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995.4人の仲間と成長

「一進一退だな……!」

「でも確かに、メイちゃんたちが押してるぞ」

「肝心なところで盾子ちゃんが、しっかり敵を止めてるのが本当に大きいですね」


 二度目の戦いは、こちらが『獣の王の攻撃を知っている』ことすら前提にした構成。

 それでも、いざというところをまもりの盾が防ぎ、戦いはメイたちの優勢に進んでいる。

 高い咆哮。

 HPを4割強まで減らした獣の王は、頭上の紋様を輝かせて小型の陣を展開。

 放つ【アクアコメット】は、次々に飛んでくる大型の水弾。

 一粒2メートルに届こうかという水弾が、マシンガンのように飛来する光景に思わず息を飲む。


「【バンビステップ】!」

「【加速】!」


 メイとツバメは回避しながら、後衛組の状況に目を配る。


「【天雲の盾】! きゃっ!」


 水弾が砕けて、大きく上がる飛沫。

 その威力は高く、まもりでさえ大きく体勢を崩す。

 即座に放たれる次弾は、足元で砕けて転倒を奪う狙いか。


「【連続投擲】!」


 その事に気づいたツバメは、水弾目がけて【風ブレード】を投擲。

 水弾に刺さった四つのブレードが生み出す烈風が、水弾を打ち砕いた。


「あ、ありがとうございますっ!」

「【誘導弾】【フリーズストライク】!」


 ここでレンは、すぐさま反撃。

 飛沫にぶつかり消えないよう、弧を描くような軌道で放つ氷砲弾。

 しかし渦を巻く大量の葉の嵐が、獣の王を守る。

 そしてそのまま【リーフブレード】を、全方位に向けて発射。


「「「「っ!!」」」」


 四人は自然と防御態勢に入る。

 しっかりとダメージを最小限に抑えたところで、獣の王は地面を強く踏みつけた。

 足元に広がる紋様から【光の枝】が突き上がり、四人は慌てて回避態勢に入る。

 先ほど嫌というほど見せられた攻撃を見事にかわす四人だが、やはりこの攻撃は本命の前の『崩し』

【水星群】は、【アクアコメット】の水弾が降り注ぐ形となった、高火力かつ転倒効果を持つスキル。

 頭上から降る攻撃の回避は、難しい。

 メイとツバメはそれでもどうにかかわし、レンは【低空高速飛行】による移動で範囲を抜ける。

 まもりも盾を傘にすることで防御に成功するが、後方1メートルのところに落ちた水弾の流水に足を取られた。


「きゃあっ」


 そして転倒を取られたまもりに対し、獣の王が足の紋様を輝かせる。

 狙いは転倒中のまもりに、【波紋突撃】を叩き込むことだ。


「いーちゃんっ!」


 だが、ここで声をあげたのはメイ。


「【いたちごっこ】!」


 肩に現れた白イタチが、その小さな手を突き上げる。

 始まる【水星群】による反撃。

 2メートルの水弾が、一斉に獣の王に向けて猛然と降り注ぐ。


「それ、使わせてもらうわ! 【フリーズブラスト】!」


 放つ氷嵐が、弾け散る飛沫を急速に冷凍させていく。

 獣の王は動きを止めず、飛沫の中を駆ける。

 そしていくつもの水弾や冷凍された氷弾を喰らいながらも、凍結を尾の先に喰らうだけに留めてみせた。

 獣の王は、そのまま反撃に入る。

 両前足を強く地面に押し込むと、描かれる紋様。

【リバースプラッシュ】は、足元から生まれる激流が襲い掛かる攻撃。

 前衛二人を狙い。

 メイとツバメを回避に集中させたところで、獣の王は両足を上げる。


「あの動き、覚えがあるわ!」

「はい、確かに覚えていますっ!」


 足元に描かれる強烈な紋様の輝きを、そのまま踏みつける。

 一気に走るヒビ。

 そこから生まれるのは、全方位へ広がる激流。

 全てを押し流して長い転倒を奪う、高火力範囲攻撃の名は【激蒼流】


「でも、その攻撃は知ってるわ! 【浮遊】!」

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【跳躍】!」


 前回の戦いでその動きに覚えがあるレンとツバメは、しっかりと回避。


「【裸足の女神】!」


 初見かつ足の遅いまもりのもとに、高速で駆けるメイ。


「お待たせいたしましたっ!」


 この驚異的な危機の中、笑顔で目の前にやってきたメイは、まもりを背負って振り返る。

 皆を危機から守ったまもりを今度はメイが背負い、迫る激流に相対。


「【アメンボステップ】!」


 走り出したメイは、迫る濁流の上をそのまま走り、一気に距離を詰めていく。

 迫る波を飛び越え、水面を蹴る足が飛沫をあげる。

 そして獣の王の前に駆け付けたメイは、両足を大きく曲げた。


「【ラビットジャンプ】!」


 まもりを背負ったまま跳躍。

 掲げた剣を、全力で振り下ろす。


「【フルスイング】だああああーっ!」


 しかし獣の王も、【紋様壁】を頭部の前面に展開して対抗。

 ぶつかり合う剣と光の壁、まばゆい粒子がド派手に弾け飛ぶ。


「「「うおおおおおおおお―――――っ!!」」」


 一進一退、激しくぶつかり合う両者。

 その圧倒的な迫力に、あがる歓声。

 獣の王も完全に、かつてこれらの攻撃を乗り越えてきた者が相手だと想定しての攻勢だ。

 互いを知るからこその戦い。

 どちらが押し切るか。

 戦いの結末に向け、注目が高まっていく。

 先手を打つのは獣の王。

 両前足を強く踏み込めば、これまでよりも大きなヒビが走り、赤熱が走る。

 吹き上がるのは、溶岩。


「――――シャッ!!」


 連続で【爆砲】を放てば、炎に風の属性効果で生まれた猛火が途切れることなく地を駆ける。

【灼熱連華砲】は一瞬で、地下遺跡を炎の海に変えた。


「【加速】【反転】【加速】!」


 ツバメは高速移動を使って、迫る炎を回避。


「【装備変更】!」


 メイは【王者のマント】をまとって、炎を無効化。

 隙をうかがうも、ヒビと溶岩と強風の連携を前に、ひたすら回避に専念させられる。


「「「「ッ!?」」」」


 そんな中、噴出する一際大きな溶岩。

【爆砲】によって迫る、回避を許さぬ猛烈な爆炎。


「レンさん、ツバメさんっ!」


 メイの背を降りたまもりが、二人を呼ぶ。


「【低空高速飛行】!」

「【加速】【リブースト】!」


 レンとツバメは、即座に全速力で駆けつけしがみつく。

 迫る猛烈な炎。


「【水球の守り】!」


 広がる球形の水バリアで、迫る炎を相殺。

 一方メイは【王者のマント】のマントに包まり、迫る業火を打ち払う。

 そして、炎が晴れた。


「確実に、殺しに来てる……」


 最初に聞こえたのは、追従組のそんな言葉だった。

 すでに展開されている【光星乱舞】は、大勢のプレイヤーをまとめて片付けるために使われる奥義スキル。

 角から展開する光の紋様が、空中一杯に広げる。

 そして無数に生まれる光芒が一斉に瞬き、流星群のように降り始めた。


「……メイさん」

「うんっ!」

「見せてあげましょう。私たちの成長を!」

「りょうかいですっ!」

「はいっ!」


 レンの言葉に、前衛二人はうなずき合って走り出す。


「【加速】!」

「【バンビステップ】!」


 二人は降り注ぐ流星のような光雨の中を、華麗な回避で突き進む。

 そして二度目の奥義を、ただの一度もダメージを付けることなく駆け抜けた。

 避けながらの接近という、至高の動きを見せた二人。

 だが前回の戦いの奥義すら、獣の王は『連携のオトリ』にする。

 強烈な咆哮。

 獣の王の全身に紋様が広がり、煌々と輝きだす。

 まるで魔力が循環するように、紋様を駆け抜ける光。

【全天紋特攻】

 空中に広がる紋様が、白く滲んで見えるほどの輝き。

 その激しい紋様の輝きに、誰もが喰らったらダメなものだと即座に理解する。


「【リブースト】」


 ここで先行したのは、何とツバメ。

 手にした【雷ブレード】を投じるが、弾き飛ばされ効果なし。


「お、おいっ!」

「ヤバくないか!?」


 ブレードを弾かれ、あがる悲鳴。

 ツバメに照準を合わせた獣の王は、そのまま特攻して直撃。

 誰もが即死を確信した、次の瞬間。

 ツバメが、突然爆発した。


「それは――――爆発する残像です」


【狐火虚像】が、青い炎を巻き上げる。


「【バンビステップ】!」


 獣の王がのけ反ったところに、青い炎を割って駆け込んで来たのはメイ。


「【モンキークライム】からの【ラビットジャンプ】!」


 そのまま獣の王の足から肩まで蹴り上がり、高く跳躍。


「【アクロバット】【装備変更】!」


 メイは空中で一回転して、頭装備を【狐耳】に変更。


「【ソードバッシュ】……エクスプロードだああああああ――――っ!!」


 叩きつけられた剣から走る衝撃波が地下遺跡を揺らし、【狐火】から生まれた豪快な青炎を巻き上げる。

【狐火虚像】から【狐火】による【ソードバッシュ】という、『狐』の連携。

 着地したメイが、両手で「コンコン」と狐ポーズを取る。

 それから楽しそうに笑いかけると、ツバメもちょっと恥ずかしそうに狐ポーズで応えた。


「……前の戦いも、最後は【狐火】の【ソードバッシュ】だったわね」


 ポーズを取る二人を見て、思わず駆け出すレン。

 まもりもメイとツバメの狐ポーズに目を奪われたあと、慌てて走り出した。

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[良い点] いーちゃんのいたちごっことメイちゃんのアメンボステップがいい感じに決まるなぁ! [気になる点] 王者のマントさん、本来そんなに受付時間長くなさそうだけど野生児が持つとご覧の通り。 無形の攻…
[一言] 論理クイズは実際にやってみることが大事です、一ヶ所変更した後、各フィルターの値がどうなるかやってみると良いかも。
[一言] フルスイング、いたちごっこ、コピーの実、まもりの魔法反射と相手が強いほど活かせるスキルが結構充実していますね。
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