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985.まもりと灰猫

 メイの一撃必殺を警戒して、分隊化して動く世界維持機構。

 自然とこちらも、分かれての戦いとなった。

 8体のアサシンに、狙われる形になったまもり。


「【ダンシングブレード】」

「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾盾!」


 両手の短剣による、踊るようなモーションで放たれる連撃を、しっかり右の盾で防御する。


「【地獄極楽突き】」


 その隙を突き、反対側から放たれる高速突き。


「【地壁の盾】!」


 しかしこれも、ほぼノールックで左の盾を使って防御。

 見事な防御を見せるが、3人目の元攻略組アサシンが、空中から接近。


「【氷切断】!」


 手刀の振り降ろしと共に放たれる氷刃で、二つの盾の間を狙う。


「【浄炎】!」

「くっ!」


 それに気づいたのは灰猫。

 白の炎弾をぶつけて、まもりへの攻撃を防いでみせた。


「あ、ああありがとうございますっ!」


 再会に時間が空くとすぐに、『気安く自分が声とか掛けていいのか?』の感じになるまもり。

 まして不機嫌顔が通常の灰猫に、慌てて頭を下げる。


「まだまだ続くにゃん!」


 遅れてやって来た、残り5体のNPCアサシンたち。


「【光刃惨華】」


 光の刃を生み出し放つ、三連続の剣舞。


「【溜め防御】【クイックガード】【地壁の盾】盾盾!」


 これを防御すると、舞い散る燐光の中に影が差す。


「【伸身宙返り】【四連剣】」


 三連撃のアサシンを飛び越す形で襲い掛かってきた2体目のアサシンが、空中から四連の剣舞を放つ。

 それはまもりを飛び越える形での攻撃ゆえに、防御は反対側になる。

 それでもまもりは体重移動一つで『向き』を変え、左手の盾で全てを受け切った。


「【刺虎殺】」

「【刺竜殺】」


 この隙を突き、低い姿勢で駆けて来ていた2体のアサシンの刺突を、2枚の盾でそれぞれ抑える。

 後は5体目の攻撃を受けて、反撃に入るだけ。


「【影差し】」


 しかし5体目のアサシンは接近ではなく、その手を地面につけてスキルを発動。

 すると、まもりの影に異変。


「【十字光弾】!」

「くっ!」


 敵の影から突き立たせる刃の魔法が発動する前に、十字型の魔力光を術者にぶつけることで強制停止。


「【ローリングシールド】!」

「「ぐああああ――っ!!」」


 まもりはここで、盾による回転撃を使用。

【溜め防御】によって火力をあげた一撃が炸裂し、アサシン4人を弾き飛ばす。


「……っ!? じゅ、【十字光弓】だにゃん!」


【ローリングシールド】の火力に驚きながらも、灰猫は残ったアサシンを攻撃。

 四本の光の矢が全て刺さったアサシンは、そのまま倒れ伏した。

 早々にNPCのアサシンを打倒した二人。

 だがここから迫る3人は、元攻略組だ。


「【十字輝光】」


 灰猫は自身の周りに、小型の十字光を展開して迎え撃つ。


「【影走り】」

「っ!」


 しかし浮かぶ十字光の隙間を高速で抜け、手にした剣で攻撃を二発。


「【浄炎】!」


 かすめていく刃。

 跳び退きから放つ反撃も大きなサイドステップでかわされ、元攻略組は再び攻撃に入る。


「【鋭角斬り】」

「にゃっ!?」


 灰猫の左側を斬り抜けで駆け、すぐさまターン。

 今度は灰猫の右側を斬り抜けるという、二連撃スキルで見事にダメージを与えてきた。


「【無惨刺突】」

「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾盾!」


 一方残り二人の元攻略組は、まもりを狙う。

 四連続の短剣突きをまもりが防御すると、すぐさま二人目が前に出る。


「【紅蓮刀】」

「【天雲の盾】!」


 振り上げる太刀は、炎で作られたもの。

 まもりはとっさに防御属性を変更して、対応する。

 完全に防御されているが、二人がかりでまもりを釘付けにすることで、接近に弱い灰猫に1対1を強要できる。

 これはまもりの防御が異常な精度を誇る事を認識したうえでの、上手な戦いだ。


「【影差し】」

「っ!」


 中でも防御の及ばない足元からの攻撃は、しっかり移動して回避しなくてはならないのが大きい。

 盾を使えない攻撃を挟むことで、余裕を作らせない戦闘は見事だ。


「【浄化紋】!」


 足元に生み出す紋様から、噴き出す白炎。

 これによって灰猫は、迫る元攻略組の足を止める。


「【投擲】」

「にゃっ!」


 しかし炎が消える瞬間に放たれた【ブレード】が刺さり、体勢を崩された。


「今だ!」


 すぐさま駆け込んでくる元攻略組。


「えっ!?」


 一気に勝負を付けようと、まもりを攻めていた二人も突然ターゲットを変更して接近。

 三人同時に放つ攻撃、おとずれた窮地。


「そうはさせないにゃん! 【十字剣】!」


 振るうは、十字型の大型魔力剣。

 しかし元攻略組は、全員がこれをかわして剣を引く。


「全員回避にゃん……っ!?」

「貴様の攻撃はとうに心得ている。ここでは【デモンスレイブ】が使えないこともな!」


 地形を変える火力を誇る上位上級魔法も、地下のこの場所で、相手がプレイヤーとなれば使用が難しい。

 灰猫を知る元攻略組全員が、後方への移動で魔力剣を回避。


「ゆくぞ! パワーアップした我々が、ここで貴様に引導を渡してやる――!」


 三人はすぐさま、距離を詰めに迫る。


「そう簡単にはいかないにゃん! 【聖十字乱槍】!」


 大地に右手を突き、放つスキル。

 直後、足元から数十本ほどの大きな黄金の十字架が乱雑に突き上がる。

 しかし元攻略組の三人は、ここはしっかり防御で対応。

 2割ほどのダメージを受けたが、戦いの優劣は動かない。


「……マズいにゃん」


 魔力の十字架が消えればまた、三人がかりの攻勢が始まる。

 おそらく最高火力スキルの、同時使用でくるだろう。

 そうなってしまえば、おそらく助からない。

 緊急回避を持たない自身の足の遅さを、灰猫が悔やんだ瞬間だった。


「【チャリオット】【溜め防御】【天雲の盾】!」


 まもりは突き立った黄金の十字光を弾き飛ばしながら、足止め中の元攻略組のもとに接近。


「「「ッ!?」」」

「いきますっ! やあああああ――っ!」


 そのまま【魔神の大剣】を、全力で振り払う。


「「うああああああ――――っ!!」」」


 灰猫の生み出した攻撃判定持ち魔法を防御しながら進むことで、『溜め』を成立させての攻撃。

 防御を容赦なく崩され、二人の元攻略組が弾き飛ばされた。

 これで一人を即座に打倒し、生き残ったもう一人も消え始めた黄金の十字にぶつかり敗北。


「なんだ、その連携は……っ!?」


 十字光を喰らうか、その場で防御してまもりの剣に斬られるか。

 とんでもない二択に、生き残った三人目の元攻略組が驚きの声をあげる。


「だがもう同じ手は喰わぬ! 盾使いと共に戦う事を選んだのが、貴様の敗因だ!」


 そして、突き立つ十字光が消えた。


「【疾走破】!」

「【浄炎】【浄炎】【浄炎】だにゃんっ!」

「当たるか、そんなものっ!」


 高速移動で一気に距離を縮める元攻略組は、飛来する白炎球を次々に回避して迫る。

 そして、手からは武器を離している。

 まもりの【かばう】は、誰かに攻撃が向かなければ発動しない。

 よって直前まで攻撃の姿勢を見せなければ、割り込まれることもない。


「ま、間に合いません……っ!」


 元攻略組の後方を大急ぎで追いかけるまもりだが、やはり間に合いそうにない。


「……終わりだ。貴様はここで消えろ、祓魔師ィィィィ!!」


 迫る元攻略組を前に、もはや身動きも取れない。


「ゆくぞ、無明刺突――!」


 迫る敗北へのカウントダウン。


「…………レベルを上げたのが自分だけだと思ったら、大間違いにゃん」


 しかし灰猫はそう言って、その手を伸ばした。


「――――【聖火白砲】」


 放たれたのは、燃え盛る白炎の球。


「【跳躍】ゥゥゥゥ――ッ!!」

「「ッ!?」」


 灰猫の【敏捷】では、攻撃の回避は不可能。

 ならば選択は防御になると踏み、元攻略組は『貫通』する必殺の一撃を選択したが、これを即座に撤回。

 大慌てで跳び上がり、迫る白炎を回避した。

 なぜなら灰猫の放った柑橘系果実ほどの大きさの白炎球は、付近が歪んで見えるほどの熱を発していたからだ。

 こうして、放った必殺魔法はギリギリでかわされた。


「しまったにゃん……」


 灰猫が顔を青ざめさせる。

 思わず口端に笑みがこぼれる攻略組。

 着地と同時に、攻撃体勢に入る。


「っ! まもり、防御してにゃん――っ!」


 かわされた白炎球はそのまま、元攻略組の背後を追って来ていたまもりに向けて飛んでいた。

 もはや自分は助からない。

 ならばせめて、自分の放った魔法にまもりが巻き込まれるのだけは避けようと、叫ぶ灰猫。


「天雲の……!」


 その声が聞こえた瞬間、まもりは左手の盾を白炎の方へ。

 しかし突然思い止まると、とっさに使用スキルを変更。


「【マジックイーター】!」


 まもりは迫る白炎球を、盾に吸い込んだ。


「しゃ、しゃがんでくださいいいいっ!」

「にゃんっ!!」


 メイたちの冒険を、その後も動画や広報誌でも追っていたアーリィたち。

 すぐさまその狙いに気づき、灰猫は慌ててその場に伏せる。

 そして頭を抱えるようにして、防御態勢を取った。


「【聖火白砲】っ!」


 かわしたはずの灰猫の奥義魔法が、再び放たれる。

 聞こえた声に、振り返る元攻略組。

 そこには、さきほど確かに避けたはずの白熱光球。


「……な、にィィィィィィィィ――――っ!?」


 盾から放たれた白炎球は、そのまま直撃。

 炎が一気に燃え上がり、空中でまばゆい白光を放って炸裂。

 熱波で付近の温度が上がるほどの火力は、視界を蜃気楼のように揺らがせる。

 神々しい燐光が降り注ぐ中、元攻略組のアサシンは焼き尽くされ、そのまま倒れ伏した。


「か、勝てたにゃん……」

「な、なんとかなりました……っ」


 大きく安堵の息と共に、その場に倒れる灰猫と、緊張からの解放にヒザを突くまもり。

 灰猫の不機嫌顔もこの時ばかりは緩んでいて、まもりはちょっと笑ってしまうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズですがもう少し踏み込んだヒント行きますね。 六桁の二進数のどこが1か0なのかを求めれば良いわけです…と言うことは? 後一つの表では求めるのが難しいならどうしたら良いのか…。
[良い点] ノールックや体重移動だけでガード仕切るとか、メイちゃんの野生回避並に攻撃側の精神ダメージでかそう。 特に攻略組みたいに自信ある人らには… [気になる点] ガード中に盾で轢き逃げしつつ大剣で…
[一言] ちなみに罰ゲームは追いかけられて追い付いたらではなく、スティールをミスした時点で行われます。
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