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993/1384

993.ロマーニャの守護者

新生帝国ヴァールハイトの結晶兵器で、傀儡と化した大地の守護者。


「……レンさん、これはもしかして」

「ありそうね」


 特殊な戦闘の気配に、うなずき合うメイたち。


「明確に私たちを意識してる。王都クエストの攻略者だと、何か変化がありそう」


 人間と動物たちの和解に関わったメイに対して、わずかに見せる迷い。

 それを見て追従組も、『ミッションが含まれる可能性』を覚えた。

 自分たちがするべきは邪魔者の警戒と、いざという時の助けという形。

 そう判断して、わずかに下がる。


「きます!」


 結晶による傀儡化は、獣の王を狂わせる。

 放たれた咆哮は、どこか恐ろしい不思議な高音だった。


「高速【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 レンがけん制に放った魔法を、獣の王はその見事な機動力で回避する。


「そう言えば、前に戦った時も回避は得意だったわね!」


 前回の戦いを思い出して、思わず気合を入れるレン。


「――――シャッ!!」

「まもりお願い!」

「は、はひっ! 【天雲の盾】っ!」


 だがその分、こちらも反応は早い。

 獣の王の【爆砲】は、衝撃波を任意の方向へ飛ばす技。

 まもりはしっかりと防御に成功するが、大きく後退させられた。


「【バンビステップ】!」

「【加速】【リブースト】!」


 この隙にメイとツバメは、左右から挟むように接近。


「【跳躍】【回天】!」

「大きくなーれ! 【フルスイング】!」


 ツバメは空中から縦回転。

 メイは地上から、長く伸ばした【蒼樹の白剣】で横回転。

 続けざまに攻撃を放つ。

 獣の王はこれを、二度の後方跳躍でかわして反撃に入る。

 長い角から広がる光の紋様が延伸し、煌々と輝き出す。

 角の各所に無数の光芒が現れると、雨のように降り注ぐ。

【拡散光雨】は、前回の戦いをはるかに超える勢いで、光弾の豪雨を降らした。


「「ッ!?」」


 ツバメとメイが、即座に防御を選ぶほどの勢い。

 降りしきる光の雨はツバメで2割弱、メイにも1割近いダメージを計上させた。


「【フレアストライク】!」


 まもりの『盾抱え上げ防御』で、やり過ごしたレンはすぐさま反撃。

 すると大きく巻き上がった木々の葉が、炎砲弾の炸裂にぶつかり燃え上がる。


「あったわね、そんな防御スキル! でもっ!」


【葉隠れ】によって魔法攻撃から身を守るのは、前回と同様。

 よってこちらも、すでに前衛二人が動いている。

 駆けるメイとツバメは、舞い散る木の葉の中を一気に駆け抜け獣の王のもとへ。しかし。


「キィィィィィ――――ン!!」

「「ッ!?」」


 広範囲をまとめて硬直状態に陥れる【大咆哮】が炸裂。

 メイとツバメの接近は間に合わず、硬直を取られた。

 まるで獣の王も、かつての戦いを覚えているかのような対応。

 そして前進。

 ツバメに向けて放つ、全体重を乗せた【踏みつけ】は新スキル。

 それは地味ながらに、一撃即死も普通にありうる超強技だ。


「互いの攻撃を覚えているからこそって流れ、見事だわ……でもっ!」


 ツバメに迫る、全体重を乗せた一撃。


「か、【かばう】っ!」


 飛び込み、まもりは盾を掲げる。


「【不動】【コンティニューガード】【地壁の盾】っ!」


 巨大な獣の王の、全体重をかけた【踏みつけ】を、まもりが掲げた盾で受け止める。

 それはまるで、人間が帆船を受け止めようかという無謀な光景。

 次の瞬間まもりの足が石床にめり込み、蜘蛛の巣状のヒビが広く駆けめぐる。

 だがそれでも、まもりは【不動】の効果で一歩も動かない。


「レベルが上がっただけじゃないわ! 私たちには今、最高に頼れる盾がいるの! どれだけ火力が高ろうが、関係ないっ!」


 そう叫んでレンは、【銀閃の杖】を構える。


「【魔砲術】【フレアバースト】!」


 強烈な爆炎が、獣の王を吹き飛ばす。

 そのまま地を転がって起き上がったところに、駆けてくるのはツバメ。


「【加速】【跳躍】【回天】!」


 その頭部に【村雨】を振り下ろす。

 獣王はその高い機動性でかすり傷程度に収めたが、ツバメの動きはそもそもオトリ。

 次の瞬間、広い空間を回り込むように飛んできた【王樹のブーメラン】が獣の王の側頭部に直撃。

 これには獣の王も弾き飛ばされ、慌てて態勢を立て直す。

 すぐさま振るわれる尾に、メイとツバメは回避態勢に入るが、その軌道は斜めの振り上げ。

 遅れて尾から生まれた無数の光芒が、ばらまかれる。


「「っ!!」」


 メイとツバメは迫る十字の輝きを、必死の回避。

 次々に爆発する光芒の攻撃範囲は広く、しかも数が多い。

 それでも見事な回避を決められたのは、二人がさらに回避技術を上げたからだ。

 だが獣の王も、このやっかいな攻撃を次の手を確実に決めるためのエサにするという、技量の上昇を見せる。

 前足を強く鳴らすと、広がる紋様が付近一帯を埋め尽くし、次の瞬間足元から光が伸びあがる。

【光の枝】は、当たれば『つかまれる』拘束系スキルだ。


「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】!」


 距離を取ることで回避を図るが、攻撃範囲が広く着地際にまだ判定が残る仕様は、二人の足をしっかりつかむ。

 十字光を回避させたところを光の枝でつかむという連携を成功させた獣の王が、放つは木の葉の嵐。

【リーフブレード】は以前よりも威力を上げ、さらに180度の方向を薙ぎ払う。


「いーちゃんっ!」


 しかしこちらにも、風を使った攻撃に対する防御手段がある。

 メイの肩に現れた白いイタチの吹かす風が、前衛二人を葉の刃から守ってみせた。


「まだですっ!」


 この時すでに、獣の王の脚部に光の紋様が描かれていた。

【光の枝】で捕まえたプレイヤーを葉の刃で切り裂き、最後は突進でトドメを差す。

 そんな恐ろしい連携の締めは、【波紋突進】だ。


「きますっ!」


 爆発的な加速を得た獣の王の突撃は、角から広がる紋様にもダメージ判定あり。

 かつてはその光の紋様に引っかかり、6割ものHPを持っていかれた驚異の一撃。

 角と紋様を輝かせながら、王が猛然と迫りくる。


「メイ! 準備できてるわ!」


 葉の刃をまもりの盾で斬り抜けたレンは、すでに動いていた。


「りょうかいですっ! 【バンビステップ】!」

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】!」


 二人は並んで全力疾走。


「【スライディング】!」

「【ラビットジャンプ】!」


 ツバメは足元を滑り、そのまま危機を脱する。

 一方メイは広がる紋様の隙間と飛び越えながら、アイテムを使用。


「【ターザンロープ】!」


 なんとその大きく長い角に、しっかりとロープを引っ掛け着地。

 前回の戦いでは、獣の王にロープを引っ掛けた状態のままブンブンと振り回された。

 だが今回は――――引っ張り回す方だ。


「……【ゴリラアーム】」


 獣の王の勢いを利用するように、そのまま一力強く回転。


「それええええええ――――っ!!」


 ハンマー投げのような流れで放り出せば、獣の王は足をもつれさせ転倒。

 そのまま砂煙をあげて転がっていく。


「解放!」


 その先にあるのは、【設置魔法】の陣。

【フレアバースト】が爆炎を上げ、転がった先にあるのは二つ目の陣。

 さらに吹き上がる爆炎が、獣の王を吹き飛ばす。

 そして二度の爆炎に焼かれた獣の王が転がった先にあったのは――。

 三つ目の【設置魔法】の陣。

 それは【罠の心得】によって『2つ』まで仕掛けられるようになっている【設置魔法】を、【増幅のルーン】でさらに増やして生み出したものだ。

 燃え上がる爆炎。

 だが、それでも流れは止まらない。

 なんと続けて四つ目の陣が、爆炎を吹き上げる。

【設置魔法】の陣は、四つ縦に並んでいた。

 四度目の爆炎を喰らった獣の王は、回転しながら地を跳ね転がる。

 ここでレンは、静かに杖を構えた。


「【コンセントレイト】【超高速魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】」


 放たれた炎弾は、流星のように空を駆け直撃。

 獣の王の胴体を貫くように、被弾部の反対側から炎の線を走らせた。


「……前回の大型イベントの時より強くなった獣の王を、さらに超えてるね」

「さっすがメイ! かっこいいじゃーんっ!」


 思わずのめり込んでしまう、アーリィとバニー。

 もしも今、新たにやってた敵がメイたちの戦いに加勢しようというのであれば、すぐにでも対応する。しかし。


「できればこのまま、獣の王との再戦をこの場所で見続けたいものだな」

「本当だにゃん……!」


 互いを知るからこその早い戦いに、そんな事を願ってしまう夜琉たちだった。

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] そういえば獣の王、でかいけど超俊敏だったよね… でかいと鈍重は筋肉がいらない草食動物だけで、筋肉ある肉食雑食動物はその筋力で俊敏さが出るもんね… [気になる点] 超広範囲攻撃の応酬に気付い…
[一言] 論理クイズは各フィルターの数値が1になってるところを全部数えて、0のところは数えないと言うことね。
[一言] やはりあの時にいなかった新メンバーのまもりが鍵になりますね。
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