973.サクサクのメイチーム
「申し訳ないぽよ」
スライムたちの加勢に入ったメイたちは、掲示板組と共に強制転移してしまった。
迷子ちゃんたちとの離別がそのきっかけだったと知り、申し訳なさそうに縮こまるスライム。
「いえいえっ」
「迷子ちゃんさんも強力な前衛です。すぐに合流できると思います」
十人ほどの掲示板チームとメイたちがたどり着いたのは、円形の紋様が描かれたブロックの上。
広い空間には、地下にも関わらず木々が鬱蒼と生えている。
もはや密林のようだ。
「それにしても……すごい区画だな」
掲示板民が感嘆する。
石壁に浸食している草々はもちろん、天井からも垂れ下がるツルなどは、なかなか見られない光景だ。
しかしメイたちは、この事態にも慌てることはない。
「再会目指して、がんばりましょうっ!」
「「「おーっ!」」」
メイが拳をあげると、掲示板組も楽し気に拳を突き上げた。
こうしてメイたちは、広い地下密林へと踏み出していく。
放置されたテラリウムのような空間は、下草の深さもまちまちで、自然と緊張感が高まっていく。
「何かが近づいてくる……っ」
この状況下、とにかくメイの『耳』は早い。
駆けてくる足音の荒さは、間違いなく敵だ。
この言葉で、掲示板組も戦闘態勢に入る。
「ッ!?」
突然草むらの中から飛び出て来たのは、一体の豹型機械。
その敏捷性をそのままに大型化した個体は、攻撃力も備えた強敵だ。
「【裂空剣】!」
しかしメイが先んじて危機を伝えていたことで、準備は万端。
放たれた空刃の一撃で、豹型はまさかのカウンターをもらうことになった。
転倒から即座に態勢立て直すも、その時すでにマウント氏は攻撃体勢に入っている。
「【凪一閃】!」
豪快な振り払いは、そのまま豹型に追撃として叩き込まれた。
「最後は、遠くからの攻撃でお願いしますっ!」
さらに追撃へ向かおうとする掲示板組に、メイが叫ぶ。
そして掲示板組はこの時、メイの言葉に一切の疑問を挟まない。
「【マグマシェル】!」
即座に攻撃方法を魔法に切り替え、豹型を打倒。
その判断が功を奏する。
直後、豹型の後方にあった木についた無数の実が一斉に爆発。
ショットガンのような攻撃は、付近の木々に穴を穿った。
「うおおっ! メイちゃんよく気づいたな……っ!」
メイの目は木の実が『震えていた』ことに気づき、爆発の可能性を予期していたのだった。
歓喜する掲示板組だが、始まった密林の攻勢は止まらない。
新たに近づいてくる黒豹型の数は、なんと七体。
深めの茂みを渡るようにして駆け、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
「【突破槍】!」
衝撃波を生む槍の突き出しを、かわす黒豹。
「【フレイムエクスプロード】!」
しかし回避の瞬間を狙った炎の爆破魔法が直撃して、体勢を崩した。
「【乱雑斬り】!」
続く短剣の剣舞で、一気に打倒。
残る六体の黒豹も、自慢の足を飛ばす。
その中の二頭は、回避や防御能力が弱い後衛を狙って飛び掛かる。
「スライムさん【投擲】!」
「【帯電】! からの【大回転】ぽよーっ!」
しかし後衛の守りは、スライムが担当。
ツバメの投じた【雷ブレード】で帯電し、姿を変更。
地面から伸びるスライム棒に変形しての回転撃で、二体まとめて弾き飛ばした。
これで早くも残りは四体。
「【バンビステップ】!」
メイは、追ってくる三体の豹型に背を向ける形で逃走。
背後の個体が【喰らいつき】に入ったところで、木を蹴る。
「【モンキークライム】!」
メイがそのまま木を蹴り上がったことで、飛び掛かった豹型は木の幹に激突して体勢を崩す。
追ってきた二匹も、その場で慌てて急停止。
慌てて振り返るが、メイは木の幹を蹴って華麗にバク宙。
「大きくなーれ! 【フルスイング】っ!」
伸ばした【蒼樹の白剣】を、着地と同時に全力で振り下ろす。
「さすがメイちゃんうまい……っ!」
消し飛ばされて消える三体の豹型に、思わず目を奪われる。
やはりメイ、密林の戦いは動きが段違いだ。
「【投石】!」
そして一撃を決めた後だというのに、その意識はまるで途切れない。
すぐさま投じた石が、この隙に隠れて掲示板組を狙っていた豹型を転がす。
これを見た掲示板組剣士は、すぐさま駆けつける。
「やっぱメイちゃんと一緒だと、負ける気がしねえなっ!」
そしてフラグを立てた瞬間、枝で『つかみ』に来るタイプの植物モンスターに捕まった。
「しまったぁぁぁぁーっ!」
「お前そういうところあるぞ! 【ファイアボール】!」
すぐさま後衛魔導士が、炎魔法でけん制。
慌てて逃げ出す掲示板組剣士だが、伸びる枝は強固かつ速い。
「うひゃああああ! やばぁぁぁぁい!」
「【ターザンロープ】!」
掲示板剣士はメイの投じたロープに捕えられ、空を飛ぶような形で引き戻される。
「すまないメイちゃん! 罰としてこのまま最後の豹型にぶつけてくれ!」
「ええっ!?」
「あいつは俺が倒すよ!」
「りょうかいですっ! それええええーっ!」
助けた味方を振り回し、そのまま最後の豹型に投擲。
「いくぞおおおお――っ! 【炎舞一刀斬り】!」
掲示板組剣士は一直線に豹型に迫り、燃え盛る剣で両断。
豹型を斬り抜ける形で地面に足を着き、数メートルほどゴロゴロと転がって制動。
止まって剣を振り下ろすと、ちょうどのタイミングで爆炎があがり打倒。
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
まるで狙ったかのような派手な連携に、思わず全員で歓声をあげてしまう。
しかしこの派手な動きに全てが意識を奪われている間に、迫っていたのは中ボス級の白虎型。
「「「ッ!?」」」
突然茂みから現れたその巨体には、さすがに『聞こえていた』メイ以外ビックリするが――。
それでもメイは「おおーっ、これは驚いちゃうね!」と、笑うだけ。
なぜなら【ターザンロープ】から爆炎斬りの派手さに皆の目線が奪われている隙に、気配を消していたのは白虎だけはない。
慌てる掲示板組。
そんな中ツバメは、しれっと白虎の真横の草むらから登場した。
「【アサシンピアス】」
皆の意識から消えていたツバメ、弱点に一撃でクリティカルを叩き込む。
なんと白虎型は、一撃で倒れて消えた。
「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」
再び上がる大きな歓声。
「た、楽し過ぎる……っ!!」
「なんだよ、緊張の密林になるはずが……最高の狩場じゃねえかっ!!」
「これがメイさんたちと一緒の戦いぽよーっ!」
動物型機械は強く、植物と絡むことでさらにやっかいになる。
そのため、息を飲むような緊張を求められる造りになっている地下密林。
それにもかかわらずメイたちを中心としたこの一団は、全員が楽しそうに進む形となった。
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