表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/58

洗礼編-3

 奥様の家は前に来た時よりも綺麗になっていた。


 張り紙も生ごみもない様だが、玄関の門や扉にかけられたインクはなかなか消えないようだ。それでも少し薄くなっていた。


 前に置いていった食糧も無くなっていた。奥様が持って行ってたと考えて良いだろうか。だとしたら喜ばしいのだが。


「奥様。志乃です」

「前来た神谷だ。様子を見に来たんだが、いるか?」


 私達は戸をたたき、ちぃっと大きな声で奥様を呼んだ。

 しばらく呼んでみたが、返事はない。部屋の明かりはついているので、在宅しているはずだが。


 しばらくしつこく二人で戸を叩き続けた。するとようやく戸が開き、奥様が出てきた。


「何なのよ、あんた達」


 前にあった時と同じような着物姿で、疲れた表情の奥様が現れる。


「様子を見に来たんだよ。どうだ? 娘の様子は」

「奥様、絵里麻の容姿はどうですか?」

「それは……。まあ、もう熱は下がっていて、起き上がれるぐらいにはなったけど」


 渋々と言った口ぶりで奥様が呟く。


「本当か? なんか怪しいな。やっぱりちょっと上がらせてもらうぞ。失礼」


 隆さんはちょっと無理矢理家に上がってしまった。私も彼の後を追う。


 奥様は何か喚いていたが、隆さんは完全に無視して、絵里麻がいると思われる戸がを叩く。


「おい、娘。私は志乃の保護者だ。大丈夫か?」

「絵里麻、大丈夫?」


 私も戸を叩くと、意外なことに絵里麻の声がした。


「どうぞ」


 弱々しい声だったが、その声を合図にし、絵里麻の部屋の入る。


 絵里麻は布団の寝そべっていたが、顔色は悪くない。ただ、前にあった時よりもかなり痩せてしまい、髪も肌もボロボロだ。その点はここで働いた時の自分より酷い有り様になっていた。


「絵里麻、大丈夫?」


 私は絵里麻の枕元に座った。やっぱり近くでみる絵里麻は痛々しく見えた。


「なに、何しに来たのよ……」


 絵里麻は、いつものように気が強く言い返していたが、声が枯れているので全く様にならない。


 隆さんも私の横に座り、奥様も部屋に入ってきたが、なぜか絵里麻はポロポロと涙をこぼしてしまった。


「私が悪かったとは言わないけど」

「おいおい、いつまでも意地張るなよ」


 隆さんは絵里麻の言葉にため息をつく。


「でも、私がきっと間違っていたのね。志乃、あんたも悪い奴だけど」

「そうね……」


 私は素直に頷き、奥様はとても驚いていた。


「だったら私も悪いのよね……」


 絵里麻の言いたい事は何とな伝わってきた。絵里麻も意地悪な所はあったが、私が完全に正しかったといえば別にそうでは無い。


「絵里麻、林檎でも食べる? 林檎好きだったでしょう」

「志乃、よく覚えているわね」


 絵里麻はワガママで、偏食気味だった。和食も基本的に好きではなく、西洋食ばかり食べたがっていた。


「林檎だけでなく、色々果実を持ってきたぞ」


 隆さんはちょと自慢気に胸をはる。


「じゃあ、さっそく台所で切って来ましょうか」

「私も少し手伝うぞ」

「ちょっと、あんた達何を勝手に!」


 奥様は、私達が台所の行くのが気にわないらしく、必死に止めてきた。


「ちょっと、お母様。うるさいけど?」


 しかし、絵里麻が文句を言ったで、奥様は思わず怯んでいた。わた達はその隙に台所のむかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ