983.攻略組
「バニーちゃん!」
突然の登場に、驚くメイ。
バニーはメイに向けて、得意のウィンクを一つ。
ヴォーパルバニーによる攻撃は元攻略組たちの勢いを、一気に押し留めた。
「最高のタイミングになったね」
そう言いながら紋様ブロックの上を駆けて来たのは、戦乙女アーリィ。
淡い金の長い髪に、白羽付きの金冠を乗せた少女。
白銀のライトアーマーに、緑色のスカートが特徴的だ。
「【疾走縮地】」
そこに飛び込んできたのは、一人のアサシン。
新たな登場人物の登場など、お構いなしだ。
閃く一撃に、しかしアーリィは動じない。
「【爆歩】【月穿ち】!」
そんな戦乙女の真上を爆発的な勢いで跳んできた、長い白髪の華奢で小柄な少女。
白の袴に薄水色の羽織をなびかせて、振るうは白銀の大太刀。
「ぐ、ああああああっ!!」
それでなくても豪快な一撃をカウンターで叩き込まれたアサシンは、そのまま冗談のような勢いで斬り飛ばされて転がり、立方体ブロックにめり込んだ。
「前のフロアにいたプレイヤーたちが、メイたちの進んだルートを教えてくれたんだ」
着地した夜琉は、そう言って太刀を鞘に戻す。
「【十字光弓】」
黒のふんわりショートボブに、悪魔の角、黒レースの衣装をまとった少女が光の弓を引いて放つと、4本の光の矢が追尾で飛ぶ。
そして着地後の夜琉を狙った【痺れナイフ】投擲を、払い飛ばしてみせた。
十字の杖を降ろしながらやって来たのは、灰猫。
「皆のおかげで、早く来られたにゃん」
「世界維持機構のアサシンたちと元攻略組のことは、やっぱり気になっていたからね」
「彼らとの因縁は、晴らしておきたくてな」
「お邪魔しちゃっても、良いかなっ?」
「もちろんですっ!」
こうしてアーリィたちが、メイたちと共に並ぶ。
世界維持機構の面々と、向かい合うエルラト冒険チーム。
両者の間に、緊張が流れ始める。
「ここは任せる。我らには帝国残党を片付け、世界を守るという使命がある。その前に、欲深き冒険者たちを片付けろ」
元攻略組に与えられたクエストは、旧文明の遺跡を超えてきたメイたちの打倒。
「了解した」
踵を返し、先へと進む管理者。
クエストを受注した元攻略組のプレイヤーたちは、アサシンたちを代表するように前に出た。
「エルラトへ向かう途中で分かれた者たちと、よもやこういう形で対立することになろうとはな」
「……こちらの残りは、約36人ほどか。充分な人数差だ」
攻略組で常に先陣を切って戦っていた、戦闘部隊の中心人物がつぶやく。
部下と言えるのであろうアサシンたちと、元攻略組で世界維持機構の一員となった13人の冒険者。
世界の背後で暗躍していた者たち。
ゼティアの門の情報を統制していた一団がズラリと並んだ姿は、壮観の一言だ。
「そもそも我らとの戦いは、少人数で行われる想定のものではない」
元攻略組の中心人物が、こちらに向けて問いかける。
「攻略組では最前線で戦闘を行い、さらに世界維持機構によって強化された我らに、勝てると思っているのか?」
「……どちらかというと『負ける気がしない』っていう感じかな」
しかしアーリィは、そう言って笑う。
「そーいうことっ! バニーちゃんとメイが一緒で、負けるビジョンが想像できないんだよねーっ」
「強化だったら、こっちも負けていないにゃん」
バニーや夜琉たちも、アーリィの言葉に続く。
「それに私たちも、この世界の崩壊を望んでいるわけではないわ。ただこのまま世界維持機構に任せてしまうわけにもいかないってだけのことよ」
「何者も『門』に近づけない事だけが、世界の崩壊を防ぐ唯一の方法だ。ならば不用意に『鍵』や『門』に手を伸ばそうとする貴様らの行動は、『間違った正義』以外の何でもない。ここで消えろ……欲望と好奇心に駆られた冒険者ども」
対して一歩も引かず、ただただ冷徹に言葉を返す元攻略組。
自然と、にらみ合う両者。
「……まさか世界を救うために戦う事を選んだ我らの前に、かつての戦友が立ち塞がるとはな」
聞こえたつぶやき。
アサシンたちの中心にいた元攻略組が、声をあげる。
「旧世界の愚かな過ちを繰り返さぬため、危険な冒険者たちを……ここに抹消する――――!」
元攻略組の戦闘チームを率いていた青年はそう宣言して、武器を手に取った。
「かかれ! 一人たりとも逃さず抹殺しろ!」
「「「了解!」」」
一斉に駆け出す、世界維持機構の構成員たち。
迫り来るアサシンの一団は、そのままメイたちに襲い掛かってくる。
「いきますっ! 【ソードバッシュ】!」
「分担しろっ! 数を集中させれば、広範囲攻撃の的になる!」
この一言に、アサシンたちはすぐさま分割。
吹き荒れる衝撃波をかわしながら、各自の目標に向けて走り出した。
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