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プロローグ

「ねえねえ、悠くん~、いつになったら一緒に住んでくれるの~?」


 その質問に対して俺はスマブラをやりながら、少し冷めた表情でこう答えた。


「そうだな、次のテストで学年一位取ったら考えてやらんでもない」


「そんなの無理だよ!悠くん、私が勉強出来ないの分かってて言ってるでしょ!」


「うん、そうだね~」


 清々しいくらいの眩しい笑顔で俺はそう言ってやった。俺の彼女は全く勉強が出来ない。そのため俺が毎回テスト勉強に付き合わされているのだ。


「むぅ~、悠くんの意地悪……」


「意地悪じゃない、だったら少しは自分で勉強する努力をしたらどうなんだ?」


「出来ないものは出来ない!私は勉強するために学校に入ったわけじゃない!」


――――いやいや、学校は勉強するところだろ。


「とりあえず、今のところは一位取れなかったら絶対無理だからな。それに隣に住んでるんだから良いじゃねえかよ。好きな時に会いに来れるんだかさ」


「会いに行くのと、一緒に生活するのとじゃ全然違うじゃん……」


 先ほどまであんなに笑顔だった日菜乃の顔が一瞬にして世界が滅亡でもしたかのような顔に豹変してしまった。しかし、これに関しては日常茶飯事なので対処法はいくらでもある。因み、この場面では彼女を喜ばせるのが一番効果的だ。


「日菜乃、お前の笑顔は世界で一番可愛いんだから。そんな顔しないでニコッとしてような?今度スタバの新作買ってあげるからさ」


「ほんとに!?やったぁ!それなら毎日ニコニコしていちゃうな~。日菜乃やっぱり悠くんのことだーい好き♡」


 あっという間に暗かった表情がお花畑みたいな綺麗な笑顔に戻った。この子はこれくらいの言葉でテンションが変わる。超単純で馬鹿な女の子だ。

 そして、そのまま日菜乃は俺に飛びついて抱き着いた。


「ちょ、いま、いいとこ。あと一回吹っ飛ばせば……」


「いーやだよーだ、絶対に離さないもん♡」


「おねがい……はなして……」


「お願いは承認されません!残念でした!」


 見事に拘束された俺は身動き一つ取ることが出来なかった。


「くそっ!負けたじゃねえかよ!」


「ゲームばっかりで私に構ってくれないからそうなるんですぅ~」


「言いやがったな!この野郎!」


 俺は日菜乃に飛び掛かって馬乗りになった。形勢逆転だ。


「……さて、覚悟はできてるんだろうな?」


「えっと……痛くしないでね♡」


 俺と日菜乃の日常はいつもこんな感じなのである。

 

自己紹介が遅れたが、俺の名前は月城悠人(つきしろゆうと)、二十二歳、建築関係の会社に勤めている。俺が日菜乃と呼んでいる女の子は柊日菜乃(ひいらぎひなの)、高校二年生である。そして俺達は「恋人」関係でもある。

 なぜ、二十二歳の俺が高校二年生の彼女とこういう関係になったのにはちゃんと理由がある。今流行りのInstagramやTwitterで知り合ったわけではない。俺は彼女に命を救われたのだ。当時ニートで何もかも捨てて死のうとした俺のことを。

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