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キリストの花嫁編-1

「まあ、軽い風邪でしょう。疫病の典型的な症状は出ていませんから、薬飲んで寝てれば治りますよ」


 ハンスさんに診てもらい、薬を出してもらった。


「日曜日なのに、わざわざきて貰ってごめんなさい。ありがとうございます」


 私は頭の中がふらふらとしながらも何とかお礼を述べる。


「いえいえ、困った時はお互い様でしょう。日本人は謙虚すぎるのが良くない。もっと堂々としなきゃ」


 そう言ってハンスさんは、茶目っ気たっぷりに笑い、私の心も軽くなった。


「それにしても、疫病騒ぎは困ったものですね。私の国の方では、かなり大変な事になっていると聞きます」

「日本は大丈夫なのかしら」

「今のところは大丈夫でしょう。疫病予防の注射や薬は打たない方がいいですね。正直なところ、中身に何が入っているかわかりませんしね。ただ、今までの歴史を考えると疫病のあとは戦争と飢饉が始まる事が多いので、気をつけた方が良いかもしれません」

「戦争? 飢饉も?」

「ええ。もう人々はかなり自分勝手ですからね。聖書を読んで神様を信じていれば、そんな事はないのに」

「そうなの?」


 戦争と聞くとぐっと気分が重くなってしまう。今もこの国は戦争をしれいるが、まだ影響はさほど受けてはいない。ただ、平穏な生活がずっと続く保証は無く、不安になってしまう。


「キリストの花嫁の話は前にも少ししたでしょ」

「ええ。そういえば」


 神様は自分を信じる者は花嫁のように大切に思っているという事は覚えている。


「イスラエルの民は特別に愛されているはずだったんですけどね。神様に従わず、悪い支配者に虐げられて散り散りになってしまった」

「逆に神様に従うとどうなるの?」


 それは気になった。


「神様に従えば花嫁のように特別に愛されて、他のどの国よりも繁栄するはずだったんですけどね。今のこの悪い世の中も私たちクリスチャンの力不足で招いている所もあるかもしれませんねぇ。地の塩になってよの光にならなきゃいけないのに」

「そんな、ハンスさんは悪く見えないわよ」

「はは、神様の目からしたら僕も罪人ですよ。今でも苦しんでいる人を助けられて居ないと思います。イエス様に赦されているから、どうにか生きているだけで」

「私も神様に赦してもらえるかしら…」


 ハンスさんの言うことが正しいとすれば、今の不幸な状況は自分が招いている可能性も高そうな気がしてきた。


「大丈夫ですよ。祈ってみてください」


 そう言い残してハンスさんは帰って行った。どうすれば良いのかわからない。祈り方もよくわかっていないのかも知れないが、とにかく神様の事を祈りながら祈った。


 祈っているとなぜか心は晴れやかになってくる。身体は相変わらず怠くて重かったが、気持ちだけはスッキリとしてきた。


 ただ、再び絵里麻の顔が浮かんだ。


 絵里麻については、良い感情は無いが、だからといってこままにしておく訳にはいかないようだった。


 同時に薬を飲んだお陰で強い眠気に襲われ、意識を手放していた。


 夢は見なかった。

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