971.真・王都地下
「扉が開いたぞォォォォ――ッ!!」
「行け行けぇぇぇぇー! ここが王都地下の裏側だ!」
「メイちゃんたちと、ゼティアの門を目指すんだ!」
「行くぞすみれ」
「うんっ……!」
メイたちによって発見され、迷子ちゃんを始めとする掲示板組の後押しによって確定した、王都地下の新区域。
その情報は一瞬で広まり、プレイヤーたちが一斉に流入。
ラプラタでメイたちとぶつかった剣士姉妹も、大きな扉を潜って地下を突き進む。
「遺跡の魔物型機械も一斉に動き出してるから、気を付けて進め! 運がよければ装備やスキルなんかも見つかるぞ!」
「世界級クエストのダンジョン攻略、楽しくなってきたわぁん」
「ワクワクしちゃうよねっ」
そこには新大陸で競ったキュービィやココといった、七新星たちも紛れ込んでいる。
トップクラスから初級者まで入り混じり、長らく放置されていた古き遺跡の地下を進攻。
メイたちがいるだけでなく、その途中には宝もあるため、参加者たちの勢いはすさまじい。
いよいよ王都地下の探検は、爆発的な盛り上がりを迎えていた。
◆
「【ローリングシールド】!」
飛び掛かってきた猛犬型機械を、盾で払って打倒する。
「はいそこっ! 発動!」
メイが走って集めてきた猛犬型を、【設置魔法】で焼き払う。
「急に遺跡らしい敵が出始めたましたね【電光石火】!」
そして残った個体を、ツバメが斬って打倒。
「当然だけど道が多いわね。全部を確認しようとしたら、どれくらいかかるのかしら」
「地図を作りながら進むくらいの覚悟が、必要かもしれません」
「て、敵の強さもまちまちですね」
「本当だねぇ」
その広大さは、これまでの遺跡をさらに上回る。
王都地下遺跡は場所によって敵の強さも異なっており、お宝目当てのプレイヤーにも『少し無理して良いスキル、装備』をつかめる、ドキドキのダンジョンだ。
死に戻り上等、イチかバチかで行くには最高の舞台でもある。
「誰か……こっちにくるかも! 追われてる感じ!」
そんな中、メイが猫の耳を傾かせてつぶやいた。
「地下遺跡に気づいたパーティが、もう近くまで来てるのかしら」
自然と武器を構える四人。
見えたのは、必死に仲間を抱えて走る魔導士。
それを追うのは、猛犬型より3回りは大きい巨狼型機械が二体。
エフェクト一つで、高速の突撃を仕掛ける。
「ッ!!」
魔導士はこれを必死にかわすが、低い【腕力】で他プレイヤーを抱えながらの戦いは難しい。
足が止まり、覚悟を決めるように杖を取る。
「あれって……!」
レンは黒い魔導士の姿を見て、思い至る。
「スライムパーティの魔導士だわ!」
「それにあの背負われてる子、迷子ちゃんさんです……!」
「【低空高速飛行】!」
すぐさま動き出したレンは、魔導士に喰らいつきに行く巨狼型に向けて接近。
【フレアストライク】を込めた【魔剣の御柄】で斬りつける。
「大丈夫?」
「この程度、大した問題ではな――――使徒長!?」
「誰が使徒長よ!」
「迷子ちゃんは、おまかせくださいっ!」
メイは【バンビステップ】で接近し、迷子ちゃんを回収。
「敵を止める魔法、いける?」
「ふ、私を誰だとお思いですか? 当然です! ――――切り裂け、【氷のイバラ】!」
足元を高速で伸びていく氷の枝から、生えた氷刃が巨狼型たちの足元を切る。
ダメージを与えた上に、体勢を崩すことにも成功。
「やっぱりそれ、良い魔法ね! 【フリーズストライク】!」
思わず下がった狼の顔面に激突した氷砲弾が、敵をそのまま吹き飛ばした。
「トドメは――」
「大丈夫、もう動いてるわ」
次の瞬間、二人の魔導士の頭上を飛び越えていくのはツバメ。
「【回天】!」
空中で華麗に一回転して振り下ろす【村雨】の一撃が決まり、巨狼型はそのまま粒子となって消えた。
「お、思ったより大型の魔物もいるんですね」
息をつくまもり。
ゼティアの門を使った国家の強化に、一番力を入れていた都市。
動き出した兵器型の数や種類も、かなり多いようだ。
「大変なことになってたみたいね。樹氷の魔導士はどうしてここへ?」
「ッ!!」
樹氷の魔女、レンが自分を『樹氷』と呼んだのを覚えていた事と、【氷のイバラ】の評価が高いことに思わず飛び上がって喜びそうになるが、全力で我慢。
「王都地下へ一緒に潜り込んだ者たちと、はぐれる形になったのです。扉が開き、この深い地下に駆け込んだところで、遺跡の防衛システムも一斉に動き出したのでしょう」
闇の魔導士らしい、ク-ルな雰囲気を崩さないよう告げる。
「その結果罠と魔物の同時攻撃により、我ら二人だけがこのようにはぐれる形に……」
「そういうことでしたか」
「それならスライムちゃんたちを探しながら、一緒に進みましょう!」
「それがいいわね。私たちもこの広い遺跡の中で行き先を決められてなかった感じだし、目的があると助かるわ」
「最高……悪くない提案ですね。使徒長たちとの共闘というわけですか」
危うく「最高じゃないですか!」と拳を突き上げそうになった樹氷の魔女、あらためて「フフフ、これは面白いことになりました」と不敵な笑みを作り直す。
こうして、逃げてきた二人と共に進むことにしたメイたち。
「ところで迷子ちゃんさんは、どうして置物のように固まっているのですか?」
「戦闘中に迷子にならないように、【痺れ針】で痺れさせているのですよ」
「「「……なるほど」」」
「おおーっ、そんな方法があるんだね……!」
戦闘中は痺れさせておく。
普通に考えれば、ありえない引率方法だ。
そのトンデモないやり方に、しかしメイたちは「なるほど……」と大きくうなずいたのだった。
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