表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

999/1380

999.帰り道

「上がれ上がれーっ!」

「メイちゃんたちは、深部で守護者を打倒。転移したゼティアの門を追って地上に戻るとのこと!」

「帰還の際には、付近のプレイヤーにそのことを通達しながら進んでください!」

「各所に『青』の煙幕を使って、引き上げの合図を出しておくのも忘れないでね!」


 大きな地下遺跡に踏み込んだ者たちは、見事な情報網で現状を伝達。

 各所の仕掛けを解いたパーティや、敵の打倒に回っていたチームが続々と地上へ戻って行く。


「各ポイントに、帰還誘導のためのプレイヤーまで置くんだな……」

「これなら間違いようがないからね」


 後続組が更新された地図を持ってきたり、引き上げ時の流れをダンジョン攻略勢が先導したため、流れは非常にスムーズだ。


「この後、間違いなく地上で大きな戦いが始まる。全員備えておけ!」

「装備やアイテムの補充を忘れるな!」

「消耗品はマーちゃんが配布をしてるが、もらうのは最低限にしておけ! 戻ったら個人で準備を!」

「これから来るプレーヤーはもちろん、早く地上に戻ったパーティには、この後に備えた準備を始めるよう徹底してくれ」

「D地点より深い位置まで来た面々は、七新星の帰還ルートを後追いすれば接敵もすくないはずだ!」


 七新星や蘭すみれ姉妹は、閉じられた転移装置部屋を発見後、追従組を先導して遺跡を自力で戻っているようだ。


「掲示板等でも情報が伝達されてる……本当にすごい勢いだな」

「世界がかかってる上に、あのメイちゃんたちが中心だからな……!」


 その引き際の良さに驚くのは、ここ最近のメイの冒険に触発されてやってきたプレイヤー。

 見事な統制の取れ方は、普段のダンジョン攻略とは大違いだ。


「おーい! メイちゃんたちからも伝達ありだ」


 するとそこに、一人のプレイヤーが駆け込んできた。


「なんだ?」

「メイちゃんから?」


 意外な言葉に、驚く帰還プレイヤー。

 皆、続々と集まってくる。


「これ、使ってくれって」

「……なるほど、そういうことか」

「それならさっさと上がっちまおう。先に上がってるプレイヤーたちで、準備を進めるんだ」

「これだと本当に、初級者まで総動員だな」


 こうしてメイの頼みを受けたプレイヤーたちは、移動スキルを使って地上を目指す。

 浅い層にいる低レベルプレイヤーほど帰りは早く、必要な準備も少ない。

 そういう意味では、うってつけの依頼だ。

 こうして遺跡都市を潜っていたプレイヤーたちは一斉に地上へ戻り、準備を始めていくのだった。



   ◆



「それでは、地上に戻りましょうっ」

「「「「おおー!」」」」


 メイの言葉に、動き出す最深部到着メンバー。

 アーリィたちと掲示板組。

 そしてこの深部にまでたどり着いた、一部の追従組。

 ここまでやって来た面子は、転移装置の部屋を目指す形になる。

 長い遺跡地下。

 間違いなく、転移での帰還が一番早い。

 追従組の持ってきたマップならば、転移装置へと向かうルートも把握できる。

 メイたちは来た道とは少し違う、砂色のブロックで造られた道へと進む。


「かなり古いものみたいね」

「な、なんだか嫌な予感がしますね」


 道は地殻変動で大きな圧でも受けたかのように歪み、ヒビが入りまくっている。

 まもりの言葉にうなずきながら、メイたち一団は石畳の道へと進む。

 そして、この旧道への出入り口が見えなくなった頃。

 突然重たい音が鳴り出し、通路のヒビが一気に広がっていく。

 砂がパラパラと落ち、すぐに豪雨のように降り始めた。


「まあ帰り道といえば、これよね!」

「でもこの感じなら、間違いなく地上へのショートカットがありそう!」


 アーリィが確信する。

 始まる崩落に、すぐさま走り出すメイたち。

 ブロックで舗装された天井が落ち出し、足元に続々生まれる段差が転倒を奪いに来る。


「「「っ!!」」」


 天井が崩れ、落ちてきた大きな岩塊が道を塞ぐ。


「【フルスイング】!」


 皆で攻撃して崩す設計の岩塊を、メイが一撃で破壊。


「【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

「【十字光弓】」


 当たればダメージと転倒。

 やっかいな落石は、レンと灰猫が魔法で弾く。

 進んだ先には、道が崩れ落ちて深い穴となった通路。


「【リトルウィング】【エアダッシュ】!」


 アーリィは、跳躍に緊張する後衛少女の手を取り飛び越える。


「今なら、死ぬとアーリィに連れていかれる感じかもな」

「ヴァルハラの雑用エインフェリアになるのか」

「雑用能力を認められてヴァルハラに……?」

「「「あはははは!」」」

「できれば皆、生き残って欲しいんだけどなぁ」


 これにはアーリィも笑う。

 やがて見えた出口へ飛び込むと、そこは天然の洞窟につながっていた。


「よいしょっ!」


 いきなりの岩塊を受け止め、転がすメイ。


「【弾力変化】!」


 スライムも自身の弾力を変えることで、降り注ぐ落石を弾く。

 見事に脱落なしで、崩落地帯を突き進むメイたち。

 その行く手を、再び岩塊が塞ぐ。


「【バンビステップ】」


 その大きさに、前衛組は早い破壊に動く。

 だがそれによって生まれた分断を、突いてくる狼型機械。

 岩陰の多い洞窟内。

 後衛組を狙った狼型の群れが、猛然と襲い掛かってくる。


「「「ッ!!」」」


 気付いた時にはすでに、魔法攻撃をするには近く、前衛が戻るには遠い距離。

 突然の事態に、レンは急いで杖を構えるが――。


「【ファイアウィップ・エクスプロード】!」


 レンの真横を通り過ぎたムチが、先頭の狼型に直撃して燃え上がる。

 爆炎に巻き込まれた二体の狼型も、同時に焼かれて転がった。

 長く淡い白金の髪を水色レースのリボンでとめ、紺色の【魔法学院の制服】から、目立つくらいに太ももを出したお姉さん。

 ローチェの攻撃は、見事に敵の攻勢を崩した。

 だがそれでも、運良く助かった一体の狼型は、素早い移動から飛び掛かりの体勢に入る。


「【加速】【急加速】【宙返り】【二連空閃】」


 狼型が空中ですれ違うのは、ツバメによく似たドール。

 放たれる短剣の連撃は、見事に敵を斬り裂いた。


「ローチェに、なーにゃ」


 後方から追いかけてきた二人の姿に、思わず足を止めるレン。

 金の紋様が入った黒マントに、長い桃髪の小柄な少女は、錬金術師なーにゃだ。


「まだですよっ!」


 聞こえたのは、最後方を駆けてきたプリースト姿の女性。


「「「ッ!?」」」


 見れば崩落の岩塊が、レンたち後方組に向けて落下してくるところだった。


「【爆炎正拳突き】!」


 放たれた拳は、猛烈な炎と共に岩塊に直撃し大爆発。

 粉砕した岩が、粉々になって飛び散った。


「「「おお……っ!」」」


 思わずもれる感嘆。

 やや白地の多いシスター服をまとった、知的な雰囲気のプリースト。

 長い黒髪とメガネがよく似合う素敵なお姉さんが、安堵の息をつく。


「よかったー! 間に合わないかと思いましたよー!」

「ああっ、シオールさんっ!」


 うれしそうにやってきたメイは、そのままシオールに抱き着いた。

 全速力で会社からの帰宅路を駆け抜けたお姉さんは、即座に『星屑』へ。

 無事、地下遺跡をこの位置まで降りてきていたようだ。

 きゃっきゃと抱き合う二人に、癒される同行者たち。


「ローチェちゃんも、お忘れなくっ」

「追いつけて良かったですな」

「本当だね。メイちゃん、ここからは私たちも同行させて!」

「もちろんですっ!」


 そんな会話に、皆が笑う。

 新たにシオールたちと一緒になったメイたち一同は、ここまで脱落者もなし。

 あらためて転移装置を目指す。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 祝!999回! [気になる点] これなら迷子ちゃんでも迷子にならな…いよな?あれ?? [一言] ツバメちゃん人形、二連空閃とか本家にもできない事を?!
[一言] 論理クイズは、二つの二進数を比べて違う部分を確認するかな。
[一言] そして気がついたら迷子ちゃんが…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ