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965.崩壊マップのお約束

 キノコ地獄を、無事に通り過ぎたメイたち。

 最後まで残っていたツバメの頭に生えたキノコを引き抜いて、王都地下を進む。


「……き、危険な感じがしますね」

「はい。このヒビの入り方は、崩落の可能性が非常に高いです」


 石積みの道は広く、高い。

 そして並んだブロックは、見るからに老朽化している。

 それは大きな規模の崩落や、岩塊などが落下してくる可能性が高い。

 四人は足音に合わせて、声まで小さくしながら進む。すると。


「「「「っ!」」」」


 踏み込んだ踊り場のような空間が、大きく揺れ出す。

 すると崩落によって石壁が崩れ、天井から落ちた岩塊が地面に深く突き刺さった。


「これ、殺しにきてるわね。ミスで一発死に戻りもあるレベルだわ」

「その場合は戻って再突入。また……キノコからですね」

「絶対に乗り越えるわよ!」

「りょうかいですっ!」

「はひっ!」


 見た瞬間に分かる、殺意の高さに息を飲む。

 予想通りここからは、HP減少と即死罠の連携による攻勢が続くようだ。

 そして最初の『崩れ』を見せた時点で、すでに崩壊は始まってる。


「いそぎましょうっ!」


 不穏な大音に、動き出すメイ。

 すると後方から早くも、崩落が始まった。

 戻れない状況。

 四人は駆け出し、地下道を突き進む。


「っ!」


 すると前方に、落下してくる岩を発見。


「【誘導弾】【ファイアボルト】!」


 落ちてくるオブジェクトに魔法を当てるのは、本来難しい。

 しかし【誘導弾】を使うことによって、レンは確実に命中させる。


「まだまだ! 【誘導弾】【フリーズストライク】!」


 続けざまの魔法攻撃で、さらにもう一つ先の岩を先行して破砕。


「さっすがー!」


 見事な進行だが、当然崩落だけでは済まない。

 続々と落ちてくる岩と、崩れる壁の隙間から飛び出してくるのは大型のネズミ。

 どうしても視線が上に向く状況で、足元を駆ける敵はやっかいだ。


「【投擲】!」


 しかしレンが早めに落下物を弾いてくれることで、ツバメは足元の敵に気づく。

 投げた【雷ブレード】が刺さり、ブラックラットはその場に硬直。


「【電光石火】!」


 そのまま斬り抜けで打倒。


「ツバメちゃんっ! 上!」

「任せて! 【フレアストライク】!」


 頭上から落下してくる岩塊が、レンの魔法で破壊される。

 しかしそのうちの一つはそれでも、ツバメの頭に落ちてくる。


「【ターザンロープ】!」


 これを狙ったのはメイ。

 投じたロープが砕けた岩塊の一つに絡んだところで、力強く引き付ける。

 メイの【腕力】なら、一メートルサイズの岩塊くらい問題なしだ。

 コースを変えた岩塊は、そのまま地面に突き刺さった。


「ありがとうございますっ」

「いえいえーっ!」


 メイはツバメに笑いかけ、ツバメは照れながらもほほ笑み返す。

 再び先行する前衛組。

 少し遅れて追いかけるまもりとレンの背後から迫るのは、胸元に渇いた血がついた二頭の狼犬ガルム。

 後衛組に高攻撃力かつ高速の敵が迫るのは、マズい状況だ。


「レンちゃん後ろっ!」

「その血、北欧神話の番犬ガルムが元ネタね! 【誘導弾】【フリーズストライク】!」


 メイの早い声かけで、レンはすぐさま攻撃。

 手前の一頭を弾き飛ばす。

 しかしそこに、天井から落ちてくる岩塊。


「【不動】【地壁の盾】!」


 これをまもりが防御すると、その隙を狙って二頭目のガルムが飛び掛かりを仕掛ける。


「はい【悪魔の腕】っ!」


 だがレンは、これを悪魔の巨碗で弾き飛ばす。

 レンが手を伸ばすと、おずおずと手を出すまもり。

 軽くハイタッチして、再び走り出す。

 後衛組も、見事な連携を見せる。


「すごい……岩の雨です……」


 しかしここからは、更なる危険地域。

 長い一本道だが、魔物も入り込めないほどに降り注ぐ岩。

 その数は、明らかに異常だ。


「こ、ここは私がっ!」


 先頭に出たまもりは、【青銅の大盾】を掲げて足を引く。


「【コンティニューガード】【地壁の盾】【チャリオット】!」


 駆け出すまもりの後に、続くメイたち。

 次々に落下してくる岩を受け、左右へ落とし、危険な道を突き進む。

 響く重たい音は、岩が金属盾にぶつかって生まれたものだ。


「まもりさん、もう少しです!」


 まもりは揺らぐことなく駆け進み、見えてきたゴール地点。


「っ!!」


 そこに現れたのはなんと、中型のマタンゴ。さらに。


「なんか箱が転がってるよ!」


 左に曲がって進んだ奥には、錠前付きの金属箱が転がっている。


「……あれって、大マタンゴを倒した時に見つけた鍵で開けるんじゃない?」


 レンはここで中型マタンゴが出て来たのは、この『制限時間』マップに置かれた宝箱が、先ほど手にした『鍵』に関わるからだと判断。


「悩ましい状況ですね……っ」


 ここまでの流れを止めるような仕掛けに、ツバメが悔しそうにする。

 崩落は、今にもメイたちを飲み込みそうな状況。

 そのうえで正しい道には物理攻撃に強いマタンゴを置き、外した道の先には宝箱。

 宝を取って、さらにマタンゴを打倒して進むとなれば、当然時間を奪われることになる。

 迫る崩落と時間稼ぎを組み合わせた、最悪の仕掛けだ。しかし。


「こ、ここは私がっ!」

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」


 まもりがそう言って一歩前に出た瞬間、宝箱に向けて駆け出すメイとツバメ。


「レ、レンさん、お願いしますっ!」

「了解! ルーン発動!」


 迫る中型マタンゴを引き付けたまもりは、接敵直前に左の盾を突きつける。

 すると盾の表面に生まれたたくさんの氷刃が、中マタンゴを突き刺した。


「攻め切れない……っ!」


 氷剣のダメージは敵HPを7割ほど減らしたが、打倒には至らない。

 大きくのけ反った中マタンゴは、体勢を立て直して反撃に入る。

 だが、まもりは止まらない。


「か、からの――っ!」

「からの!?」

「【フレアストライク】!」


 右盾を突き出し、【マジックイーター】で込めていた魔法を立て続けに放出。


「うまいっ!」


 中マタンゴの打倒に成功した。


「いい感じだわ! これなら問題なく抜けられる!」


 レンは先行し、落下してくる岩を魔法で砕く。


「【電光石火】!」


 ツバメは宝箱前に落ちてきたネズミを切り飛ばして【反転】、来た道を即座に【加速】で戻る。

 ネズミが倒され空いた道。

 メイはなんと、宝箱を『抱えて』走り出す。

 そのまま四人は崩落通路を駆け続け、危険地帯を切り抜けた。


「やったー!」


 そしてメイが、喜びの声をあげた瞬間。

 天井部分のとがった最後の岩塊が、根元から折れるような形で落下。


「「「「ッ!!」」」」


 即死魔法を敵に使われたかのような、背筋が凍る感覚。

 最後の岩塊落下は確実に、プレイヤーを一撃死させる凶悪な罠だ。


「み、みなさんはお先に……っ!」


 まもりが叫ぶ。


「【不動】【地壁の盾】!」


 容赦なく落ちてきた即死の岩塊を、まもりが盾で受け止める。

 このスキルの性質上、必ず一度は『受けて、止まる』瞬間が作られる。

 この隙に「最速で駆け抜け逃げろ」という、まもりの判断だ。

 しかしそれは同時に、まもりの離脱を意味する。


「メイッ!!」

「はいっ! 【ゴリラアーム】!!」


【不動】が作った一瞬の隙間に、メイが【腕力】で岩を突き飛ばす。


「【電光石火】!」


 さらにこの隙を狙って駆け込んできていたネズミを、ツバメが斬り飛ばした。

 ここは間違いなく、死傷者を多く出す予定で作られたポイントだろう。


「……す、すごかったわね」

「自分たちのことながら……無傷で済むとは……」


 メイたち以外なら即死者が出ていたであろう区画を無事に切り抜け、ツバメもようやく息をつく。

 一瞬必ず止まれる【不動】を使うことで強制停止。

 その瞬間にメイが岩塊を退かす。

 もし一秒でも動きが遅ければ、即死だった。

 レンもまもりも、しばらく呆然としていたが――。


「メイ! 今の一瞬で良く動けたわね!」

「まもりちゃんが、しっかり受け止めてくれたおかげだよーっ!」

「驚きました……!」

「ツ、ツバメさんの最後のフォローも、とても助かりました!」


 まもりを救った【腕力】と早い判断に、思わず三人はメイを強く抱きしめる。

 頭を強くなでるレンと、髪をボサボサにして喜ぶメイ。


「もちろん、お宝も無事ですっ!」


 まもりを助けるために放り出した宝箱に、大マタンゴ戦でひろった鍵を差し込む。

 すると中から出てきたのは、一つの薬瓶。



【クールタイム減少薬】:装備スキル、装飾品スキル、アイテム効果などのクールタイムを10回だけ短縮する。



「この規模のダンジョンともなれば、出てくるアイテムも強力ね。これは使い方次第で面白くなりそう……!」


 強力そうなアイテムの説明に、歓喜の声をあげるレン。

 こうして危険地帯を抜けた四人は、さらに地下へと進んでいくのだった。

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[一言] 論理クイズ「幼女と25頭の競馬」で簡単なIQテストをしよう 行きますね。 問題 25頭の馬がいる。 これからレースを行い、足が速い馬トップ3頭を見つけたい。 ただし1回のレースで走れる…
[良い点] レンちゃんの「絶対に」が必死すぎるw [気になる点] 時間制限マップで極限まで切り詰めてアイテム全回収するの好き。 どうあがいても全回収できないのはアカン。 [一言] 宝箱「お、おれを持ち…
[一言] このエリアのノーダメクリアは凄すぎる。
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