第19話 ふはは、敵がゴミのようだ。
『幽霊』に追われ続ける恐怖。
満身創痍での全力疾走は、寧ろ精神に堪えた。
片やは相手は実体がなく、壁を容易にすり抜ける。
ハンデを背負った状態でチートキャラと鬼ごっこ。
「全滅」という言葉が脳裏をチラつく。
「……っ、ノエル。私を置いて行って」
「だめ。そんなの許さない」
シャルロットも思った以上の深手を負っている。
息は浅く、今にも死にそうだ。
傷は魔法で塞いである。
ただ血がきっと足りていないんだ。
魔法で治癒しても、失った血までは戻らない。
俺もルナもそろそろ限界だ。
「地上まで間に合わない……追いつかれる」
ノエルがぎりりと歯嚙みする。
一階層は思ったより広い。
足が棒のように重い。
終わった。無理だ。
もう逃げられない。
「オォォ……」
ボスを倒したのに、このザマか。
俺も大したことないな。
「主」
ルナ。なんだ、俺に近付いて。
ぎゅっと、軽い抱擁を交わす。
「力を貸してください、主」
「力を貸すって言っても……こんなの」
ルナは目に涙を浮かべながら、唇を噛んだ。
「私の知っている主は、こんな所で諦めたりしません。こんな所で、皆を全滅させたりしません。ありとあらゆる物を使ってでも生き延びようとするはずです。そんな意地汚い主が好きなんです」
意地汚い、か。一言余計だろう。
「主、お願いします」
女にここまで言われて俺は恥ずかしくないのか?
ルナの背中をきつく抱き寄せる。
温かい。この温もりを俺は失うのか。
断じて否、俺はまだ諦めてなどいない。
諦めるような男ではない!
「ふふ……ふはは」
「主?」
そうだ。そうじゃないか。
俺は何故、逃げるなんて考えているんだ。
俺が、逃げる?
馬鹿にしているのか?
「二人共、ここで全滅したくはないだろう」
「急にどうしたの……?」
豹変した俺に、ノエルが怪訝な顔をした。
「俺の指示に従え」
『鑑定眼』ッッ!!!
【ステータス】
名前:レイ レベル:7
HP208/285 MP130/130
ギルド:無所属
ユニークスキル:【魅力支配】
スキル:『言語理解』D『鑑定眼』E『交渉術』E『礼儀作法』F『剣術』F『挑発』F『料理』G『幻惑』F『隠密行動』G『体術』G『並列思考』G『火魔法』G
【ステータス】
名前:ルナ レベル:15
HP142/180 MP550/550
ギルド:無所属
ユニークスキル:【勇猛果敢】
スキル:『隠密行動』E『剣術』D『体術』E『冷静』E『軽業』E『料理』F『並列思考』F『瞑想』F『敵感知』F『光魔法』G
【ステータス】
名前:シャルロット レベル:23
HP289/560 MP400/420
称号:【鬼狩り】
ギルド:《北極星》
ユニークスキル:【一致団結】
スキル:『先見』C『剣術』D『逆境』C『加速』E『痛覚耐性』G『火魔法』E
【ステータス】
名前:ノエル レベル:22
HP211/220 MP620/620
称号:【鬼狩り】
ギルド:《北極星》
ユニークスキル:【明鏡止水】
スキル:『遠視』E『暗視』F『蓄積』B『麻痺耐性』G『土魔法』C『光魔法』D
『幽霊』
第三階層に生息。アストラル系。群れで行動する。
スキル『透過』『憑依』『恐慌』
『火属性・光属性』が苦手。影が弱点。
これらの情報を全て頭に叩き込め。全員で生き残る方法を考えろ。幸い先程のボス戦で『鑑定眼』のスキルレベルが上がった事で、情報量が格段に増えている。
スキル『並列思考』ッ。
思考が僅かにクリアになる。
状況を俯瞰出来た。
ルナの頭を撫でる。ルナは片目を瞑りながら、大人しく撫でられ続けた。
案外可愛いところがあるじゃないか。
全く。こいつには助けてもらってばっかりだな。
「ふにゃぁ……」
「こらルナ。気を引き締めろ」
「にゃんでっ、これは主のせいで!」
「ふふっ、二人共仲いいね」
「ん。羨ましい」
よし。全員落ち着いたな。
「これから反撃に転ずる」
ルナは「やっと来たか」と好戦的な笑みを。逆にシャルロットとノエルは「信じられない」というような目で俺を見ていた。
「心配するな。俺が勝たせてやる」
さあ、攻略を始めようか。
「ノエルは引き続きシャルロットの治癒を。ルナは魔力を温存しつつ、退路を作れ。俺はその間足止めに徹する。敵を引き付けたら、一気に魔法を展開するんだ」
片手に炎が轟ッ、と熾る。
ふはは、これが魔法か。
本来なら魔法の発動条件や回数、射程距離なんかを実験したいところだが、生憎と今はその時間がない。奇跡の力もここでは一つのツールだな。
今は生き残る為の生命線だ。
存分に活用させてもらう。
『火魔法』G
使用可能魔法
『火球』
【使用魔力】G【威力】F【射程】E
「魔法『火球』」
初級魔法だが、弱点属性だ。
『幽霊』は魔法を避けて追随する。
ふはは、馬鹿め。
誘導されているとも知らずに。
「こっち、治癒終わった」
「お待たせ、もう大丈夫だから」
「主。前からも敵が来ます」
しまった。囲まれていたか。
仕方ない。ここは二人ずつで応対しよう。
「ルナとノエルは魔法展開用意」
「「了解」」
魔力が収束していく。『幽霊』は何かに勘づいてか急速に距離を詰めてくる。しかし、少しばかり遅かったみたいだぜ?
「「魔法『明星』」」
『明星』
【使用魔力】F【威力】-【射程】D
カッ、と暗い回廊が光に照らされる。二人分の魔法によって、『幽霊』の足元に拳程の大きさの影が浮き彫りになった。
「シャルロット。影に魔法を撃ち込め」
「魔法『灼熱』ッ」
『灼熱』
【使用魔力】D【威力】C【射程】D
広範囲を一気にシャルロットの魔法が焼き切る。
俺の初級魔法とは段違いの威力だな。
少しばかり嫉妬するぞ。
「えっ凄い。『幽霊』がこんなあっさりと」
「ほら、地上へ急げ」
魔法『火球』を気休め程度に連発しながら、影を的確に撃ち抜いていく。魔石がコロンコロンと空しく転がっていった。出来る事なら全部回収してやりたいところだが、まあいい。
実は……もう持ちすぎて動けないんだよ。
こんな切羽詰まった状況なのに、懐の中にたんまりと魔石を溜め込んでいる俺。この場にいる三人にバレたら、あとからお説教どころか、半殺しにされそう。
「あ、地上の光が!」
「ノエル、他の人を巻き込まないように、最後にド派手な一発をカマしてやれ」
「ん。分かった」
ノエルが体内に残された全魔力を放出する。
これが、魔法のバーゲンセールか。
「喰らえッ、魔法『稲妻』ッッッ!!!」
『稲妻』
【使用魔力】C【威力】C【射程】B
地響きのような轟音が鳴り響く。
見張りの衛兵が何事かと詰め寄って来た。
「ふはは、見ろ! 敵がゴミのようだ」
「主。言いたいだけでは……」
やった。やってやったぞ。
俺達は、生き延びたんだ!
これを喜ばずして何とする!
「ルナ、急いで魔石回収だ!!」
「え、今からですかっ!?」
「うう……もう疲れた」
「ノエル……? ノエルぅ~!?」
散々な目にあったが、ひとまず。
一階層クリアだ。
シャルロット好感度 0→10
───『逆境』『痛覚耐性』を獲得しました。
ノエル好感度 0→10
───『蓄積』『麻痺耐性』を獲得しました。
名前:レイ レベル:7
HP208/285 MP120/130
ギルド:無所属
ユニークスキル:【魅力支配】
スキル:『言語理解』D『鑑定眼』E『交渉術』E『礼儀作法』F『剣術』F『挑発』F『料理』G『幻惑』F『隠密行動』G『体術』G『並列思考』G『火魔法』G『逆境』G『蓄積』G『麻痺耐性』G『痛覚耐性』G





