番外編短編・再会
真野さんが我が家に遊びに来た。
真野さんは私が女中として働いていた頃の上司というか女中頭である。
今は、運良く金持ちの家で女中として働いている。
「志乃の旦那さんは、こんな洋装の人だったべか」
真野さんは、隆さんを見上げて驚いていた。家の客間は和室であるが、そう広い場所ではないので三人もいると少し窮屈ではある。
「働いていたときは、色々ありがとうね」
「いやいや、志乃が幸せならそれでいいっぺ」
真野さんは持ってきた紙袋から、白菜や青菜などを取り出して見せた。
「これは、夫婦二人でお食べ。うちの畑でとれたもんだべ」
「おぉ、美味しそうな野菜ですね。おうちに野菜畑あるんですか?」
隆さんは野菜をもらってとても喜んでいた。この町では農家は無いので、こんな風に新鮮な野菜は入手しにくい。
「真野さん、ありがとう。さっそくお鍋にもでもしようかしら」
「うんだべ、鍋はいいっぺ」
どんな鍋にしよう。隆さんは、あっさりとした塩味の鍋が好きだし、濃い醤油味も好きだ。和食も洋食もどっちも好きだ。意外と好き嫌いは全くなく、いつも完食してくれるので作りがいがあった。
そんな事を考えていると私の顔もニヤけてしまう。
「志乃は楽しそうだべ」
「そう?」
「私も妻が幸せそうにしていると、これ以上喜ばしい事はないですね」
不意打ちの隆さんから甘い言葉を貰ってしまい、私の顔は真っ赤になってしまった。
「こんな志乃は、初めて見るっぺ」
驚いている真野さんの声が客間に響いた。




