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996.ゼティアの門を追え

「さすがメイたちだな……」

「獣の王も、明らかに前回よりも強かったよね」


 アーリィは、夜琉の言葉にうなずきながら応える。


「ツバメさんとメイさんの連携も、お見事でしたっ」

「あの盾防御も、すごかったぽよっ!」


 迷子ちゃんと、迷子ちゃんに巻きついていたスライムも思わず拍手で勝利を祝う。


「でも、まだ1割ほど残ってるぞ……?」


 首を傾げる追従プレイヤー。

 メイとツバメの『狐コンビネーション』で、獣の王の連続奥義を打開。

 叩き込んだ狐火の一撃。

 これで獣の王の残りHPが1割を切ったところというのは、狙い通りだ。


「やっぱりね」


 真紅の煙が獣の王から蒸気のように吹き出し、消えていく。


「かつての戦いを覚えていれば、この可能性は自然と浮かんできますね」


 すると傀儡化されていた獣の王は思考の束縛から解放され、その場に倒れ込んだ。

 打倒せずに終わる戦いは、前回と同様。

 その時の記憶がなければ、やや予期しにくい展開だ。

 もはや獣の王にもう、戦う意思はなし。

 こうして二度目の戦いは、メイたち四人の勝利となった。


「だいじょうぶー?」


 さっそく近寄っていくメイ。

 目を覚ました獣の王も、かつて認めた唯一の人間であるメイに近寄る。

 そして互いの無事を確認すると、静かに目を閉じた。

 するとその巨体が、白く輝き始める。


「……回復してる感じね」


 緑味を帯びた白光の粒子が少しずつ集まるエフェクトは、まさしく回復のものだろう。


「ああっ!」


 そこに駆けてきたのは、かつてのイベントで元老院にさらわれた『王の子』


「ひさしぶりだねーっ!」


 眠りにつき、回復を始めた獣の王を見て『その状況』に気づいたのだろう。

 そのまま嬉しそうに、メイに飛びついてきた。

 その姿に、思わず癒されるプレイヤーたち。

 メイがまだまだ可愛らしい王の子を抱きしめると、その口にはくわえた一冊のスキルブック。

 これは獣の王を倒さず、再び正気を取り戻させたミッション報酬というところだろう。



【ドラミングⅢ】:防御力を上昇し、敵の攻撃や自然の仕掛けを受け止めながら、前進することができる。



「どらみんぐ……」

「獣の王の止められない体当たりから、得られる力って感じね……」


 さらに激しくなってしまうドラミングを想像して、ゴクリとノドを鳴らすメイ。

 こうして四人は、兵器によって操られたロマーニャの守護者との戦いを終えた。


「……早く、早く地上へ戻らなくては」


 すると立方体ブロックに寄りかかったままでいた管理者が、立ち上がる。


「門が開かれるのを、止めるのだ……!」


 そう言ってやや覚束ない足で走り出し、そのまま姿を消した。


「私たちも、『ヴァールハイト』の後を追いましょうか」

「うんっ」

「いきましょう」

「は、はひっ」


 目指すは、地上に転移したのであろうゼティアの門。

 呆然としていた追従組も、さらに進んだ展開に再び気合を入れて動き出す。


「でも、来た道をそのまま戻るのかしら……」

「そうだとすると、少し手間がかかりますね」

「本当だねぇ」


 メイたちの進んできた道は、植物学者トミーのクエストから始まる特殊ルート。

 幻覚が強力なキノコの区画には、できればもう戻りたくない。


「そう言うことなら、問題ないぽよ」

「僕の計算では、そろそろ……」


 掲示板組の面々が、うなずき合う。

 すると二つほどのパーティが、この紋様の空間に駆け込んできた。


「どうだ?」

「ああ、この地下遺跡のルートの探索は結構進んでる。中でも七新星が見つけた古い地図のおかげで、一気に解像度が上がった感じだな」

「古地図を見る限り、蘭すみれ姉妹が獅子型の大型機械を打倒することで開放した『石扉の間』に、地上に戻るための大きな転移装置があるみたいだ。ただ枝葉がしっかり守ってるから、カットが必要になる」

「そう言うことでしたら!」

「これの出番だねっ」


 そう言って【剪定バサミ】を取りだす、迷子ちゃんとメイ。

 次の目的が決まり、うなずき合う面々。


「こ、これで地上に戻るルートも確定でしょうか……」

「みんなのおかげだねっ」


 うれしそうにするメイに、皆気合を入れ直す。


「ここからは地上に戻っての戦いになる。伝達部隊は次の戦いに備えるよう伝えて回ってくれ」

「了解!」


 おそらく地上での戦いは過去最大級のものになると踏み、異世界内のプレイヤーを回収に向かう伝達部隊。

 さらにそこへ、入れ替わるようにしてやって来たのは――。


「マーちゃん!」

「いよいよという感じですね……!」


 商人のマーちゃんもメイたちに会うため、ここまで降りてきたようだ。


「各パーティが連絡をつなぎながら進行できたのは、消耗品の配布がかなり助けになってるな」

「あれがなければ、もっと手間取ってたな」

「メイさんたちの勝負時ですから!」


 そう言ってマーちゃんは笑う。そして。


「私も地上に戻り、各パーティなどの支援を行おうと思ったのですが、その前に……」


 そう言ってマーちゃんが取りだしたのは、アイテム。


「【絆の宝珠】は、これまでのクエストなどで出会ったNPCなどと、わずかな時間ですが共闘できるアイテムです」

「ありがとーっ!」

「ありがとうございます」

「ずいぶん面白そうなアイテムね」

「……だ、誰も来てくれない可能性は、ないですよね……?」


 数は少ないが、渡された宝珠を手に歓喜するメイたち。


「私も一緒に、この戦いの結末が見たいです!」


 マーちゃんはそう言って、両拳を握る。


「もちろん俺たちもだ!」

「このまま突き進もうー!」

「おうっ!」

「メイちゃんに『世界を……頼む』と言いながら斃れるのは、この俺だ!」

「なんで死に戻り前提なんだよ」


 あがる笑い声。

 メイたちはうなずき合い、地上を目指す。

 そこには転移したゼティアの門と、『鍵』の青年を連れた新帝国『ヴァールハイト』が待ち受けているはずだ。

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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― 新着の感想 ―
[一言] NPCの範囲広いからなあ。 動物や魔物も来る可能性も
[一言] ドラミング強化?! 絵面がかなりヒドイ(笑) でも使うことになるんだろうなぁ。
[良い点] ドラミングⅢで大爆笑しましたw スーパーアーマードラミングとか怖いっっっ(笑) [気になる点] 絆の宝珠…またやばいモノをぶっこんでくるなマーちゃん…
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