975.突き進むメイたち!
「……レンちゃんたち、どうしてるかなぁ」
「きっと何も問題なく、地下を進んでいると思います」
「そうだよねっ」
そう言って笑い合う、メイとツバメ。
「でもこうやって、獣たちの鳴き声とか自然音がしない密林って不思議な感じだな」
「まったくぽよ」
「メイさんとしては、魔物の足音が聞こえやすかったりしますか?」
「はいっ。茂みを通る時の草の音が聞こえやすいかもっ」
「さすが、実家がアマゾンだと違うな」
「アマゾンではございませんっ!」
「おいおい、メイちゃんはアマゾン住まいなんかじゃないぞ」
「そうなんですっ!」
「ボルネオ島だぞ」
「違いますっ!」
遺跡深くに広がる、魔物の密林。
そんな緊張の空間でも、自然と盛り上がってしまうメイたち。
メイとツバメはもちろん、掲示板組も楽しそうだ。
そして木々の密度が下がった、広い空間に出た瞬間。
「……ここからは少し、ハードかも」
やはり最初に異変に気づいたのはメイ。
空中を速い速度で滑空してくるのは、怪鳥型機械。
完全な鳥というよりは、グリフォンのような雰囲気をしたその魔物は計8体。
一斉に攻撃体勢に入る。
「【グリーンハンド】! 【バンブーシード】!」
しかしメイが手を突き、スキルを発動すると一気に高々とした無数の竹が天を突く。
そして怪鳥型を、まとめて竹の檻に封殺。
激突した魔物たちは地に落ちる。
「おおっ! 敵の先手にカウンターが入ったぞ!」
「いけいけ! 飛行型は落ちた時が狙いどころだ!」
「【奈落落とし】!」
半裸に金仮面の男が、いち早く叩き込むハルバードの一撃。
前衛組も続けて踏み込み、次々に怪鳥型に攻撃を叩き込む。
一瞬で戦況を圧倒的有利にしたメイの目はしかし、すぐに次のターゲットを確認。
見えたのは、巨大なヘビ型機械。
下草に身を隠しながら、一人の剣士に狙いを定めている。
「ッ!?」
突然背後から首を持ち上げた大蛇に、思わず硬直する剣士。
「【バンビステップ】!」
メイはすぐに走り出すが、大量にそびえる竹が今度は邪魔になる。しかし。
「ちょっと道を開けてくださーい!」
その一言で【密林の巫女】が、一斉に竹をしならせ道を開く。
「おおっ!」
「竹が道を開けていくぞ!」
その壮観な光景に、目を奪われる掲示板勢。
竹の檻を駆け抜け、一気に剣士のもとに駆けつけたメイ。
するとその大蛇の後をつけるように、もう二体ヘビ型がいた事に気づく。
一体目に攻撃を叩き込めば、残り二体が攻撃に入るという罠のような布陣になっていたようだ。
メイはすぐさま足元に手を突く。
「【グリーンハンド】【アイヴィーシード】!」
すると一気に伸びたツタが、三体の大蛇を捕らえて拘束。
剣士への攻撃はもちろん、オトリの布陣までまとめて崩した。
「その計算では、メイさんにダメージを与えるには甘かったようですね【マグネットマイン】!」
「我は放つ【爆炎矢】(バーストアロー)!」
すぐさま追ってきた計算氏と、90年代氏の攻撃。
どんな位置から投げても、敵に向かって飛んで張り付く爆弾が炸裂。
続けて90年代氏の放つ炎の魔法が、大蛇を焼く。
「ありがとうございますっ! 最後は全力の【フルスイング】だああああ――――っ!」
残った一体を、メイの剣が斬り飛ばして打倒。
続く敵の攻勢を、見事に弾き返してみせた。
「……やっぱメイちゃん、実家アマゾンだよね?」
「違いますっ! ……ニュ、ニューヨークです……」
「っ!?」
もはや日本でもない設定に、ツバメはさすがに噴き出してしまう。
「ん……? これはなんだ?」
しかし木々の多いこの区間、掲示板組の一人が異変に気付く。
木々を渡るようにして、伸びていく枝葉。
それは鉄条網のようにメイたちを囲い込み、また非常に固い。
短剣を振るうも、一撃では切ることができなかった。
「閉じ込められた……!?」
「おい、あれを見ろ!」
生み出された自然のリングに入ってきたのは、巨大な灰色クマ型機械。
その体躯は、見上げるほどだ。
さらに状況は変わる。
付近の木々の実から吐き出されるのは、花粉のごとき大量の白粉。
「視界が……っ!」
「この白霧状態の中で、クマと戦えってのか……! 【フレイムバレット】!」
放つ魔法は、光を一瞬輝かせて消える。
どうやらすでに、灰色クマは動いてようだ。
「伏せてくださーい!」
聞こえたメイの声に、全員がすぐさまその場に伏せる。
するとマウント氏の頭上スレスレを、灰色クマの爪が右から左へ抜けていった。
「あっぶねえ!」
「いーちゃんお願いっ!」
しかしメイは慌てない。
肩に現れたいーちゃんが吹かす暴風で、白粉を吹き飛ばす。
「【飛び跳ね】!」
「【バンビステップ】!」
そして走り出す、スライムとメイ。
クマの前に躍り出たのはスライム。
振り上げた爪が降ろされる前にタックルを左足に決め、姿勢を『二足』から『四足』へと崩す。
すると灰色クマは四足の状態から、喰らいつきにきた。
「うわっと!」
メイはこれを急停止で回避。
するとスライムのタックルがクマの側腹部に当たり、さらにバランスを崩す。
「ありがとーっ! 【キャットパンチ】パンチパンチパンチ! からの【カンガルーキック】!」
すぐさま頭部に四発の猫パンチを叩き込み、ジャンプ前蹴りで再び体勢を崩す。
「【飛び跳ね】【材質変化・鋼】【ボディプレス】ぽよーっ!」
続く連携。
頭上から落ちてきた鋼鉄スライムの落下に、灰色クマが弾かれ転がる。
「メイさんっ! 【材質変化・鋼】【可変・大槌】!」
「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」
二人のコンビネーションは止まらない。
大型ハンマーになったスライムを掲げたメイは、そのまま跳躍して一回転。
「それええええええ――――っ!!」
力いっぱい振り下ろす。
深々と突き刺さった、スライムハンマー。
地面をバウンドして転がった灰色クマは、そのまま鉄線のような枝葉に突っ込み急停止。
「お願いします! 【危険植物ちゃん】!」
しかし最後のメイが投じた種が、クマの前の地面で発芽。
【密林の巫女】であっという間に伸びた種は、化物のような巨大な花を咲かせる。
そしてHPの大きく減っていたクマに喰らいつくと、そのまま容赦なく飲み込んだ。
「……すげーっ」
「女の子がデカいハンマーを振り回す姿は、やっぱいいな!」
「スライムちゃんとメイちゃんも、また普通に面白い連携するよなぁ」
最後はメイと、身体を伸ばしたスライムのハイタッチ。
皆も拳を振り上げて歓喜する。
「楽しいし、負ける気がしないな!」
植物祭からイタチ、スライムと続く連携に、半裸金仮面も満足そうだ。しかし。
「お、おい金仮面、後ろ! 後ろっ!」
「……え?」
振り返るとそこには、その口を大きく開いた危険植物の姿。
「メイちゃんの危険植物って、プレイヤーも喰う感じなの!?」
「逃げろ! 今すぐ逃げろーっ!」
全力で走り出す掲示板組に、メイとツバメも続く。
「待ってくれ! このままだと喰われるーっ! ていうかこの植物、動くのかよォォォォーッ!」
砂煙をあげ、猛然と追ってくる危険植物。
最後尾の金仮面の悲鳴に、逃げながら笑う掲示板組。
「わあーっ、これは大変だーっ!」
「とても大変です……っ!」
つられてメイとツバメも笑う。
快進撃を続ける地下密林組はもう、楽し気な笑いが止まらない。
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