『トイレの日』
古い日本家屋に住む私は、今考えている。
定年を迎え、家内といる時間が増えた。
退職金で少し家の中のリフォームもした。
周りからは、関白亭主で通っていたが、これを機会に仕事一本で進んできた考えてを改めて、家庭を手伝おうと思っている。
家内は、「勝手な手伝いは要らないので私の言うことを聞いてください」と一言だけ私に言ったのだ。
私は、考える。リフォームしたばかりのトイレの中で…
古風な私は、和式トイレじゃないと踏ん張れない体質だったが、家内の希望により和式から洋式に変えた。
私は、考える。和式では、あり得なかった考えると言う時間がトイレで生まれた事を…
自分の膝に肘をあて手の甲は顎に当てる。まるで、オーギュスト・ロダンが制作した【考える人】のように便器に座り考える。
何を考えているのかと言うと、私がトイレに入る際、必ず家内が「はうす」と言うのだ。
…はうす? なんの事だろう? 家内に聞いても、「空耳じゃないの?」とか、「そんなことは言ってません」とか、「はぁ?」しか言わない。
扉の開け閉めの際に異音かとも思ったが、やはり家内からの「はうす」としか聞こえないのだ。
洋式トイレになって幻聴が聞こえるようになったのだろうか?
パタパタパタ 家内が廊下を渡る音に我に返った。
「いかん、いかん。また、考え込んでしまったわい。」
グギッ!
「あ、ぎっくりだ」勢いよく立ち上がってやってしまった。
ピ、ジャァァァァー
「お父さん、水が流れる前に便座の蓋を閉じて下さいって、何度言わせるの?言うこと聞く約束でしょ」
「あ、すまん。だが、た、助けてくれないか?今、ぎっくり腰をやってしまってトイレから動けないんじゃ」
「えー、ズボン履いたら教えてくださいね」
「い、い、いや、だからね。」
あー、関白も定年制だったのか…
読んで頂き誠にありがとうございます。
今日のTwitterトレンド『トイレの日』です。
それはそれは、キレイな女神様に会いたいですが、ホラーな私は、花子さん なんだろなw
それでは、またお会い致しましょう。
木尾方m(._.)m