ。お母さん、将来が不安よ。
「エリゼちゃん、話があるんだ」
俺の緊張感が伝わったのか、起き上がって正座をする、エリゼちゃん。
やめてよ、こんな雰囲気で下着の話を持ち出すの嫌なんだけど。
「その、下着のことなんだけどね」
「下着?」
「あのね、セクハラとかではないんだけどさ。胸とかさ、そろそろ準備した方がいいと思うんだ」
「ふーん」
まさかの無関心!
「最近は胸に布巻かなくなったのかな?」
「うん、キツくなってきちゃって。外に出るならまだしも、家族ならいいかなって」
いや、家族認定は嬉しい反面、家族であってもさ、女の子としてさ!
「なるほどね、それなら今回を機会に色々用意しようか」
「お金かかるんじゃないの?」
「そこまで心配しなくても大丈夫だよ! パパに任せておきなさい!」
当然、下着選びなんて手伝えないので、買い物する画面を表示させて選んでもらう。
「可愛いの選ぶといいよ」
「可愛い? ってなに?」
そんな真理みたいなことを、聞かないでほしい。ほら、なんかフリフリしてそれとか可愛いんじゃないかな? ん? 男物と比べるとめっちゃ高くない? は? 何これ。お金大丈夫かな。
「サイズってどうやって測るの?」
「俺に聞かれても、ほら、ここに測り方が書いてらるから、自分で測ってごらん」
「面倒だからこのままでもいいのに」
女の子ってこういうキラキラしたの選ぶときってテンション上がるもんじゃないの?
喜ぶところか、め面倒くさいですか。女の子らしくというのは押しつけになってしまうかもしれないけど、せめてもう少しくらいさ。
「可愛い? 可愛いの?」
ブツブツと何かを呟きながらモモも分も含めて下着のセットを購入していく。モモのサイズはわからないけどとりあえず一番小さいサイズでよいのではないかということで購入を進めた。
エリゼちゃんがモモ宛に手紙を添えて翌日には火の鶏運送に運んでもらい、ついでにハーブティーの追加や野菜なんかをパパゾンと記載した箱に詰めてお願いをした。
「パパゾンってなに?」
「俺の世界では、親が子供に支援物資を送る時にこういうのが流行ってるんだよ」
モモは喜んでくれるだろうか。主に下着。
その辺、エリゼちゃんと同じく無頓着だからなー。友達から女の子らしい、良い影響を受けたりするといいんだけど。
どうしてもここにはガサツな連中しかいないからなぁ。
「にゃーん」
こういう時だけ、乙女アピールはやめてください!




