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第四話 火星から飛び立つ

宇宙とは過酷な環境である。


 通常、宇宙での温度は、絶対温度の単位であるケルビン(マイナス270度=0ケルビン)が用いられる。


 火星探査機は、その激しい温度差の宇宙を航行してきた。

 日影と日なたでは数百度の違いがあり、10か月を超えた船旅の船体に、その影響が出始めたことにクルーは気が付かなかった。


 彼らは、まだ火星基地に滞在していた。

「さぁてと、火星ミッションもいよいよ終わりだな。」

 ハリコフ大佐は、帰り支度をしながら二人につぶやいた。

「試料も取ったし、地中のデータも取れた。なにより私たちの人体データがとれたものね。」

 今回の有人探査は、プロパガンダもあったが、火星の重力下での生活がどの程度人体に影響を与えてしまうのかという命題もあった。

「早く筋力トレーニングを始めないと、復活させるのが大変だぜ。」

 火星の重力は地球の約1/3であり、トレーニング施設まで作れなかった火星基地では、筋力の縮小、骨のカルシウム流出が懸念されていた。

 予想通り筋力は衰え、いつか簡単に骨折するのではないかと、アルベルト教授は心配していた。

「帰りも9か月あるんだ。通常の筋肉量くらいきちんと戻せるさ。大してほかにやることもないしな。」

「やっと帰れるんだわ。早く家族にも会いたいわ。」

「へぇ、それは最愛の旦那さまかい?」

「あら、私、まだ未婚なのよ。父と母に会いたいの。」

「おや、じゃあ、僕が一緒に同行してあげるよ。ついでに将来の旦那様として紹介してくれるかな?」

「お断りするわ。帰ってくるのか来ないのか、信用できない宇宙飛行士なんて御免だわ。友人として紹介するわね。」

「つれないねぇ・・・。友人止まりかぁ・・・。」

「二人とも、着陸船に乗り込む時間だぞ。火星よりは着陸船。着陸船より宇宙船。宇宙船より地球が一番だ。」

 三人は、ざっくばらんに話をしながら、乗り込みハッチをくぐって着陸船に乗り込んだ。

「エウレカ、聞こえるか?こちらハリコフ。着陸船の発進準備頼む。」

 《了解しました。ハリコフ大佐、アルビン教授、フェスティーヌ飛行士の乗船を確認いたしました。各センサーに異常は見られません。一時間以内に発進可能です。》

「こちらは・・・。二人とも問題ないか?」

「ちょっと待ってくれ、椅子に上手く固定できない・・・。」

 アルベルトは、体をゆすったり、腰の位置にあるロックボタンを何度か触って体を固定した。

「よし、いいぞ。筋力が衰えてて、うまくいかなかった。」

「あなた、力任せの傾向があるから改めたほうがいいわよ。私は、いつでもいいわ。」

「あら、将来の妻に怒られちゃったよ。今のうちから練習しとかなくちゃな。」

「宇宙飛行士とは結婚しません。そうね・・・。私の地元の学校の先生になってくれたら考えてあげてもいいわ。」

「先生かぁ・・・。俺はろくに学校へ行かなかったからなぁ・・・。努力はしてみるよ。」

「本気にしないで待ってるわ。」

「エウレカ。二人のコントを聞いていてもつまらないから、カウントダウンを頼む。」

 ハリコフ大佐は冷静に命令を出した。

 《承知しました。カウントダウンを開始します。15分前。》


 15分後、着陸船は噴射を始め、衛星軌道上に静止している母船に向けて垂直上昇を始めた。

 《高度2万メートルの母船に向けて、2km/h2て加速中。20 分後にドッキング制御シーケンスを開始します。》

 宇宙飛行士たちは、噴射音と少し腹に響くくらいの振動を受けながら、目の前の表示パネルを眺めていた。全てAI制御になっているので、異常が発生しない限り、何かを操作することはない。着陸船の離発着に関しては、彼らが火星に到着する前に、先行して開発をしていたAIが、なんどか試験飛行をしていたので、特に異常も見つからず、着陸船は順調に上昇して行った。


 《ドッキングまで、あと30秒。衝撃に備えてください。》

 と、言っても、そんなに衝撃があるわけではない。着陸船は、実にゆっくりと母船にドッキングした。

 《ドッキング。ハッチのドッキングロックを開始します。》

 プシュ、プシュと空気が抜ける音がわずかに聞こえてドッキングは完了した。

 《ドッキング完了しました。ハッチを開けていただいて構いません。》

「了解した。ただいまから母船に移り込む。」

 ハリコフ大佐は、エウレカに返事をして、

「ふぅー。やはり緊張するな。万が一ということもあるからな。」

 と、息をついた。

「そうですね。ともかく母船に戻ることができて良かった。おめでとうございます。」

 アルベルトは、そう言って腰のベルトロックを外した。

 三人は、おめでとうを言い合って握手を交わし、母船に乗り込んだ。

 《おかえりなさい。ハリコフ大佐。アルベルト教授。フェスティーヌ飛行士。ご気分はいかがですか。体調チェックがありますので、居住スペースの診療スペースへいらしてください。》

「了解した。俺から始めるよ。」

 《承知しました。ハリコフ大佐から始めます。宇宙服を脱いで診療スペースへおいでください。》

「それから一日休暇を取る。そのあと帰還作業に入るから、母船のチェック、月基地へ交信して、データの送信、帰還作業に入ることを報告しておいてくれ。」

 《承知しました。命令を遂行いたします。24時間後に帰還作業に入ります。ゆっくりとお休みください。》

「大佐、もっと早くてもいいんだぜ。早く地球に帰りたいからな。」

「まずは気分を変えてもらうことが優先だ。あせっても良い事はないからな。」

「了解。」と、アルベルトは、二本の指を前に出して了解のポーズを取った。


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