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第二話 ㈱アシタノヒューマン 2

西暦2032年


「はぁぁぁ・・・、予算がぁ・・・。」

 アンドロイド開発部の三ヶ島五郎は、自分の言い出したプロジェクトに従事することができたにもかかわらず、結局、低予算の開発を命ぜられ四苦八苦していた。

「筐体もAIも低予算にしろっ。て言われてもなあ・・・。自社開発は無理かなぁ・・・。」

 ロボット本体を作ることはかなりの予算が掛かる。そこはやはり他社から供給してもらうしかなかった。ロボットのデザインは自社でも可能だ。しかし、相応のデザイナーがいるかと言えば、そんな人物はいない。残るAIくらいは、なんとかしたいが、AIの普及が進み過ぎて、特に特定の分野や高度なものでなければ、汎用品をアレンジするくらいしかやることがなかった。

 結局のところ、現代の格安パソコンメーカーのように、世界中から部品を集め、客層に合わせて組みあげたものを、製品として販売するほうが現実的だった。

「しかし、15才の少女とは・・・。専務も専務だよなぁ・・・。」

 当初、吾郎は20才くらいの青年をイメージしたアンドロイドを計画していた。

 天文や星の話は、男の子のほうが強く興味を持っているので、「頼れるお兄さん。」のアンドロイドのほうが、プラネタリウムにふさわしいと思ったからである。

 ところが、そこで片倉取締役が口を挟んできた。青年型では、そのうち飽きられてしまうというのである。少女型にしてみても、いずれは飽きられると思うのだが、片倉取締役が強く推してきてしまったので、そのようになった。吾郎にしてみれば、どちらでも大差ないと思っていたので、とりあえず少女型を契約した。

 AIに関しては汎用品を契約して、吾郎自身が改良を加えることにした。高度な接客業務を期待されているわけでもなく、難しい筐体の姿勢制御や挙動、運動を求められているわけでもない。せいぜいプラネタリウム館内を歩く、身振り手振りで説明する、客への簡単な挨拶程度である。あとは星座や宇宙の知識を学ばせるだけである。

「ま、難しいことは必要ないよね・・・。」

 あとはデザインだった。外部のデザイナーに委託するとしても、そのコンセプトが必要になってくる。


 星の世界の少女と言えば・・・。

 ➀かぐや姫

 ②織り姫

 ③スターシ・・・いやいやこれには版権が・・・

 ④ギリシャ神話 アルテミス

 ⑤月の女神 ルナ


 一般的なおとぎ話やアニメ作品なども考えてみたが、ゴージャスな感じがして、どうにもしっくりこない。

 星の世界への案内人としては、宇宙船に乗っている添乗員というイメージであればどうだろうかと考えた。

 と、いうことで、そういったデザインの世界に疎い吾郎であったので、社内会議にかけることにした。

 添乗員と言っても、いろんな乗り物がある。

 ➀バス

 ②高速鉄道

 ③飛行機

 ④宇宙船

 ⑤テーマパークの乗り物にいる案内のお姉さん

 吾郎は事前に資料を作り、社内のクラウドにアップしていた。といっても文字だけであるが・・・。


 以降、ネット会議の様子。

 司会「えー、只今より、現在開発中のアンドロイドについての会議を始めます。それでは三ヶ島さんどうぞ。」

 三ヶ島「ロボット開発部の三ヶ島です。クラウドにアップした資料に目を通していただいたでしょうか。筐体、AIにつきましては、予算的にも他に選択肢がありませんでしたので、こちらで決定いたしました。残るはデザインについてですが、私、こういったデザインについてはあまり詳しくありませんので、皆さんの意見をお聞かせいただきたく集まっていただきました。忌憚ないご意見をお願いいたします。」

「はい。」と、まずは一声、同僚の千鳥ゆうなが挙手ボタンを点灯させた。

「吾郎さん、早速だけど、簡単なスケッチは無いの?」

「ごめんなさい。僕にはそういった能力がないので・・・。」

「あら、じゃあ大体の方向性が決ったら、私に描かせてよ。プロとまではいかないけれど、デザイナーさんに渡せるくらいのスケッチは描いてみせるわ。」

 千鳥ゆうなには、こういったイラストを描く趣味があるらしい。どうにも仕事以上の情熱があるようだ。

「あ、ありがとう。」ちょっと戸惑う吾郎。

「星座の世界と言えば、ギリシャ神話じゃないか。神話に登場する女神をイメージするようなデザインじゃだめなのかなぁ。」と、営業部の霧島尊が発言した。

「それだと、世界観が狭まってしまうと思うんです。もちろん星座の話をする番組もあるようですが、天体などの話が中心になりますので、トータル的にみてふさわしいデザインが良いと思うのです。」

「なるほどねぇ・・・、それで添乗員か・・・。観客を接客するという目的では、それが似つかわしいのかもしれないなぁ・・・。」

「そうね。宇宙を案内するんだから、宇宙船の添乗員でいいんじゃないかしら。ロボットっぽく目が光ったり、ライトがあちこちついてたりして。」

 ここで片倉取締役が登場する。

「いやいや、プラネタリウムにやってくるお客さんは、子供が多い。メカメカしているものより、人間味があるほうかいいな。」

「わかりました。では、宇宙船の添乗員というコンセプトでスケッチを描いてみます。それでご感想をいただいてから決めましょう。」

「そうだな。じゃあ、次回の会議までに、デザインをアップしておいて。」

「わかりました。まかせておいてください。」

 ゆうなは、声を弾ませて返事をしながら、既に頭の中でイメージを作り出していた。

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