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第3話 惚れさせてみせる。

 「あははっ、まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて、あんなの初めて見たわ!」


 居酒屋の中。俺は彼女の奢りで飯を食っていた。彼女は酒が回ったのか少々顔を赤らめながら極めて上機嫌に話している。


 無一文な身からすれば、飯にありつけただけでも感謝なのだがいきなり連行された時は流石に肝が冷えた。


 過干渉で牢屋にぶち込まれるとか?

 手伝ったのに不憫だな、なんて考えていた。


「あの男、『人類種(ヒューマン)』の女性を中心に狙う凶悪人で、逃げ足が早いものだから困ってたのよ」

「はぁ、そうなんですか」


 異世界の食事は悪くなかった。多分俺に気を使って高めの料理店に足を運んだといった具合だ。木質のカウンターや椅子。どこからか吹き込む冷気も含め、空調管理も抜群。


 いい店だ。


「ああ、ここ? 私のお気に入りなの」


 俺が店内を眺めていると彼女が横から口を挟んだ。


「雰囲気がオシャレだし、店長はちょっと気難しいけど凄く優しいから。特別な時はここに」


「気難しいは余計だ」と強面の店主は顔を顰める。カウンターの上でグラスを滑らせた。芳醇なワインの香り。


「今日は私の奢りだから。遠慮なく食べて」

「ありがとうございます……」


 人の金で食う飯ウメーー!!!

 と踊りたくなる気分をグッと堪えた。


「例の『狼人種(ウルフ)』。女性だけを狙うって言ってましたけど、具体的に何をしていたんですか」

「ああ、下着ドロ。えっちいのよアイツ」

「しょうもな」


 俺は思わず頭を抱える。


 あの剣幕であの暴動を起こした奴が下着ドロとは。

 どの世界でも、変態はいるものだな。


 俺はふと彼女の頭の上に目を向けた。

 示す数字は"12"。これまでで最高の数値。


 こうして話す間にも、数値は上昇していた。


「どうしたの、私の顔に何か付いてる?」

「いや、別に」


 付いてるのは君の顔じゃなくてその上だ。

 俺が出会った瞬間の事を思い出した。


 0→10へと急激に数値が増えた。


 ───スキル『洞察眼』を獲得しました。

 ───スキル『交渉術』を獲得しました。


 二つのスキルを同時獲得したのだ。


 これは偶然……か?


  しかしスキルとは便利な物だ。

『言語理解』は常時発動のようだが、任意発動するタイプは『狼人種(ウルフ)』のように口にする事がトリガーか。


 試してみよう。


「───スキル『洞察眼』」


【ステータス】

 名前:シンシア・オルデン

 ギルド名:《王国要塞(ロイヤルフォート)


「シンシア・オルデン……?」


 シンシアは凄く驚いていた。当たり前だ、彼女はまだ俺に名乗っていない。なのに俺は彼女の名前を知っている。


 ガタッと立ち上がり、俺の口を急いで塞いだ。


「その名前をどこで……」

「ああ、えっと」


 地雷を踏んだか?

 しまったな、どう言い訳するのが正解なんだ。


「待って。確かその前に、スキル『洞察眼』って───」

「もしかして勝手に見るのはマナー違反でしたか? 」

「いいえ、でも驚いた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ()()()()()

 興味深いな。もう少し情報を引き出したい。


 シンシアは声を弾ませて俺に向き直った。


「貴方、名前は?」

「俺は……」


 俺は咄嗟に脳をフル回転させる。

 記憶のない俺の名前、それを調べる方法だ。


「……!」


 そうだ。


 スキル『洞察眼』は対象の名前と所属するギルド名を明らかにする事が出来る。ならば()()()()()()()()()()()()()()()()


「スキル『洞察眼』」


【ステータス】

 名前:月乃 玲

 ギルド:無所属

 ユニークスキル:【魅力支配(ヴィーナス)

 スキル:『言語理解』G『洞察眼』G『交渉術』G


 ビンゴだ。


「俺の名前はレイ」

「レイ、聞いた事ない名ね。その黒い髪に黒い目。アステミシアの出身では無さそうね。旅人なの?」

「ええ」


 俺の世間知らずと変わった容姿に最もらしい理由を付けるにはこれしか無い。俺は嘘をついた。


「ちなみに『洞察眼』の他には何が使えるの?」

「『言語理解』と『交渉術』になってます。スキルの横にGって文字が書かれているのですが……これは?」

「熟練度ね。『洞察眼』なら、単純に見られる情報量に違いが出てくる。私を"見ても"殆ど分からなかったでしょ」


 確かに【ステータス】と表示する割には、記載内容が少なすぎると感じていたところだ。今わかるのは、名前と所属ギルド名。


「タップすると、能力の詳細が見られるわ」


 ・『言語理解』

 多言語を理解できる。

 熟練度に応じて、《古代文字》《神聖文字》も解読可能。


 ・『洞察眼』

 動物が対象。【ステータス】を確認できる。

 熟練度に応じて、表示数が増える。


 ・『交渉術』

 言葉巧みに交渉できる。

 熟練度に応じて、金額交渉が上手くなる。


 そして最後にユニークスキル【魅力支配(ヴィーナス)】。

 使い勝手がかなり良さそうなスキルだ。


「『洞察眼』は他人の力量を把握する時に凄く便利になる。でもあまり人に使えるのを言わない事ね。変に嫉妬や恨みも買う事になるから」

「なるほど……」


 人の中身を覗くようなスキルだからな。

 無遠慮に覗くのは、控えておこう。


「頑張って。もし、ギルドに入って冒険の旅に出る時はきっと貴方を助けてあげられると思うから、いつでも声をかけてね」


 時間を気にして、慌てて席を立つ。


「っとと、そろそろ行かないと。レイ、会えて楽しかったわ。店長さんもご馳走様。また来るわ」


 お金を置いて席を立つ。それも、ちゃんと二人分。

 手を振って立ち去るのを俺は見届けた。


 仕事を抜けてまで俺に尽くしてくれるとは。


「いい女だろう?」


 びっくりした。

 店長がいきなり話しかけてきた。


 怖ぇんだよ。図体がデカくて岩かと思ったぞ。


「まだ若いのに、あれで大ギルド《王国要塞(ロイヤルフォート)》の騎士長を務めているんだから立派だよ」


 この都市の治安が良いのは、きっと彼女のおかげだ。犯罪を未然に防ぎ、迅速に対処する術を持っている。


 店長の名前も調べておこうか。


「スキル『洞察眼』」


【ステータス】

 名前:ランドルフ・ブラックウッド

 ギルド:《月華の盃(オリオン)


 ランドルフというのか。

 よし、ならコイツで少し実験してみよう。


「ランドルフは凄い格好いいな」


 数字が変動した。0→1に上昇。


「なんだ、お前そっちの気があるのか」

「違うって。あくまで男としての意味だ」

「紛らわしい言い方をするな、気色悪い。だが俺に怖気付かず話すその度胸は買ってやろう」


 1→2に上昇。


「ふはは、さっきのは冗談だ。オッサン」

「なんだと、クソガキ……ッ」


 2→1に減少。


 なるほど。やはりそうか。

 俺は口を隠しながら笑いを堪えた。


 人の上に見える謎の数値。

 これは"好感度"だ。



 人助けは、好感度を上げる手段の一つに過ぎない。

 会話する事も、僅かながら増減はする。


魅力支配(ヴィーナス)】の効果は二つある。

 ①好感度の数値を閲覧出来る。

 ②好感度に応じてスキルを獲得出来る。



 ってところか?

 ククク……面白いスキルだ。


 さあ、攻略を始めようか。


「スキル『交渉術』」



「そうだ。少しの間、俺をここで働かせてくれないか?」


 ふと、彼女が出ていったドアの方を見る。


「またあの子に会う為か?」

「それもあるけど……」


 俺の正直な悩みを打ち明けた。


「実は金も住む場所もないんだ」

「働く代わりに、金と場所を提供しろと?」

「ああ。頼む」

「タダでとはいかんな」

「ならこういうのはどうだ?」


 ランドルフに目掛けて、好戦的な視線を送る。


「この店の新メニューを考えよう」

「ほう、自信があるのか?」

「ああ、勿論だ。期待してくれ」

「……そこまで言うなら、暫く試験採用してやるか」

「よし、決まりだ」


 スキル『交渉術』、使えるじゃあないか。


 転生者や転移者が最初に武器となるのは、"知識"だ。

 現代知識無双にうって付けなのは、料理。


 現時点で戦闘力のない俺でも十分役立てる。


 □■□


 夜。


 バタン、部屋の戸を閉める。

 契約により、俺に貸し与えられた部屋である。


 木造の2階。狭いが物置や馬小屋よりマシだ。

 質は悪いがベッドもある。文句は言えない。


 俺はベッドにダイブして目を閉じた。


 計画では、ここで資金貯めと好感度稼ぎ。

 一月もしたら自立して冒険でも始めようか。


 意識がすっと落ち、眠気が襲ってくる。


 シンシア・オルデン。

 この世界で会った初めてのヒロイン。


 俺はいつか必ず彼女を───。


()()()()()()()()


 ふふ、ふはははは……!


 その夜中、俺の高笑いが響き渡った。

名前:月乃 玲

ギルド:無所属

ユニークスキル:【魅力支配(ヴィーナス)

スキル:『言語理解』G『洞察眼』G『交渉術』G

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