第5話 シンシア様は僕の物だ。
夜の静かな空気が肺を一杯に満たした。手に持つランタンの光が俺とイレイスの顔を照らす。静寂が僅かに心苦しくなってきた頃、イレイスがぽつりと声を上げた。
「親子丼、美味かった。一応確認しておくけど、君は日本からの転生者でいいかい?」
「えーと……まぁ」
俺は正確には『転移者』だが、訂正は必要ないか。
「そうか。改めて、僕はイレイス・マキアージュ。この国ではシンシア・オルデン様に使える騎士を生業としている。そしてご想像の通り、僕は日本人の転生者だ」
「俺の容姿や、親子丼への反応で察しがついた」
「ははっ、そりゃそうか」
フサフサの前髪をばっと掻き上げる。一々挙動がイケメンな奴だ。キラリと光る白い歯が眩いぜ。
「レイは今後もここで働くつもりなのかい?」
「いや、あくまで一時的な策だ。これで問題なく成長は出来ている。そうだな、あと一月もあれば準備は整う」
「なら急ぐといいよ」
イレイスはひらりと手を挙げて去っていく。
「急ぐって……なんで?」
「異世界には日本の法律が通用しない。弱肉強食の世界だ。力ある者が正義の国で悠長に事を構えていたら、自分の大切な物まで失ってしまうかもしれない」
弱肉強食の世界、か。
「これは忠告だ、レイ。この世界での先輩の助言でもある。どう捉え、どう生かすかは君次第さ」
「分かった。参考にするよ」
「ああそれと」
「まだ何か?」
人差し指を立てて、忘れ事を口にした。
「シンシア様は僕の物だ」
なっ、なんだと……!
「言ってろ。すぐに奪い返してやる」
「くくっ、やはり君もその口か。その時は真っ向から、直々にこの僕がお出迎えしてあげよう」
「ああ、俺がお前と同じ土俵に上がれた暁にな」
ピロン。好感度が5に上がった。
───スキル『挑発』を獲得しました。
恋に障害は付き物。
いいだろう、あのいけ好かない男をギャフンと言わせて、シンシアを見事華麗に奪い去ってみせよう。
それこそが俺なりの異世界攻略術である。
異世界準備編 了
名前:月乃 玲
ギルド:無所属
ユニークスキル:【魅力支配】
スキル:『言語理解』G『鑑定眼』G『交渉術』G『礼儀作法』G『挑発』G
第一章終了です。
次回からは、冒険章開幕&ヒロイン追加。
白熱したバトルをお楽しみください。
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